最近、夢人のアルバムの進行が止まっているらしい。タイトルが決まらないというのだ。
裕歌ちゃんが東京に来る1週間くらい前から考えているというから、もうすぐ2週間になる。
心配だが、自分の仕事が忙しくて、顔を出せなかった。
仕事が一段落して、毎日の日課にしている屋上の庭園の世話にしに行った。
秘書の小野さんに声をかけて、屋上に向かう。
以前小野さんには、「庭園のお世話なんて、何だか年寄りのすることですよ。」なんて言われたが、俺は60過ぎた白髪の年寄りだ、と言って開き直ってみせた。
屋上の扉を開けると、まぶしい太陽が迎えてくれた。
この暑さで花や野菜は大丈夫なのかと心配しながら庭園に向かうと、ベンチに誰かいるようだった。
近づいてみると、裕歌ちゃんだった。
時計を見てみると、3時30分。休憩でここに来たようだった。
しかし、そろそろ戻らないといけないだろうと思って、起こそうと肩をたたこうとした瞬間だった。
彼女の両腕は肩からひじにかけて、傷だらけあざだらけになっていた。
おなかにはさっきまで着ていたのであろう、長袖のシャツがかけられていた。
これがあったからだ。
この傷とあざがあったから、彼女はどんなに暑い日でもシャツを脱ぐことは無かったのだ。
これはいつからそこのあるんだ。誰に作られたんだ。
今すぐにでも訊きたかった。
けれど、彼女が気持ちよさそうに寝ているのを見ると、この場所はシャツを脱げる場所なのだと思って、何もできなかった。
手早く花と野菜に水をやると、足早に屋上から去った。
明日。明日訊こう。
俺の知りたいこと、彼女が言えなかったこと、全部訊こう。
彼女の言葉で。