こちら↑の記事に引き続いて、2024年ダイバース・ブック賞のロングリストをご紹介します。

児童書部門のロングリストは以下の通りです。



A Different Kind of Story: A Romani Story 
by Richard O' Neill 


19世紀イングランド・シェフィールド。リーヤは父さんと兄さんと一緒に荷馬車で旅の生活を送るロマの少年。でも国勢調査員がやってきて、リーヤは学校に行かなければならなくなった。学校では読み書きは周りの生徒からずっと遅れているし、「ジプシー」とバカにされる。
でもある日学校で「サッカー」に出会って魅了された。父さんはそれを喜ばなかったが、リーヤはどんどん上達し、サッカーが大好きになった。やがて彼は有名なロマのサッカー選手ラブ・ハウエルの存在を知る。父さんに知られずにこのヒーローに続くにはどうすればいいのか。

ロマの小説家で劇作家リチャード・オニール(Richard O' Neill)の作品。主人公のリーヤ君は架空のキャラクターのようですが、ラブ・ハウエルは実在の選手です。

 

 



Dreamweavers: Night of the Scary Fairies (Dreamweavers #1)
by Annabelle Sami


謎めいた転校生の女の子ニーナと友だちになったティトは、彼女に導かれて「夢織り」の世界を知った。すぐにふたりは、毎晩ジンと呼ばれる奇妙な生物がうろつく夢の中を冒険するようになった。
同級生たちが奇妙なふるまいをするようになり、ふたりはそれが「夢織り」の力を使って混沌を引き起こしている何者かのしわざだと気がついた。ティトとニーナは夢の世界が現実世界をにとって代わる前に彼らを止めることができるのか。

パキスタンの文化を取り入れたファンタジー作品のようです。ロンドンの児童書作家アナベル・サミ(Annabelle Sami)の作品。シリーズ1作目。

 

 



Glitter Boy 
by Ian Eagleton 


11歳のジェイムズはダンスと詩とマライア・キャリーが大好き。学校のハミルトン先生が彼氏と結婚することになり、ジェイムズはその結婚式のサプライズ合唱に加われそうだった。
でも父さんはその計画も、その他のいろんなことも、まったく気に入らない。ハミルトン先生のことを話すのも、ジェイムズがダンスをするのも、ジェイムズが新しい友だちのジョエルのことを話す様子もだ。
学校で「ゲイ」と呼ばれて嫌がらせされるようになったジェイムズの慰めは大好きなおばあちゃんだが、そのおばあちゃんにも心配があって…

イングランドの小学校の先生兼児童書作家イアン・イーグルトン(Ian Eagleton)の作品。上の書き方だとわからないと思いますが、彼氏と結婚することになったハミルトン先生は男性です。

 

 



Glow Up, Lara Bloom: the secret diary of a teenage catastrophe! (Lara Bloom #1)
by Dee Benson


かっこいい転校生のケイデンに出会ったララ・ブルームは、彼の心を掴むには自分が成長することだと思いはじめた。でも友だちはそれに賛成してない。成長は男の子のためにするものじゃない、自分のためにするもの!
友だちグループと一緒にエンパワメント&自分を愛するプロジェクトにのりだしたララは、その気持ちをオンライン日記に綴りはじめた。

イングランド在住の新人児童書作家ディー・ベンソン(Dee Benson)のデビュー作品。シリーズ1作目。
2024年ブランフォード・ボウズ賞ロングリスト作品。

 

 



Jamie
by L.D. Lapinski


ジェイミー・ランビューはふたりの親友デイジーとアッシュと遊ぶのが何より大好きな、幸せなノンバイナリーの11歳。
ところが7年生では彼ら3人は男子校と女子校に分けられてバラバラになることがわかると、友情が危機に。しかもジェイミーがどこへ行くのかは誰も考えてない。ジェイミーは自分のことは自分で決めると決意した。
みんなの意識を変えようとする3人の努力は、最終的には地元の学校現場での屋上での男女のルールに対する抗議活動になった。

イングランドの児童書作家L.D.ラピンスキー(L.D. Lapinski)の作品。
2024年カーネギー賞作家賞ノミネート作品。

 

 



Kicked Out 
by A.M. Dassu 


友だちのマークの母さんが宝くじを当てて屋内プール付きの豪邸を手に入れてから、アリとサミはマークの家で遊ぶことが多くなった。彼らの友だちのひとりアダムはそこで雇われて、イギリスの居住権を手に入れるための法廷闘争の資金を得られるようになった。
でもマークの家でお金がなくなり、アダムがその容疑者として告発され、彼らはみんな疑われてマークの家に出入り禁止になった。
アリとサミはアダムが無実だとわかっている。そして数千ドルをすぐに手に入れられなければ、アダムは内戦中のシリアに帰されてしまう可能性がある。

イングランドの児童書作家A.M.ダスー(A.M. Dassu)の作品。2022年のカーネギー賞にノミネートされた彼のデビュー作品「Boy, Everywhere」(未訳)のサブキャラだったアリを主人公にした姉妹編のようです。

 

 



Nikhil and Jay: Off to India (Nikhil and Jay #3)
by Chitra Soundar


ニキールとジェイとアンマ(母さん)とアッパ(父さん)はクリスマス休暇にチェンナイのおばあちゃんとおじいちゃんを訪ねてインドへ旅立った。
おじいちゃんの庭にはオウムとリスがいて、マンゴーとココナッツの木があって、ふたりは大喜び。
海に行き、大きな波で遊び、おばあちゃんの作ったインドのおやつを食べ、
生まれて初めてチェンナイでクリスマスを過ごして、新年も迎えた。

絵本「たびにでたファルガさん」のチトラ・サウンダーによる児童書作品。インド系の兄弟を主人公にしたシリーズ作品の3作目のようです。

 

 



Safiyyah’s War 
by Hiba Noor Khan


パリの街に戦火がやってきて、サフィヤの人生は変わってしまった。親友は家族と一緒に逃げ、サフィヤは空爆で自分が住むモスクを去らなければならないかもしれないと不安になった。秘密のレジスタンス活動をしていた父がナチスに連行されると、街での危険な任務はサフィヤに任されることになった。何百人ものユダヤ人が隠れ家を探してモスクに来たのは最近のことだ。サフィヤはパリの地下のカタコンベに入ってユダヤ人たちを安全に導く勇気を持てるか?

第二次世界大戦中に1600人のユダヤ人を匿ったパリの実在のモスク「グランド・モスケ・ド・パリ」の物語をもとに書かれた歴史フィクション。パキスタン系イギリス人の作家ヒバ・ヌール・カーン(Hiba Noor Khan)の小説デビュー作品。
2024年カーネギー賞作家賞ショートリスト作品。2024年ブランフォード・ボウズ賞ショートリスト作品。

 

 



Steady for This 
by Nathanael Lessore


ショーン(またの名をMCグロウル)はラッパー志望の少年。親友シャンクスと一緒に最高のbarsとsmashをラップの大会「ラップトロジー」に持っていく準備ができている。そうしたら今度こそ片思い相手のタニーシャもチャンスをくれるはず。
ところが練習動画の配信をミスって、グロウルの汚い洗濯物が文字通り世界に公開されてしまった。ネットでバズるという夢をついに叶えたわけだ。良い意味ではなく。
今やタニーシャはこっちを見てもくれないし、学校のネタとなり、「ラップトロジー」に顔を出すのも無理だ。この危機から抜け出すことはできるのか?

イギリスの新人YA作家ナサニエル・レソール(Nathanael Lessore)のデビュー作品。barsとsmashはたぶんヒップホップ用語かと思うんですが、違ったらすみません。
2024年ブランフォード・ボウズ賞受賞作品。2024年カーネギー賞作家賞ショートリスト作品。

 

 



The Boy in the Smoke 
by Rachel Faturoti
 

イザイアと父さんは新しいアパートに引っ越してきたばかり。でも父さんは病気になってしまって、家賃を払うのに苦労している。もうすぐ家主に立ち退きを言い渡される。
歴史の授業で、イザイアは自分の学校がヴィクトリア朝時代には病院で、アパートのある区画は救貧院だったという面白い話を聞いた。
アパートの地下室で見つけた古い暖炉に火をともすと、父親が失踪して救貧院に送られてきたと言うヴィクトリア時代の少年ジェイコブが現れた。ここから逃げ出したいというジェイコブをイザイアは助けてやりたいと思うのだが…

ナイジェリア系イギリス人の児童書作家レイチェル・ファトゥローティ(Rachel Faturoti)の作品。

 

 



The Destiny of Minou Moonshine 
by Gita Ralleigh


美しいムーンラリー女王国は帝国の支配に屈した。女王は死に、「黒の女神」の信仰は禁じられ、街を守っていた流星のかけらの黒ダイヤは失われた。
気の強い孤児の少女ミヌー・ムーンシャインは、人生が思いがけずめちゃくちゃになって、将軍を打倒しようとする反逆者の集団「緑の蘭」に加わった。秘密と地図を武器にして、ミヌーは仲間と機械の象とともにインドのジャングルへ入り、女王と女神、そして自分の運命を探すことになる。

インド移民の両親を持つロンドン出身の新人作家ギタ・ラレイ(Gita Ralleigh)のデビュー作品。
2024年ブランフォード・ボウズ賞ロングリスト作品。

 

 



The Final Year
by Matt Goodfellow, Joe Todd-Stanton (Illustrator)


小学校最後の年には受けなきゃらならないテストや中学校の準備がある。ネイトはその心構えはできていたし、保育園からずっと一緒の親友PSがそばにいてくれると思っていた。でも2人のクラスは分かれ、PSはいじめっ子のターナーと友だちになってしまい、ネイトの世界はひっくり返った。
なんとか事態を理解しようとしつつ新しい友だちを作ろうとしている時に、一番下の弟ディランが病院に担ぎ込まれた。新しく来たジョシュア先生はネイトの読むことや書くことへの情熱に気がついて、物事を受け入れるためにそれを使うといいと教えてくれたが…

イングランドの詩人で児童書作家マット・グッドフェロウ(Matt Goodfellow)の作品。
2024年ブランフォード・ボウズ賞ショートリスト作品。

 

 



The Storm Swimmer 
by Clare Weze 


夏はジニカにとっては友だちとお祭りと楽しみの季節のはずだった。なのにおじいちゃんとおばあちゃんが経営する地の果ての海辺の下宿に送られて、そこで過ごすことになってしまった。父さんと母さんは少しの間のことだよと言ったけれど、ジニカはどうしても捨てられたような気分で、悲しくならずにはいられなかった。
でもジニカはペリに出会った。イルカみたいに泳いで、泡がはじけるみたいに話す男の子。人魚ではないけど、今までに見たことがない存在だった。

イングランド育ちのナイジェリア系児童書作家クレア・ウェイズ(Clare Weze)の作品。

 

 



The Thief of Farrowfell 
by Ravena Guron


12歳のジュード・リッポンは魔法泥棒の自分の家族から一人前に扱ってもらったことがない。家族にとっては、ジュードはいちばん幼くて、自分たちの大胆な盗みの最中に見張りをやらせておくのが良い存在、という程度なのだ。
どうしても自分の価値を証明したいジュードは、町一番の大邸宅から価値のある魔法を盗み出すことにした。
でも彼女が盗んだものには呪いがかかっていて、一族の仕事は大混乱に陥ってしまった。

「This Book Kills」という別の作品でYA部門でもロングリスト入りしているロンドン在住のインド系児童書&YA作家ラヴェナ・グロン(Ravena Guron)の児童書作品。

 

 

 

以上です。