はじめに

 みなさん、こんにちは。本野鳥子です。今回は、銀河英雄伝説外伝4の再読です。銀河英雄伝説の再読初回はこちらからご覧ください。ネタバレもございますので、未読の方はご注意ください。それでは、宇宙を舞台に若かりしヤンの姿を、今回も楽しむことにしましょう。

 

「銀河英雄伝説外伝 4 螺旋迷宮」田中芳樹(創元SF文庫)

 エル・ファシルの民間人を救って、一挙に英雄として持ち上げられるようになってしまったヤン・ウェンリー。押し寄せてくるジャーナリストたちなど、気苦労の種はつきない。そんな中で、士官学校の先輩でもあるアレックス・キャゼルヌから持ち込まれたのが、かつて同盟軍に数々の勝利をもたらした、ブルース・アッシュビー元帥の死の謎の解明だった。果たして、ヤンは歴史の謎を解けるのか。

 

 相変わらず、ヤンのやる気のなさには笑みを浮かべてしまう。軍人という不本意な職につき、勤勉とはかけ離れた職務態度を見せる彼。それは、正伝とも全く変わらない。変わったのは周囲なのだと、改めて感じた。奇略を用いた戦いで勝利を重ねるにつれ、彼をもてはやす声はうなぎのぼりに高まっていくが、彼自身は、結局ヤンという一個人に過ぎないのだろうと思う。

 

 しかし、そんなヤンでも、好きなことには没頭するらしい。歴史を真面目に調べ始める。歴史家になれなかった未練がありありと現れている気がした。

 

 ところで、ヤンの射撃の腕だが、彼が仮にも銃を握ったのは、ほとんどこの巻が唯一ではなかろうか。作者の語りぶりは辛辣である。

コステア大佐は、ヤンの射撃の技倆を知らなかった。正確な事実を知っていれば、いかに銃口を突きつけられたところで、うごきを封じられはしなかったであろう。

 

 いくらヤンでも、士官学校を曲がりなりにも卒業したのだから、多少はできるのではないかと思うのだが、これは私がヤン贔屓のせいなのか。作者によれば全く期待できなさそうである。しかし、読者はヤンが銃を撃ったところを一度も見ていないので、そこのところは永遠の謎のまま終わってしまいそうだ。

 

 さて、歴史というものは、過去の積み重ねといって間違いではないだろう。ヤンが歴史を調べていく中で、ところどころに他の巻との関連が見られるのが面白い。たとえば、ミュッケンベルガーが歴史の叙述の中で登場してきたりする。細かいところまでしっかり設定が行き届いているのがわかった。

 

 それから、今度はこの巻における現在の話だが、ミンツ大尉という士官も端役をもらっている。どうせなら、もう少しちゃんとした役を上げても良かったのではないか、という不満はともかく、正伝を読んだ読者なら、お、と眉を上げるかもしれない。緻密でどこまでも文章を無駄にしない、そんな印象を抱いた。

 

おわりに

 というわけで、銀河英雄伝説外伝4巻の再読でした。次回は、いよいよ銀英伝再読も最終回です。外伝5巻、お楽しみに。最後までお読みいただき、ありがとうございました!