はじめに

 みなさん、こんにちは。本野鳥子です。今回は、「RDG レッドデータガール」シリーズについてです。何回読んだか分からないほど大好きなシリーズで、読み過ぎて一冊読み終わる度に感想を書くのがもどかしく感じられてしまいました。というわけで、シリーズまとめてになりますが、「RDG」の魅力をお伝えできたら幸いです。その都合で、ネタバレが多少ございます。未読の方は、ご注意ください。

 

「RDG レッドデータガール」荻原規子

 山奥の玉倉神社に暮らしていた、中学三年生の鈴原泉水子。極度に人見知りだったが、安穏に過ごしていた泉水子にも、大きな変化が訪れる。それは、相楽深行という少年の登場だった。同じく中学三年生でありながらも、万事においてそつのない彼が、田舎の中学に転入してきたことが、大きな転機となる。

 

 不器用にすれ違い、手探りながら歩み寄っていく二人の姿が微笑ましい。

 

 そして、東京の鳳城学園高校に進学した二人を待ち受けていたのは、宗田真響と真夏、そして神霊であり、6歳のときに心臓病によって命を落とした、真澄という三つ子だった。泉水子と深行はもちろん、真響も真夏も真澄も、それぞれが魅力にあふれている。それぞれに複雑な思いを抱える五人(?)が、どんな道を歩んでいくのか、目の離せない作品である。

 

 実は、泉水子に取り憑き、特別な力を与える姫神は、かつて人類の滅亡をもたらしてしまい、時代をさかのぼってその未来を避けようとしている人物である、という設定がこの作品の根幹にある。しかも、一度目にさかのぼったときはそれに失敗し、二回目にさかのぼってきたのが、このシリーズに登場する姫神だ。そして、その人類の滅亡をもたらしてしまいかねないのが、泉水子なのだ。つまり、泉水子自身が姫神である……という、少々入り組んだ仕組みになっているのだ。だが、それも、考察のしがいがあるというもの。また、シリーズが、もっと読みたい! というところで終わっているのもまた、想像をかき立てる一因となっている。

 

 以下は、両手の指にも収まらないほどRDGを読んできた私が、勝手に膨らませてきた考察というか、想像になるが、暖かい目で見守っていただきたい。

 

 それは、泉水子の母である紫子が、姫神にとっての前世、そして前々世では、雪政と結婚していたのではないか、という憶測である。深行は、姫神にとって初めて見る人物だった、というのがその根拠なのだが、つまり、泉水子の父が大成ではなく、雪政だったから、深行という男子が存在しなかったのではないか、と思うのである。これを思いついたときは、自分でも納得してしまった。

 

 今までたくさんの本を読んできたが、イチオシのカップルを挙げるなら、間違いなく私は深行と泉水子を選ぶだろう。本当にこの二人は、不器用で、それでもお互いのことを本当に思いやっているのだということが伝わってくる。

 

 できれば、彼らの歩む道の続きが見たい。見たくて仕方がない。続刊してくれないか、という望みは、初めて読んだときから私の中で尽きないのだ。

 

 番外編の「氷の靴 ガラスの靴」は、本の扱いが比較的雑な私にしては、珍しく帯が残っていた。その帯に書いてあった文言に、気を取られる。

 

大人気「RDG」シリーズ最新作が、早くも文庫化!

 

 注目していただきたいのは、最新作、とあることである。番外編でも、最終巻でもなく、最新作、だ。これは、期待が膨らんでも仕方がない。むろん、そう信じたい私の、勝手な思い込みに過ぎないのだが。

 

 だいたい、回収されていない伏線も少なくない。たとえば、泉水子が大成からもらったパソコンは、いざというときに電源を切って使いなさい、と言われている。だが、作中ではそんな風に使用されたことが一度もなかった。携帯電話を電源を切って使うシーンがあるので、それを示唆していたともとれるが、釈然としない気持ちが残る。それから、深行の母であり、現在は連絡が取れない香織という女性についても、作中でパリに住んでいると明かされたにもかかわらず、以後の動向は全く分からない。気になることがありすぎて、想像が膨らむばかりだ。

 

 というわけで、私はこのシリーズの続刊がある、と信じたいのだが……。荻原規子さんの作品で、現在続刊中なのは、講談社タイガで刊行されている「エチュード春一番」だけか。いずれにしても、新作が楽しみでたまらない。

 

 これは余談になるが、「八咫烏」シリーズの阿部智里さんの、荻原規子さんの大好きっぷりには、思わず笑ってしまう。たしか、「八咫烏」シリーズの第五巻、「玉依姫」の巻末には、荻原さんと阿部さんの対談があったし、「RDG」シリーズのスピンオフ、「氷の靴 ガラスの靴」の解説は、阿部さんだ。どちらも、本当に大好きなのだという気持ちが伝わってくる。阿部さんの「八咫烏」シリーズも、確かに荻原さんとよく似た、日本神話を下敷きに、そこに魂を吹き込んでいくような姿勢が、感じられるのだ。

 

おわりに

 というわけで、大好きな「RDG」シリーズの感想を書かせていただきました。考察などなど、長くなってしまって申し訳ありません。本当に、改めてこのシリーズが大好きだと再認識しました。

 

 氷と炎の歌も、ぼちぼち読み進めていますが、二巻の感想を書けるのはまだまだ先になりそうです、ごめんなさい。

 

 次回は、マキアヴェッリの「君主論」でも読みたいと思います。気まぐれなので、するっと変わっても笑ってご覧いただけるとありがたいです。

 

 最後までご覧いただき、ありがとうございました!