恋人前&恋人
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節電の夏。
図書館全体でも節電モードが盛んに漂っていた。おすすめ本などのポスターがいろいろと貼り付けられている中に節電省エネの文字があるポスターが幾枚かある。
今日は地下書庫業務であった。
夏の地下書庫業務は正直・・・ サイアク、だ。
だが、最悪だー嫌だーなんて弱音を吐いていては業務にならないので皆汗を流しながら業務を行う。
何故最悪なのかといえば・・・クーラー無し、地下なのでもちろん窓も無し、という訳で夏は異常に暑く冬は異常に寒いのだ。
制服の身だしなみ上ボタンは第一ボタンまでしか開けられないことになっているので温度管理が効かない。唯一水を飲むことくらいが支えだ。
暑がりの郁にとって冬はカイロを全身に貼ればいいのだが夏はそうもいかない。かといって、第二ボタンまで開ければ堂上から厳しいお叱りを受ける。
「はあ・・・こんな暑いのにクーラーなんでつけないのかなあ」
「ただでさえも節電省エネって言ってんのに無理でしょ。」
独り言のつもりだったが返事が来たので驚いた。 それに・・・どうして柴崎がこんなところに!? 郁の気を察してなのかそうではないのかにやりと笑みを浮かべてこちらを見てくる。
くそ、悪女のようなその微笑まで美しい。
そ、れ、に、とわざと強めて柴崎は先を続けた。
「図書隊はお金無いしね。金銭状況厳しいのよ。」
図書隊は地方自治体の関連組織であるのでそのお金で全てを賄っている。国の組織ではないので予算が少ない為いつもギリギリで運営している。
節電・・・というより節約だ。
質素倹約、無駄な浪費は絶対になし!
金銭面でも良化隊は国務機関の一部なので有利となっている。あらゆる面で図書隊は不利だ。
でも・・・
「でもでもでもでも!扇風機の一つや二つくらいはいんじゃん。これじゃ熱中症になっちゃうよ。」
ついこの間外で熱中症になって倒れた郁(お水にご用心を参照ください)はその恐ろしさを知っている。水分補給のみではいつ誰が倒れてもいい状況だ。
「文句言うな。」
いきなり来たその声の主は、後ろを振り替えなくともわかった。 低いトーンでよく響く声は堂上だ。
「だから水マットが売られてるんだろう。」
は?水マットってなあに?
郁の疑問は最初から予測されていたようで堂上は続けた。
「入隊当初座学で説明があった筈だが。」
「うっ・・・それは・・」
心地よい休憩時間として安眠させて頂いておりました。とは流石に言えないのでばれているのは承知だがもう忘れました、とごまかす。
「中にジェルが入ったものだ。冷蔵庫に入れて繰り返し利用できる。売店で確か500円程度で購入できる。防汗仕様にはなってないので訓練では使用できないが地下書庫業務では暑さが想定されるので必要な者は各自購入するよう言われている筈だ。大体のタスクフォースの隊員は所持しているぞ。」
そんな便利なものあるんだーと感心していると それくらいはいくらバカなお前でも頭に入れておけ と一括された。
「堂上教官は説明もお上手ですね~!ウキウキうるさい山猿にも先を読んで冷静な対応!やっぱりあたしのタイプだわあ~」
ハートが付きそうな・・・というか、もう既についてる勢いで堂上に盛大なアピールを送っている柴崎は今日もウソかホントなんだかわからない。
そんな柴崎が堂上はちょっぴり苦手だ。
「山猿言うな。ウキウキなんていつ言ったあたしが!」
ここは噛み付いとかないと郁も黙っていられない。
「落ち着け。表現が違うだけでお前はいつもウキウキ言ってるも同じだ。」
ぽん、と頭をたたかれると何も言えなくなる。 柴崎の気配が消えたと思ったら知らぬ間に業務に戻ったようだ。
「そんなに暑いなら使え。」
渡されたのは例の水マットだ。ソレは水色でいかにも冷たそうなものだった。
「でも、これあたしにくれたら堂上教官困りますよね?」
「お前がまた倒れるよりはマシだ。あと1つあるんだ。要らないなら返せ。」
このままだと取られそうなので折角いただけるものなら頂かない他は無い。
ありがとうございます、と礼を言うと堂上は照れ隠しなのかそっぽを向いて手を振った。
堂上から貰った水マットはあれから2年経った今でも使用している。貰った時は堂上の香りが仄かにして満足していたのだ流石に2回ほど洗濯するとその香りは消えてしまった。だが、堂上からもらったもの、ということで大事に大事にしている。
堂上が彼氏となった今なら尚更だ。
「郁、それボロボロだな。もしかして前に俺がやったやつか?」
2年も使用していると何度も洗濯するのでボロボロになっていた。本当ならば買い換えるところだが壊れて使えないわけではないのでそのまま使っていた。
そしてまた、堂上がそのことを覚えていてくれてるのも嬉しい。
「はい。教官に貰ったので捨てられませんっ!」
堂上は甘い笑顔を見せた。
この笑顔は完全にプライベートモードだ。
「節電も悪くないですね。」
堂上が怪訝な顔をしたので笑顔で説明する。
「だって、暑いけど暑くなきゃ堂上教官にコレ貰えなかったじゃないですか。」
「あんまり可愛いこと言うな。連れて帰りたくなる。」
何処までも純粋な郁は水マットをプレゼントされた日からちょっとばかり暑さが好きになったのであった。
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よくわからないオチになってしまいましたー!すいません。。。
コメント欄の開放は今は予定してないですが今後多分します! コメントの返信はブログ記事でさせて頂きますね★
それでは、今日も良い日をー