こちら↑の記事に引き続いて、2024年ローカス賞の推薦作品リストをご紹介します。



Spell Bound
by F.T. Lukens


16歳のルックは魔法トラブルの緊急コールセンターの経営者で強力な女魔法使いアントニアのもとで働いている。魔法の力を持っていない彼は、祖母が亡くなってから切れてしまった魔法の世界とのつながりを取り戻したいのだ。ルックの仕事は魔法組合の目から隠されている違法魔術の検出器「スペルバインダー」を守ること。
しかし魔法組合にスペルバインダーの存在が嗅ぎつけられ、アントニアは逮捕されてしまった。ライバル社フェイブルの社員で無愛想で鬱陶しくて魅力的なノンバイナリーのサンと協力し、ルックはアントニアを救おうとする。

アメリカのYA作家F.T.ルケンス(F.T. Lukens)によるロマンス冒険ファンタジー。

 

 

 

 

The Sinister Booksellers of Bath (Left-Handed Booksellers of London #2)
by Garth Nix


ほんの少し現実世界とずれた1983年のロンドン。スーザン・アークショウは一度も会ったことがない父親を探している。犯罪組織のボス・フランク・スリングレイの手を借りることができたかもしれないが、スーザンが何か頼む間もなく、彼は魅惑的なマーリンによる銀の針の一刺しで塵に変えられてしまった。
マーリンは若き「左利き」の書肆。彼らは「右利き」の書肆たちとともに魔法使いの家族をつくり、書店を経営しながら魔法と伝説の世界「旧世界」が現代に食い込んでくるのを防いでいる。

「古王国記」のガース・ニクスによる戦う魔法の本屋さんさんが登場するパラレルワールド80年代イングランドが舞台のファンタジー。シリーズ2作目。(上のあらすじは1作目のものです)「左利き(レフトハンデッド)」の書肆は戦う書店員で、「右利き(ライトハンデッド)」の書肆は知性の書店員という設定のようです。
シリーズ1作目の「Left-Handed Booksellers of London」(未訳)は2021年のローカス賞で一般書対象の長編ファンタジイ部門の最終候補だったんですが、この続編はYA部門の推薦リストに来てます。

 

 

 

 

Into the Light
by Mark Oshiro


マニーは養父母に追い出され、西南部の荒野に車でやってきた。養父母はキリスト教系カルトの信者で、妹のエレナだけがそこに残されている。
TV伝道師の教祖の番組をチェックして妹の生存を確認しながら旅をしていた彼は、ノマドのヴァレラ一家に助けられて一緒に行動することに。そこの義理の息子の魅力的なカルロスもまた宗教的なトラウマを抱えていた。
エレナのものかもしれない身元不明の死体が宗教施設のそばで発見されたことを知ると、マニーとカルロスは自分の最も大きな恐怖に向かい合うことになる。

コートニー・サマーズのファンにおすすめの、カルトを題材にしたミステリ小説のようです。ファンタジー要素もあるのかな?アメリカのYA作家マーク・オシロ(Mark Oshiro)の作品。

 

 

 

 

Rook
by William Ritter


アビゲイル・ルックは人間と超自然世界の架け橋になろうとしたことなどない。でも今や「視認」の力も、それによって常に見えてしまう人間、妖精、人狼、魔法の紙きれや公営住宅についての重要な真実もアビゲイルだけのものになっている。この手に余る新たな能力で、アビゲイルはニューフィドルハムの町で起こる魔法生物や魔女の失踪事件と、それによる人間と超自然生物との間の緊張状態を解決しようとする。

アメリカのYA作家ウィリアム・リッター(William Ritter)が2014年から2017年にかけて発表した、超自然がらみの謎を解く探偵を描いたベストセラーYAファンタジーミステリ「Jackaby」4部作(未訳)のスタンドアローンのスピンオフ。本編シリーズで主人公の探偵R・F・ジャカビーの助手だった女の子アビゲイルを主人公にしているようです。

 

 

 

 

Divine Rivals (Letters of Enchantment #1)
by Rebecca Ross


数百年の眠りから覚め、神々はふたたび戦をはじめた。でも18歳のアイリス・ウィノウが望むのは家族をまたひとつにすることだけ。母さんは薬物中毒に苦しみ、兄は最前線で行方不明に。アイリスの最善の策はオースガゼット紙でのコラムニスト登用を勝ち取ることだ。
不安と戦うために、アイリスは兄への手紙を書いては、それを自分の衣装箪笥のドアの下に滑り込ませた。消えたその手紙がコラムニストの座を争うローマンの手に渡り、彼が匿名で返事を返してきたとき、ふたりの間に絆が生まれ、アイリスを兄の、人類の運命の、そして愛のための戦いの前線へと導いた。

アメリカのYA作家レベッカ・ロス(Rebecca Ross)のヒット作。人間の軍を使って神々が覇権を争う異世界が舞台のファンタジーのようです。シリーズ1作目。

 

 

 

 

The Siren, the Song, and the Spy (The Mermaid, the Witch, and the Sea #2)
by Maggie Tokuda-Hall


帝国軍艦の沈没により、海賊王とその部下のレジスタンスたちは帝国に巨大な一撃を食らわせた。今や帝国中の仲間たちが征服者の支配を終わらせ、海を再生させるために自ら戦う準備を進めている。
しかしこの人魚とスパイと戦士、そして貴族たちによる複雑な世界では、信頼と真実は得難いもの。
ワリウタ島に瀕死で打ち上げられた身なりの良い少女ジュヌヴィエーヴの正体は?戦士コアの彼女への優しさは称えられるべきものなのか、それとも彼の姉カイアの鋭い疑念の方が正しいのか?そして海賊のスパイ・アルフィは本当に帝国を裏切るのか?

日系と思われるアメリカの作家マギー・トクダ=ホール(Maggie Tokuda-Hall)の日本風異世界を舞台にした2020年の冒険ファンタジー「The Mermaid, the Witch, and the Sea」(未訳)の続編…というか、同じ世界を舞台にした姉妹編(メイン登場人物が違う)のようです。

 

 

 

 

The Spirit Bares Its Teeth
by Andrew Joseph White


1883年ロンドン。生者と死者をへだてる幕は薄く、すみれ色の瞳を持つ能力者「話す者」たちは、その幕を透かして死者と交流できる。その目を持つ16歳のトランスジェンダーの少年サイラスは今年の末には親が決めた男と結婚することになっているが、従順な「話す者」の妻になるくらいなら目をえぐったほうがましだ。周りから見れば女の子でも、自分は男の子なのだ。
婚約から逃げ出そうとして失敗した彼は、すみれ色の瞳を持つ女性だけを発狂させる「幕の病」と診断され、ブラクストンの花嫁学校兼療養所に送られてしまう。ここでは生徒が消える事件が起きていて、その生徒の幽霊がサイラスに助けを求めてきた。

架空のヴィクトリア朝ロンドンを舞台にしたホラーミステリのようです。アメリカのYA作家アンドリュー・ジョゼフ・ホワイト(Andrew Joseph White)の作品。
2024年ストーンウォール賞YA部門オナー(銀賞)作品。

 

 

 

以上です。