2024 Locus Awards Top Ten Finalists【Locus Online】
https://locusmag.com/2024/05/2024-locus-awards-top-ten-finalists

 

 

2024年ローカス賞トップ10最終候補作品が発表されました。

ローカス賞はアメリカのSF雑誌「ローカス」の読者投票によって選ばれるSF&ファンタジーの文学賞。SF部門、ファンタジー部門などの一般書部門のほかにヤングアダルト部門があります。

ローカスの編集者と書評家たちが選んだ前年の推薦作品リストが2月に発表され、その後ローカスの読者と一般からの投票によって受賞作品を決めます。

だいたい推薦作品発表(20作程度/2月)→トップ10最終候補作品発表(10作/6月ごろ)→受賞作品発表(1作/7月ごろ)のスケジュールです。


このブログではYA部門のみのご紹介となりますので、全部門の最終作品についてはいちばん上のリンク先をご参照ください。


今年のYA部門トップ10最終候補作品は以下の通り。


Promises Stronger Than Darkness (Unstoppable #3)
by Charlie Jane Anders


ティナは自分が「平凡」だと思い悩んだことがない。その必要がない。愛されて育った普通の少女ティナ・メインズは彼女の一面。実は惑星間通信のできる救助ビーコンの保持者で、それが起動したら、世界を救って星々を旅するという夢が現実になるのだ。しかし実際にビーコンが起動すると、ティナの運命は予想していたものと違っていて…
 
伝説的な銀河の女英雄(宇宙人)のクローンとして作られた女子高生を主人公にした青春スペースオペラ。
「永遠の真夜中の都市」のチャーリー・ジェーン・アンダーズのYAデビュー作「Unstoppable」シリーズの3作目(上のあらすじは1作目のものです)。
1作目は一昨年のこの部門の受賞作、2作目は昨年のこの部門の受賞作品です。3作連続受賞なるでしょうか?
現在2024年ロードスター賞最終候補作品。

 

 

 

 

The Making of Yolanda la Bruja
by Lorraine Avila


ヨランダ・アルヴァレスの今年は良好。ブロンクスの高校は我が家みたいに感じられるようになってきたし、親友のヴィクトリーがいるし、知り合った4年生のホセとは関係が進展するかも。もうすぐ行われる家業のブルーハ(魔法使い)の伝統の儀式にも自信がある。
でも政治家の息子が転校してくると、ヨランダはその少年が引き起こすかもしれない暴力事件を幻視した。自分の言葉が聞いてもらえない世界で、ヨランダはどうやって自分の属する場所を守れるのか。

ドミニカ系アメリカ人のファンタジー作家ロレイン・アヴィラ(Lorraine Avila)の作品。

 

 

 

 

Damned If You Do
by Alex Brown


7年前にDV男の父がなんのメッセージも残さずに失踪してからコーデリア・スコットの人生はまともになった。父がいなくなったのを悲しんだことは一度もないけれど、コーデリアは自分が何かを失ったのを感じている。
ある日、高校のスクールカウンセラーのフレッドが、カウンセリング中に自分が実は悪魔だと明かしてきた。7年前のコーデリアはよくわからないまま彼と取引して、魂の一部と引き換えに父を消してもらい、記憶も消されたのだ。
フレッドは今ちょっとした悪魔的問題を抱えており、コーデリアに手助けを頼んできた。断れば地獄で永遠に父と一緒に過ごすことになる。

フィリピン民話を題材に取り入れたホラーコメディだそうです。フィリピン系アメリカ人の新人YA作家アレックス・ブラウン(Alex Brown)のデビュー作品。イギリスに同じ名前のベストセラーロマンス作家がいますが別人です。

 

 

 

 

A Song of Salvation
by Alechia Dow


ザイラ・シトラリはインディゴ神の転生者だ。その歌で宇宙を創造し、銀河の住人たちを団結させて破壊神オズヴィオスを退けた神だ。とはいえ、ザイラはまだインディゴの力を使いこなせないでいるし、イロリ帝国の皇帝は破壊神オズヴィオスへの忠誠を示すために彼女を犠牲にしたがっている。
逃げ出したザイラは、オズヴィオスと皇帝を倒すための手助けになると予言された密輸人の少年ウェズリーに出会った。
ウェズリーとザイラ、ウェズリーの顧客で大人気ポッドキャスターのルービンの3人は宇宙を救うため、ザイラの力を解放できる地球へ向かう。

神のパワーを持つ転生少女と無愛想なパイロットとポッドキャスト配信者が宇宙を救うために冒険するスペースオペラ。ヒロインの語りに加えて、ポッドキャスト、歌の歌詞などさまざまなスタイルで語られている作品のようです。 
ドイツ在住のYA作家アレキア・ドウ(Alechia Dow)の作品。

 

 

 

 

The Library of Broken Worlds
by Alaya Dawn Johnson


図書館の地下にある曲がりくねったトンネルの中には、3つの機構の偉大なる調停者と恐ろしい秘密が埋まっている。
赤ん坊の頃に拾われて図書館の神の娘として育てられたフレイダは、変化し続ける図書館のトンネルを探索し、神々と交流しながら人生を過ごしてきた。
そんな彼女が、自分の民と宗教的に迫害を受ける人々「ネルグイ」を救いたいと願う人間の少年ジョシュアに出会い、彼を助けざるを得なくなった。しかしそのためには、フレイダは図書館のまだ知らない奥深くを探索しなければならない。そこで彼女は残酷な過去、自分の出生の秘密、そして未来の不可能性を見つけるだろう。

ファンタジーかな?と思ったんですが、どうも●●(ネタバレしていい部分なのかわからないので一応伏せますね)が題材のSFのようです。
アメリカ生まれメキシコ在住のYA作家アラヤ・ドーン・ジョンソン(Alaya Dawn Johnson)の作品。

 

 

 

 

The Sinister Booksellers of Bath (Left-Handed Booksellers of London #2)
by Garth Nix


ほんの少し現実世界とずれた1983年のロンドン。スーザン・アークショウは一度も会ったことがない父親を探している。犯罪組織のボス・フランク・スリングレイの手を借りることができたかもしれないが、スーザンが何か頼む間もなく、彼は魅惑的なマーリンによる銀の針の一刺しで塵に変えられてしまった。
マーリンは若き「左利き」の書肆。彼らは「右利き」の書肆たちとともに魔法使いの家族をつくり、書店を経営しながら魔法と伝説の世界「旧世界」が現代に食い込んでくるのを防いでいる。

「古王国記」のガース・ニクスによる戦う魔法の本屋さんさんが登場するパラレルワールド80年代イングランドが舞台のファンタジー。シリーズ2作目。(上のあらすじは1作目のものです)「左利き(レフトハンデッド)」の書肆は戦う書店員で、「右利き(ライトハンデッド)」の書肆は知性の書店員という設定のようです。
現在2024年ロードスター賞最終候補作品。

 

 

 

 

Into the Light
by Mark Oshiro


マニーは養父母に追い出され、西南部の荒野に車でやってきた。養父母はキリスト教系カルトの信者で、妹のエレナだけがそこに残されている。
TV伝道師の教祖の番組をチェックして妹の生存を確認しながら旅をしていた彼は、ノマドのヴァレラ一家に助けられて一緒に行動することに。そこの義理の息子の魅力的なカルロスもまた宗教的なトラウマを抱えていた。
エレナのものかもしれない身元不明の死体が宗教施設のそばで発見されたことを知ると、マニーとカルロスは自分の最も大きな恐怖に向かい合うことになる。

コートニー・サマーズのファンにおすすめの、カルトを題材にしたミステリ小説のようです。ファンタジー要素もあるのかな?アメリカのYA作家マーク・オシロ(Mark Oshiro)の作品。

 

 

 

 

Divine Rivals (Letters of Enchantment #1)
by Rebecca Ross


数百年の眠りから覚め、神々はふたたび戦をはじめた。でも18歳のアイリス・ウィノウが望むのは家族をまたひとつにすることだけ。母さんは薬物中毒に苦しみ、兄は最前線で行方不明に。アイリスの最善の策はオースガゼット紙でのコラムニスト登用を勝ち取ることだ。
不安と戦うために、アイリスは兄への手紙を書いては、それを自分の衣装箪笥のドアの下に滑り込ませた。消えたその手紙がコラムニストの座を争うローマンの手に渡り、彼が匿名で返事を返してきたとき、ふたりの間に絆が生まれ、アイリスを兄の、人類の運命の、そして愛のための戦いの前線へと導いた。

アメリカのYA作家レベッカ・ロス(Rebecca Ross)のヒット作。人間の軍を使って神々が覇権を争う異世界が舞台のファンタジーのようです。シリーズ1作目。

 

 

 

 

The Siren, the Song, and the Spy (The Mermaid, the Witch, and the Sea #2)
by Maggie Tokuda-Hall


帝国軍艦の沈没により、海賊王とその部下のレジスタンスたちは帝国に巨大な一撃を食らわせた。今や帝国中の仲間たちが征服者の支配を終わらせ、海を再生させるために自ら戦う準備を進めている。
しかしこの人魚とスパイと戦士、そして貴族たちによる複雑な世界では、信頼と真実は得難いもの。
ワリウタ島に瀕死で打ち上げられた身なりの良い少女ジュヌヴィエーヴの正体は?戦士コアの彼女への優しさは称えられるべきものなのか、それとも彼の姉カイアの鋭い疑念の方が正しいのか?そして海賊のスパイ・アルフィは本当に帝国を裏切るのか?

日系と思われるアメリカの作家マギー・トクダ=ホール(Maggie Tokuda-Hall)の日本風異世界を舞台にした2020年の冒険ファンタジー「The Mermaid, the Witch, and the Sea」(未訳)の続編…というか、同じ世界を舞台にした姉妹編(メイン登場人物が違う)のようです。

 

 

 

 

The Spirit Bares Its Teeth
by Andrew Joseph White


1883年ロンドン。生者と死者をへだてる幕は薄く、すみれ色の瞳を持つ能力者「話す者」たちは、その幕を透かして死者と交流できる。その目を持つ16歳のトランスジェンダーの少年サイラスは今年の末には親が決めた男と結婚することになっているが、従順な「話す者」の妻になるくらいなら目をえぐったほうがましだ。周りから見れば女の子でも、自分は男の子なのだ。
婚約から逃げ出そうとして失敗した彼は、すみれ色の瞳を持つ女性だけを発狂させる「幕の病」と診断され、ブラクストンの花嫁学校兼療養所に送られてしまう。ここでは生徒が消える事件が起きていて、その生徒の幽霊がサイラスに助けを求めてきた。

架空のヴィクトリア朝ロンドンを舞台にしたホラーミステリのようです。アメリカのYA作家アンドリュー・ジョゼフ・ホワイト(Andrew Joseph White)の作品。
2024年ストーンウォール賞YA部門オナー(銀賞)作品。

 

 

 

 

以上です。