はじめに

 みなさん、こんにちは。本野鳥子です。今回は、中公文庫からの「世界の歴史」シリーズの第二巻、「ギリシアとローマ」を読みました。その紹介や感想などを綴っていきたいと思います。

 

 それでは、今日のヨーロッパの基礎となった、古代ギリシアとローマに向かいましょう。

 

「世界の歴史 2 ギリシアとローマ」(中公文庫)

 都市国家であるポリスが、互いに競い合い、発展を遂げた古代ギリシア。そして、そのポリス同士の争いで弱体化したギリシアを破り、治めたローマ帝国。この二つの変遷が語られる。

 

 ギリシアの歴史は、知らないことが多く、面白かった。アテネとスパルタの名前ぐらいは聞いたことがあっても、二つの政治形態や、外交政策など、新しい知識がたくさん入ってきて、興味深い。

 

 ところで銀河英雄伝説に、トリューニヒトという人物が登場する。民主政である自由惑星同盟の政治家であり、民衆からの人気も高いが、その中での権力を握り、衆愚政治の象徴として描かれている。そのトリューニヒトと、古代アテネの政治家、アルキビアデスが、大変よく似て見えた。銀英伝をお好きな方ならお分かりいただけると思うので、少しこの本の中から引用してみよう。

 

かれの名はアルキビアデスで、名門に生まれ、眉目すこぶる秀麗、才気煥発の人気者であった。(中略)その放縦な私生活は古代市民の倫理から見れば多めにみてやってもよい。しかし自分の名誉欲のために国家の政治を単なる道具のように考えたやり口のひどさ加減はお話にならぬし、そんな若僧をおさえなかったニキアス以下のアテネ市民には首をかしげざるをえない。

 民主政を敷いていたアテネで、このような人物が登場したのである。私でなくとも、銀英伝をお読みになったことのある方なら、トリューニヒトを重ねずにはいられまい。もしかして、トリューニヒトのモデルには彼がいるのではないか、などと思ってしまう。

 

 そして、時代は下りローマ帝国の時代に入る。この辺りは、塩野七生さんのローマ人の物語でおさえているので、知っていることが大半だったが、同じ歴史を書いていても筆者が異なるだけで、異なるものに感じられた。塩野七生さんは、文庫にして43巻をローマ帝国の歴史に費やしているので、情報量としては比較にならないが、それにしても筆者によって書く歴史の違いがあるのは、なかなか面白い。歴史は歴史観なくして成り立たないことの象徴に感じられた。

 

 その中でも、ポリビオスの『国政論』で述べられている内容は、印象的だった。

有徳者の王政から暴君の一人支配、つぎに有徳者たちの貴族政、それが堕落した寡頭支配、それを打倒した民主政、民主政が堕落して生まれる衆愚政とアナーキー、という一連の変化の法則をうちたて、アナーキーを鎮定するのは有徳の王者であるとして、政体循環の史観に達した。

 民主政の中で漫然と生きているだけでは、得られなかった教訓かもしれない。このような思想は大変目新しいものだった。そして、私たちが生きる現在の先に、何があるのか、つかみ所のない未来の足がかりのようにも感じられる。はたして、この先に待ちかまえるのは何なのだろうか。

 

 歴史を学ぶことの面白さが一巻に引き続き感じられた。これからも読み進めていきたい。

 

 一つだけ、切実な文句を言わせてほしい。古代ローマ人やギリシア人のカタカナ表記が、筆者によって異なるのは困る。同一人物でもそれと分からないではないか。アルファベットを使わない日本では仕方ないことかもしれないが、統一してほしいと言うのはわがままだろうか。

 

おわりに

 というわけで、「世界の歴史 2 ギリシアとローマ」についてでした。お楽しみいただけましたでしょうか。さて次回からはしばらく「世界の歴史」シリーズから離れて、この時代の関連の本を読んでいきたいと思います。たとえば、カエサルの「ガリア戦記」などが今手元にあるので、そんなものです。

 

 それではまた次回お会いしましょう。最後までご覧くださり、ありがとうございました。