はじめに

 みなさんこんにちは。本野鳥子です。今回は、十二国記再読の一環で、短編集「丕緒の鳥」の中の「青条の蘭」についてです。ネタバレございますので未読の方はご注意ください。十二国記再読の第一弾はこちら。それでは今回も、十二国への旅、どうぞお楽しみください。

 

「青条の蘭(「丕緒の鳥 十二国記 5」所収)」小野不由美(新潮文庫)

 石化するという奇病に犯された山毛欅を、引いてはその山毛欅に支えられている山間の里を救うため、国官である標仲と、その幼なじみである郷官の包荒、そして流れ者である興慶の三人が奔走する。

 

 私は、恥ずかしながら今まで、勝手にこの短編の舞台を陽子の即位する慶だと勘違いしていた。もう5回は読んでいるだろうに、なぜ気づかなかったのか。関弓の玄英宮を目指していて、しかも新王が登極したというならば、どう考えても雁の物語だろう。しかも、時代は陽子が十二国にやってくる500年ほど前の話だ。全く、自分でも呆れる。

 

 そんな私の大きな勘違いはともかく、標仲たちの奮闘は、胸を熱くさせられる。そして、自らあくどい官吏を引き込んでしまった標仲が、捨て身の努力で玄英宮を目指す姿に、私と同じように心を動かされた人びとが、手を貸す。荒れ果てた国の中でも、そういう善意を捨てなかった人びとがいたことに、希望を見せられる思いだ。

人の善意に触れるたび、背負った責務の重みが増す。

 ともある通り、標仲にかかっていた重圧は半端なものではなかっただろう。

 

 さて、冒頭でも述べた通り、私は激しい勘違いをしていたわけだが、それを正せたことで、気づいたことが一つある。

新王によって任じられた新しい地官遂人は、話の分かる人物だと聞いたことがある。

 この地官遂人が、「東の海神 西の滄海」で尚隆の側近として登場した帷湍であることは、想像に難くない。実際に民からの目線で王宮を見ることができる巻であると、改めて思った。

 

おわりに

 というわけで、「青条の蘭」の感想でした。次回は、同じく「丕緒の鳥」所収の「風信」です。お楽しみに。それではまたお会いしましょう。最後までお読みいただき、ありがとうございました!