こちら↑の記事に引き続いて、2023年ブラム・ストーカー賞の最終候補作品をご紹介します。

YA部門の最終候補は以下の通りです。


Funeral Songs for Dying Girls
by Cherie Dimaline


ウィニフレッドは父さんと一緒に墓地管理所の上の階のアパートで暮らしてきた。父さんは母さんのお墓の近くの火葬場で働いていて、いつか母さんが戻ってくると信じている。
グダグダの夏休みを過ごしていたウィニフレッドが時間を考えずに墓地を散歩していると、ウィンターソン墓地には幽霊が出るという噂が立った。火葬場が経営難で父さんの仕事が外注されそうな状況にこれは朗報だ。父さんの仕事と自分の住む場所を守るため、ウィニフレッドは心霊ツアーを開始した。
しかしそこに本物の幽霊の女の子フィルが現れて、ウィニフレッドは自分が信じていた人生と愛と死について疑問を抱きはじめた。とりわけ、愛について。

カナダのメティスネーション出身のYA作家シェリー・ディマライン(Cherie Dimaline)の作品。

 

 

 

 

Find Him Where You Left Him Dead (Death Games #1)
by Kristen Simmons


5年前、5人の子どもたちがあるゲームをはじめた。生き残ったのは4人だった。
そして今、高校4年の終わりになって、生き残りの4人、ダックス、マディ、エマーソンは、奇妙で恐ろしい理由によって再会した。彼らは自分たちが見捨てて逃げたイアンの幽霊に呼び出されたのだ。
4人は自分たちの友情が終わったあのトンネルに戻り、ひとつの目的を果たさなければならない。イアンを見つけて家に連れて帰り、終わらせることができていないあの恐ろしいゲーム「メイド」を再開するのだ。

アメリカのYA作家クリステン・シモンズ(Kristen Simmons)の作品。
ゲームタイトルの「メイド」はメイドさんでもmakeの過去形でもなく日本語の「冥土」。日本の「あの世」に行ける、ホラー版和風ジュマンジみたいな呪いのカードゲームのようです。シリーズ1作目。

 

 

 

 

Harvest House
by Cynthia Leitich Smith


ハロウィーンが近づき、ヒューイー・ウルフは地元のお化け屋敷「ハーベスト・ハウス」にボランティアとして参加することにした。彼はこの楽しくて不気味なイベントに参加できるのを喜んでいたが、それはある役者が地元の伝説の怨霊「インディアンの乙女」を演じると知るまでの話だった。その伝説は置いておいても、「ハーベストハウス」の近くの四辻では奇妙な現象が起こり続けているし、インディアンの女の子たちを付け回す不気味な男は出没するし、動物たちはおかしな行動をとっている。

モスコギー(クリーク族)の児童書ファンタジー作家シンシア・レイティック・スミス(Cynthia Leitich Smith)のYA作品。
彼女が過去に発表したインディアンの少女を主人公にし2作の青春YA小説(※ホラーではない)「Rain Is Not My Indian Name」、「Hearts Unbroken」(いずれも未訳)と同じ、カンザスの架空の町ハンネスバーグを舞台にしたホラー小説のようです。

 

 

 

 

Camp Damascus
by Chuck Tingle


モンタナ州ネヴァートンへようこそ。ここは黄金の心を持つ新人深い人々の暮らす町。
山の頂上にあるのはキャンプ・ダマスカス。「国内でもっとも影響力が強い」同性愛者矯正施設だ。ここで人生は待ち受ける罪から解放される。しかしその成功の裏にあるのは、まったく神聖などではない秘密だ。

悪夢のようなコンバージョンセラピー施設を舞台にしたホラー小説。ふだんは主に大人向けのかなりおかしいゲイ官能小説を書く作家として活動しているチャック・ティングル(Chuck Tingle)によるYA作品。
ちなみに「かなりおかしいゲイ官能小説」というのは、主人公の恋のお相手が恐竜とか、ユニコーンとか、硬貨とか、新聞紙とか、「擬人化された概念」とかだったりするという意味です(???)。
日本でも数年前にネット記事になっていたので貼っておきますね。

 

 

 

 

 

She Is a Haunting
by Trang Thanh Tran


別居中の父を訪ねてベトナムに来たジェイド・グェンの目標はひとつ。バー(父)が療養中のフランス植民地時代様式の館で、5週間幸せな家族のふりをし通すこと。ジェイドはいつでも周りにあわせて嘘をついてきた。望まれるようにストレートのふりをし、ベトナム人らしさもアメリカ人らしさも十分に見せれば、大学進学のためのお金を持って帰れるのだ。
でも館はそのつもりではないようだった。ジェイドは毎夜金縛りで目が覚め、壁からはおかしな音が聞こえ、いるはずがない場所に虫の脚と触覚だけが残されていた。そしてある夜、ジェイドははっきりと美しい花嫁の幽霊を見てしまい、彼女から「食べてはだめ」という奇妙なメッセージを託された。

「メキシカン・ゴシック」のファンにおすすめのゴシックホラーだそうです。ベトナム系アメリカ人の新人作家トラン・タン・トラン(Trang Thanh Tran)の作品。2024年ウィリアム・C・モリス賞最終候補作品。