太陽のように高く、そして、優しく -22ページ目

太陽のように高く、そして、優しく

小説書いてます。読んでばっかりで書いたことは無いですが、頑張ってます!! 下手ですが、よかったら読んでってください。

 朝6時。

 

 緊張してあまり眠れなかった。試験とか遠足でもこんなに早起きしたことはない。


 2度寝するには時間が中途半端なので、そのまま起きて、着替えることにした。


 白色の半袖Tシャツに七分丈のジーンズ。最後に赤チェックの薄手のシャツを羽織る。


 初めて顔を合わせるのにはラフかもしれないけれど、これが一番私らしい。


 

 居間に行くと、美紀さんが台所で朝食の支度をしているようだった。


 ドア2、3回たたくと、美紀さんが、「おはよう。」とこちらを向いて言った。


 手話で、『おはようございます』とすると、「早起きしすぎじゃない?」と返してくれた。


 苦笑いして、何かお手伝いできることありませんか、とホワイトボードに書くと、「大丈夫だから、今日の準備、もう1回確認して来たら?」と言ってくれた。


 昨日の晩にしっかり確認したけど、もう一度確認した。緊張していると何度も確認したくなる。


 

 6時半。

 

 再び居間に行くと、食卓で直樹のお父さんの優作さんと美紀さんが朝食の準備をしていた。


 手伝おうと慌てていると、小さい段差につまづいてしまった。


 「大丈夫、裕歌ちゃん?」


 笑いながら美紀さんが手を貸してくれた。


 手を借りて立ち上がると、優作さんが、「おはよう」と言ってくれたので、手話で返す。


 優作さんは昨日帰りが遅くなったそうなので、今初めて顔を見た。


 初対面でこんなことするって・・・。自分が情けない。


 「直樹は昨日から名古屋だから、今朝は3人で朝ごはんよ。」


 何だか少し嬉しそうな美紀さんはそう言って、用意を整えた。



 いつも朝はパンだから、ご飯は少し苦手でどうしようかと思ったけど、美紀さんも優作さんも面白い話をたくさんしてくれたので、おいしく食べられた。


 何が起こるか分からなかったので、7時半に優作さんと一緒に家を出た。


 仕事は9時からだけど、早く着くに越したことは無い。早く着いたら、スカイさんに案内してもらったところ、復習でもう一回行ってみよう。


 優作さんと次の駅の浅草まで色々な話をしながら行った。


 家での息子さんの様子とか、美紀さんの面白い話とか。聞いてみると、美紀さんと母は意外と似ている。


 そこで私は優作さんと別れて銀座線に乗り換えた。優作さんはこのまま乗って新橋まで行くらしい。


 銀座線は浅草が一番端の駅だから、座席には座れた。


 30分乗っている間に眠たくならないかと心配だったけれど、緊張しているのと予想以上の人の多さに驚いているからだと思う。


 

 無事渋谷まで着いた時、ちょっとした事件が起きた。


 昨日の記憶を呼び起こしながら、人ごみを避けるように歩いていると、向こうから来た若い男性と肩がぶつかって、その瞬間、彼が持っていたコーヒーがTシャツにこぼれた。


 振り返ってみたけれど、彼の姿が見えなくなっていた。



 何か言うにも声が出ないし、この流れに逆らって歩く勇気もなかったから、そのまま歩き続けた。



 やっと外に出られた。

 白い生地に目立つ茶色のシミをどうしようと考えた結果、シミが隠れる高さまで羽織っていたシャツのボタンを閉めることにした。


 

 もしかしたら、何か起こるかもしれない。


 少し不安な気持ちが私に付きまとった。