2024 Top Ten Best Fiction【YALSA】
https://www.ala.org/yalsa/2024-top-ten-best-fiction

 

 

YALSA(全米図書館協会ヤングアダルトサービス部会)が選ぶ2024年Best Fiction for Young Adults(ヤングアダルトのためのベスト小説)と、トップ10作品が発表されました。

これは、良質な文学作品を、ヤングアダルト世代を相手にする司書や図書館職員たちなどに紹介するため年1回作成されるブックリスト。

過去16か月に出版された「12-18歳のための文学作品」が対象で、投票権を持つ15人の「YALSA’s Best Fiction for Young Adults Committee(YALSAヤングアダルトのためのベスト文学委員会)」メンバーによって選考されます。

1年間毎月ノミネート作品を選出し、年明け1月~2月ごろに、そこからベスト作品リスト(60~90冊程度)と、その中でも特にすぐれたトップ10リストを発表します。

今年のトップ10作品はこちらです。



Becoming a Queen
by Dan Clay


マーク・デイヴィスがオーディション番組でドレスを着さえしなければ。あれはおふざけで、ほかの出演者の男も同じことをしていた。でもドレス姿を見られたせいで2年付き合った彼氏に振られてしまい、今のマークは傷ついて恋をあきらめている。
この世界にハマれない人たちというのが存在するのかもしれない。変人すぎて、ガサツすぎて、女性的すぎて、全部が過剰すぎて。
兄のエリックはマークが自己嫌悪のスパイラルに落ちて行かないようにいつも通り励ましてくれるが、マークはその完璧な兄もまた自分の問題を抱えていることに気が付きはじめた。

アメリカの新人作家ダン・クレイ(Dan Clay)のデビュー作品。この人は「キャリー・ドラッグショウ(Carrie Dragshaw)」の名前で活動するドラァグ・クイーンでもあります。キャリー・ドラッグショウの時はこんな感じです↓

 

 

 

 

 

Dear Medusa
by Olivia A. Cole


16歳のアリシア・リヴァーズには噂がある。でも彼女には、学校の廊下を歩くたびについてくるひそひそ声——「あの子セックスしたんだって」を百万通りのチクチクした嘲りに言い換えたささやき——以上の物語がある。クラスメートが知らないのは、アリシアは人気の教師から性的暴行を受けたのだということ。周りの世界から捨てられてしまったみたいだ。神話のメデューサみたいに、被害者としてではなくモンスターとして。

アメリカのYA作家オリヴィア・A・コール(Olivia A. Cole)の作品。

 

 

 

 

Divine Rivals (Letters of Enchantment #1)
by Rebecca Ross


数百年の眠りから覚め、神々はふたたび戦をはじめた。でも18歳のアイリス・ウィノウが望むのは家族をまたひとつにすることだけ。母さんは薬物中毒に苦しみ、兄は最前線で行方不明に。アイリスの最善の策はオースガゼット紙でのコラムニスト登用を勝ち取ることだ。
不安と戦うために、アイリスは兄への手紙を書いては、それを自分の衣装箪笥のドアの下に滑り込ませた。消えたその手紙がコラムニストの座を争うローマンの手に渡り、彼が匿名で返事を返してきたとき、ふたりの間に絆が生まれ、アイリスを兄の、人類の運命の、そして愛のための戦いの前線へと導いた。

アメリカのYA作家レベッカ・ロス(Rebecca Ross)のヒット作。人間の軍を使って神々が覇権を争う異世界が舞台のファンタジーのようです。シリーズ1作目。

 

 

 

 

For Lamb
by Lesa Cline-Ransome


ラムの母さんは隠れレズビアンのよく働くお針子。兄さんはすばらしく聡明で、反抗的な性格を抑えることさえできれば奨学金で北部の黒人大学に行ける可能性がある。
ラム自身は物静かで勉強家で繊細な少女。お気に入りの本を貸してくれた白人の女の子との友情のはじまりをためらいながら受け入れたことで、彼女は、母さんも、魅力的な詐欺師の叔父さんも、別居中の父さんも、そして兄さんも巻き込んで、最後は私刑で終わる悲劇に踏み込んでいくことになる。

ジム・クロウ法時代のミシシッピを舞台に2人の少女の友情と悲劇を描く歴史小説。「希望の図書館」のリサ・クライン・ランサムのYA作品です。

 

 

 

 

I Kick and I Fly
by Ruchira Gupta


インド・ビハール州の風俗街で辛うじて生きていた14歳のアウトカーストの少女ヒーラは、父親の借金のかたに性風俗店に売られてしまった。この地域の女は結局最後にはここに来るんだと言われている。
でも地元の寄宿舎のオーナーがお金を持ってヒーラの家に来て家の借金を払っていったとき、ヒーラは運命は変えられることを学びはじめた。
その寄宿舎でヒーラはほかの女の子たちとカンフーを習うことになった。武術の鍛錬により、ヒーラは自分の体が売り物でも獲物でもなく、自分や周りを守るための殻なのだと知っていく。
やがてアメリカのカンフー仲間の文通友達の情報で行方不明の友達ロージーの消息をつかむことができたヒーラは、彼女を救うためにNYへ行くことを決意した。

インドの花街からカンフー修行に友達探しのNYとものすごい話のワープ感があって面白そうです。インド出身のジャーナリストで性的人身売買撲滅に取り組む活動家ルチラ・グプタ(Ruchira Gupta)のYA小説家デビュー作品。
人身売買をテーマにした1990年代の彼女のTVドキュメンタリー作品「The Selling of Innocents」製作の際の経験にインスパイアされた物語とのことです。

 

 

 

 

Plan A
by Deb Caletti


望まぬ妊娠をしてしまったテキサスの田舎町パリスに住む16歳のアイビーは、合法的な中絶のためにオレゴンのおばあちゃんの家まで国を横断する自動車旅に出ることになった。
友達やご近所の非難から逃げ出し、彼氏のロレンゾと一緒に旅に出たアイビー。ロレンゾが俺たちの「中絶のためのロードトリップ・ラブストーリー」のためにベストを尽くすんだと決めたことで、彼らの旅は嵐のように世界を巡る旅になった。テキサス州の「パリ」スから、オクラホマ州「リマ」、アイダホ州「モスクワ」、そしてオレゴン州の「ローマ」まで。道の途中で友だちや親戚に出会いながら。

アメリカのYA&一般書作家デブ・カレッティ(Deb Caletti)の作品。

 

 

 

 

Promise Boys 
by Nick Brooks


アーバンプロミス私立校は少年を大人の男に教育することを約束していた。JB、ラモーン、トレイみたいな生徒たちは、一流の「プログラム」による厳しい校則に従うことを強いられる。彼らがきつく叩き込まれるのは、近所のほかの住人たちみたいな人生を過ごさず大学に入るための方法。ムーア学長のこのメソッドが、おそらくいくつもの人生を救うのだ。
でもそのムーア学長が殺され、警官たちがあたりを嗅ぎまわりはじめ、3人の少年は事件の容疑者になってしまった。お互いにお互いの無実を信じ、協力し、彼らは自分たちが逮捕される前に本当の犯人を見つけ出そうとする。

エリート校の非白人(黒人とラテン系)の男子3人を主人公にしたミステリのようです。アンジー・トーマス、ジェイソン・レノルズ、カレン・マクマナスのファンにオススメとのこと。
いくつかのショートフィルムを監督したり、ドラマ「マンダロリアン」にスタッフとして参加しているアメリカの若手映画監督ニック・ブルックス(Nick Brooks)による YA小説。
2023年ボストングローブ・ホーンブック賞フィクションと詩部門オナー作品。現在2024年ウォーターストーンズ児童文学賞YA部門ショートリスト。

 

 

 

 

Saints of the Household
by Ari Tison

マックスとジェイはお互いに助け合って生き延びてきた。暴力をふるう父のもとで育ったふたりのブリブリ(コスタリカの先住民族)系アメリカ人の兄弟は、自分たちと母さんを守る唯一の方法は完全にスケジュールを守り、おとなしくしていることだと学んでいた。
でも学校でのトラブルで、サッカー部のスター選手とけんかをして叩きのめしてしまった。この暴力が彼らの将来への夢と、自分たちが何者かという認識を危うくする。

兄弟愛と虐待と回復、正しい道を選ぶことについての物語。コスタリカの先住民族ブリブリ(Bribri)出身のコスタリカ系アメリカ人新人作家アリ・トリソン(Ari Tison)のデビュー作品。
2024年ウォルター・ディーン・マイヤーズ賞YA部門受賞作品。2024年プーラ・ベルプレ賞YA作家部門受賞作品。2024年ウィリアム・C・モリス賞最終候補作品。

 

 

 

 

Their Vicious Games
by Joelle Wellington


エッジウォーター・アカデミーはきわめて裕福できわめて権力のある生徒のための学校。
アディナ・ウォーカーはそのどちらでもない。孤独なはみ出し者の彼女は奨学金の獲得をめざして成績、行動ともに完璧をキープしてきたが、ある生徒とトラブルを起こして名門大学への道が絶望的に。そんな彼女が、「フィニッシュ」に招待された。
「フィニッシュ」は学校の創設者の一族の主催で年に一度行われる奇妙なゲームで、優勝すれば望むすべてが手に入る。

アメリカの新人YA作家ジョエル・ウェリントン(Joelle Wellington)のデビュー作品。「Ace of Spades」と「イカゲーム」のファンにオススメとのこと。The Gotham Groupにより映画化の予定があります。

 

 

 

 

Warrior Girl Unearthed
by Angeline Boulley


双子の姉がインターンシップで家を出ると、ペリー・ファイアキーパー=バーチの夏休みの予定は何もなくなった。
でもそののんびりした夏は、彼女が「ウォリアー・ガール」に出会ったことで突然終わった。ウォリアー・ガールはペリーの祖先のネイティブアメリカン。その遺骨は盗まれて、今でも地元の大学のコレクションの中にある。ペリーは仲間と協力し、なんとしてでも彼女を家に戻してあげると心に決めた。
ところがそんな時、インディアンの女性の失踪が相次ぐようになり…

カナダのアシナベ(オジブウェ族)のYA作家アンジェリン・ボウリー(Angeline Boulley)の新作ミステリ。
2023年ボストングローブ・ホーンブック賞 フィクションと詩部門受賞作品。2024年カーネギー賞作家賞ノミネート作品。

 

 

 

上です。


トップ10圏外作品も含めた2024年ベストYA全リストはこちらをご参照ください。