ひとしきり言いたいことが言えて気が済んだのだろう、周りから声が聞こえなくなった。
「このこと、誰にも言わないでほしいな。
でも、これじゃ一方的だから、あんたが聞きたそうにしてること、教えてあげる。
どうして、あんたがアルバム制作スタッフだって知ってるのか。」
みなみはそう言いながら、私の右横にいる東[あずま]春香に歩み寄って肩を抱いた。
「春香が聞いてたの。2週間くらい前、帰り道であんたとひとみが製作スタッフの話してるの。
その話を聞いてたら、どうもあんたが選ばれたって。
それで次の日、ひとみに問い詰めたら、正直に吐いてくれたわ。」
どうして、ひとみに聞くの。そう思っても伝えることができない。悔しい。
みなみが春香から手を離すと、私に近づいてしゃがみ、同じ目線になって言った。
「そうだ、取引変更しよう。
もし、このこと教師にチクったら、ひとみを今日のあんた以上にボコボコにするわ。
ひとみはあんたの大事なお友達、だから傷つけたくないよね。
じゃあ、何があっても黙ってろよ。黙ってたらあんたにこんなこと、もうしないわ。」
そう残すと、みなみたちは帰って行った。
どうしてだろう。
私が黙ってたら、もう自分は傷つかない。
ひとみが傷つかなくてよかったって思う前に、そんなことを思ってしまった。
ひとみはいつでも私を支えてくれて、励ましてくれて、応援してくれて。家族のような存在なのに。
さっきまで思っていた、ひとみが傷つけられて悔しい気持ちは、どこにいったのだろう。
いつから、私はロボットみたいな人間になってしまったんだろう。