はじめに

 みなさんこんにちは。本野鳥子です。今回は、銀河英雄伝説外伝の1巻についてです。銀河英雄伝説の再読の初回はこちらからネタバレございますので、未読の方はご注意ください。それでは、ラインハルトたちが、いかにして正伝に至ったのかを、楽しむことにしましょう。

 

「銀河英雄伝説外伝 1 星を砕く者」田中芳樹(創元SF文庫)

 正伝のスタート地点に、ラインハルトとその麾下たちが、いかにして立ったのか。その一片が見える外伝。

 

 残念ながら、正伝では登場シーンがわずかしか与えられなかったキルヒアイスだが、ラインハルトとの信頼関係はそれでも確固たるものだった。今回の外伝では

それがより強調した形で現れている。キルヒアイスと共に過ごしているラインハルトの姿は、怜悧な印象を与える容貌とは反対に、無邪気な少年の一面が見えて微笑ましかった。芝生に逆立ちしたりと、正伝の、特に3巻以降の彼からすれば、信じられないくらいである。つくづく彼を失ったのが惜しまれることだ。

 

 失われた人物といえば、ラインハルト自身もそうだが、ロイエンタールである。改めて再読をしてみると、ミッターマイヤーではなく、ロイエンタールがラインハルトに先に頭を下げたというのは、少々意外なところだった。矜持の高いロイエンタールが、ミッターマイヤーのためなら忠誠を誓ってみせる。二人の友情の強さが、よく現れているような気がする。最後にラインハルトに対して兵を挙げ、それによって命を落とした彼であるが、忠誠を誓った気持ちは本物だったのだろうと思った。

 

 銀英伝だけでなく、本編が完結したあとで読む外伝というのは、本編が重苦しければ重苦しいほど、主人公たちの日々が懐かしくなる。極めて優れた構成ではないだろうか。「獣の奏者」の外伝刹那もそうだが、主人公たちの歩んだ道のりを追いかけるにつれ、感傷に浸ってしまうのだ。

 

 それが、いかに何気ない日々であったとしても、いやそれだからこそ、彼らとまた会えることが嬉しくて仕方がない。キルヒアイスなどは、特にそれが強い気がする。彼がラインハルトの隣にいる限りは、彼らの未来に陰りなど見えなかったのだろう。

 

おわりに

 というわけで、銀河英雄伝説外伝1の感想でした。次回は銀英伝外伝2です。お楽しみに!