はじめに

 
 みなさん、こんにちは。本野鳥子です。今回は、久保田香里さんの「きつねの橋」についてです。平安朝のもとで起こった不思議なできごとを、見てみたくはありませんか?
 

「きつねの橋」久保田香里(偕成社)

 ときは平安。東国から源頼光に仕えにやってきた平貞道は、人を惑わすきつねを捕らえる。だが葉月と名乗ったきつねは、実は斎院となった姫を思いやる優しさを持ち合わせていた。葉月が哀れになった頼光は、彼女を逃してやる。葉月は、困ったら自分に助けを求めるよう言い置いて姿を消した。一方で、盗賊の袴垂が、斎院を狙いを定めていた……。
 
 寡聞にしてこの作家を今まで知らなかったのだが、いかにも私好みの設定で、どうして目に触れなかったのか、とても悔しい。
 
 まずは、鳴弦の術である。この作品の中では、
「魔よけの弦打ちか。弦の音がけがれをはらうという。」
 として説明されている。これは、荻原規子さんの、RDGの2巻で相楽深行が使った術でもあり、いかにも私が好きな描写である。荻原規子さんが好きな方には、ぜひ読んでいただきたい作品だ。
 
 また、無邪気な五の君として登場する少年が、のちに有名な人物となるというのも、壮大な歴史の一部であることを感じさせてとても良い。当たり前だが、歴史上の偉人たちにも血が通っていたということが、心に迫ってきた。
 
 そして、忘れてはいけないのは、挿画が佐竹美保さんということである。上橋菜穂子さんの守り人シリーズをはじめ、様々なファンタジー作品の表紙を飾る佐竹さんの絵が、表紙にあるという時点で、この本を手に取りたくなってしまうのは私だけではないはずだ。
 
 ひとつだけ、言わせてもらうならば、続きが読みたい!ということである。ボリュームももっともっとあっていい。もちろん、児童書に分類される作品であるから、あまり文字を詰め込むことはできないだろうが、ぜひともシリーズ化してほしい作品だった。
 

おわりに

 というわけで、久保田香里さんの「きつねの橋」をご紹介しました。この本、表紙もとっても素敵でしたし、あとは重版がかかってほしいですね。訂正用のシールが貼られている本を見ると、いつもそう思ってしまいます。
 
 それでは、またお会いしましょう。次回は、ようやく買えた「落日の剣」の下巻です。どうぞ、お楽しみに! 最後までご覧くださり、ありがとうございました。