はじめに

 みなさんこんにちは、本野鳥子です。今回は、銀河英雄伝説外伝の三巻の再読です。銀河英雄伝説の再読の初回はこちらから。ネタバレございますので、未読の方はご注意願います。それでは今回も、英雄になる前の登場人物たちの姿を、追いかけましょう!

 

「銀河英雄伝説外伝 3 千億の星、千億の光」田中芳樹(創元SF文庫)

 帝国軍准将ラインハルト。その副官キルヒアイス。そして、自由惑星同盟“薔薇騎士連隊”副連隊長中佐であるシェーンコップ。主にこの三者の視点から、ヴァンフリート星域での戦いが描かれる。ラインハルトの上官であり、以前は“薔薇騎士連隊”隊長であり、帝国に逆亡命したリューネブルク准将を巡り、それぞれの思いが見えてくる。

 

 まずは、上官を仰ぐことに鬱屈した思いのラインハルトと、その隣にたたずむキルヒアイスだ。ことあるごとに苛立ちを見せるラインハルトに、宇宙を手に入れるという彼の思いがどんなに強いものであったかがよく分かる。だが、その彼には好感を抱いた。一人称がおれで少年的、つまりは、キルヒアイスが隣にいるラインハルトは、感情を思うままに発散していても、あまり嫌な気がしない。キルヒアイスとラインハルトの二人は、一緒にいれば、かなり好きになれる。

 

 そして、ワルター・フォン・シェーンコップである。全く、この人の傍若無人というか、相変わらずの姿には笑みを浮かべずにはいられない。数々の美女をものにしてきた彼だが、きちんと一人一人に向き合っていたというのが、少し分かった気がする。カリンの母もそうだが、彼に惹きつけられる理由が、理解できないでもない。

 

 このシェーンコップとキルヒアイスが、一瞬刃を交わし、この巻では存在感が薄いヤンも、ラインハルトの艦隊を追い込む。しかし両方とも、お互いはお互いの名前を知ることがなく、ほんの少し時間が経てば、宇宙を席巻する存在であったことも気づかない。ヒルダとラインハルトの場合も、同様である。運命とは、本来ならこういうものを指すのかもしれないと感じた。当事者は誰もその存在に気づかないが、知らないところで運命の女神はいたずらをしているのだ。

 

おわりに

 というわけで、銀英伝の外伝3巻についてでした。次回は、銀英伝外伝4巻です。お楽しみに! 最後までお読みくださり、ありがとうございました。