はじめに

 みなさん、こんにちは。本野鳥子です。今回は、前回に引き続き銀河英雄伝説外伝の再読をしていきたいと思います。銀河英雄伝説の再読を最初から読まれる方はこちら。それでは、楽しんでいただければ幸いです。

 

「銀河英雄伝説外伝 2 ユリアンのイゼルローン日記」田中芳樹(創元SF文庫)

 イゼルローン城塞を無血で奪ったヤン・ウェンリー。これはその後、イゼルローンに赴任してきたヤンと彼の艦隊の面々の、日常の物語である。と言えたら良いが、そう穏やかな日々がついてまわるわけもなく、ヤンに同行したユリアンは数々の事件に見舞われることになるのだった。

 

 まずは、ポプランとコーネフの軽快で息の合ったやりとりである。何度も声を出して笑ってしまった。ユリアン視点であればこそ、たくさん聞くことができるのかもしれない。正伝よりもずっと分量が多く、永遠に聞いていたいぐらいだ。

 

 そして、14歳から15歳にかけての時期に、ユリアンがこれを書いたということに、驚かされた。ところどころでユリアンは自分のことを謙遜しているが、同年代に比べたらかなり成熟しているのではないだろうか。ヤンたちと自分を比べすぎという気すらしてくる。それとも、これは彼の境遇から来ているのか。それは、私にはうかがい知れることではない。

 

 本当に、ユリアン視点で眺めるヤンとその一党と過ごす、イゼルローンは楽しくて仕方がない。ヤンの勤勉とはほど遠い職務態度ながら、深い洞察力を持っていることに、改めてヤンらしさを感じる。これではユリアンでなくとも、心酔してしまうに違いない。さすがにフレデリカの評には賛成しかねるが、ユリアンの目を通したヤンの姿は、あながち間違ってもいないような気がしてくる。それとも、ユリアンの書きっぷりが上手いのだろうか。

 

 その魅力が詰まったこの巻の中でも、一番好きなのは、日記を書きながら眠ってしまったユリアンを、ヤンがベッドに運ぶ、という個所かもしれない。ユリアンの幸せな日々を象徴するような、ヤンの優しさを感じる場面だと思う。とにかくこの二人が、私は大好きなのだ。彼にそんな腕力があったのか、と思ったことは、こっそり秘密にしておこう。

 

 事件はあっても、安穏とした日々と称して良いのかもしれない、これから彼らが巻き込まれていく、歴史の渦に比べれば。その日々が、短いだけに愛おしく感じられる一冊だった。

 

おわりに

 というわけで、ユリアンのイゼルローン日記についてでした。次回は、「銀河英雄伝説 外伝3」です。お楽しみに。最後までお読みくださり、ありがとうございました!