American Library Association announces 2024 Youth Media Award winners【ALA】
https://www.ala.unikron.com/

 

 

2024年 全米図書館協会アレックス賞が発表されました。
アレックス賞はYA作品ではなく、「ヤングアダルトの読者に特に訴える力のある一般書」に贈られる賞。毎年10作品が選ばれます。

今年の受賞作品は以下の10作です。


Bad Cree
by Jessica Johns


マッケンジーは悪夢に悩まされている。毎晩、若くして亡くした妹のサブリナが生きていた頃の家族の思い出を夢に見て、そして目覚めが近くなると、恐ろしいカラスの群れに追われ、水に溺れ、サブリナを名乗る何者かからの脅迫メールを受け取って目が醒める。
ひとりでは対処できないマッケンジーは、妹を失った悲しみから逃げ出してしまったアルバータの故郷を訪ねるが…

クリー族の新人作家ジェシカ・ジョンズ(Jessica Johns)のデビュー作品。家族、コミュニティ、故郷と呼ぶ土地への暴力の記憶による犠牲と向かい合うためのクリー族の女性の危険な自分探しの旅を描いたホラーだそうです。

 

 

 

 

Chain-Gang All-Stars
by Nana Kwame Adjei-Brenyah


ロレッタ・サーワーとハマラ・スタックスは「チェインギャング・オールスターズ」のスーパースター。アメリカの私立監獄業界のトップになりつつあるエンターテインメント企業CAPEによる、物議をかもす人気番組だ。
CAPEでは、囚人たちはチェインギャングの一員として旅をし、正義の抗議活動をする人々が入り口の外に集まる満員のアリーナで、自由をめざしてデスマッチを戦う。サーワーとスタックスはチームメイトで恋人同士で人気戦士。順調にいけば、サーワーはあと数試合で自由になれるのだが…

非人道的な刑務所の女剣闘士を主人公に、構造的な人種差別と結びついたアメリカの刑務所システム、野放しの資本主義、大量投獄、この国での真の自由の意味を描くディストピア小説のようです。「フライデー・ブラック」のナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤーの作品。

 

 

 

 

Chlorine
by Jade Song


レン・ユーはスイマーだ。彼女の毎日はプールではじまりプールで終わる。友だちはチームメイトだけ。コーチは導きの光。水泳で良い成績を上げれば、スカウトされ、奨学金を得て、良い学校に行ける。両親が愛してくれる。コーチが優しくしてくれる。良い人生が手に入る。
でもそれは、陸の上で、脚を持つ人間が気にすることだ。レンは海や川の深みにいる生き物の物語とともに育った。船乗りたちを破滅させ、水に引き込み、その肉を食べる。彼女はずっとその生き物、人魚になりたかった。
自由な人生を手に入れるためならなんでもする。他の人たちになんと思われても。どれだけの血を流しても。

デヴィッド・リンチ風のひねりのあるホラーでありSFでもクィアなティーンロマンスでもある作品だそうです。中国系と思われる新人作家ジェイド・ソン(Jade Song)の作品。

 

 

 

 

Fourth Wing (The Empyrean #1)
by Rebecca Yarros


20歳のヴァイオレットは歴史書の筆記者になって、書物と歴史に囲まれた静かな人生を送ると思われていたが、母でもある将軍によってナバール、つまりドラゴンライダーの精鋭部隊をめざす数百人の候補のひとりにされてしまった。
しかしほかよりも体が小さくて弱い者は死と隣り合わせになる。というのは、ドラゴンたちは「脆い」人間とは絆を結ばないからだ。そいう者たちは燃やされてしまう。
絆を望む候補生の数に対してドラゴンは少なく、候補生たちは自分の可能性を上げるためにヴァイオレットを殺したがっている。

ドラゴンライダーをめざすヒロインを主人公にした、アメリカの作家レベッカ・ヤロス(Rebecca Yarros)の大ヒットファンタジー小説。シリーズ1作目。Amazonでドラマ化の予定があります。早川書房から今年邦訳刊行予定です。

 

 

 

 

The Hard Parts: A Memoir of Courage and Triumph
by Oksana Masters


オクサナ・マスターズはウクライナで、チェルノブイリの影響の下に生まれた。腎臓はひとつ、胃は不完全、両足は6本指、手の指はくっついていて親指がなく、上腕二頭筋もない。左脚は右足よりも6インチ短く、脛骨は左右ともない。
莫大な医療費を恐れた両親によって孤児院に捨てられ、数えきれない虐待を受けた。救いの手は7歳のとき、独身のアメリカ人の学者ゲイ・マスターズが怯えた目をした小さな女の子の写真を見たことで訪れた。
養子になってアメリカへ行き、何年ものあいだ手術に耐えた彼女は、自分の価値を証明すると心に決めひとつどころか4つの競技で勝利を収めた。

ボート、サイクリング、クロスカントリースキー、バイアスロンで複数のパラリンピック大会に出場して多くの金メダルを獲得しているアメリカのスーパースター・パラスポーツ選手オクサナ・マスターズの自伝。

 

 

 

 

I Will Greet the Sun Again
by Khashayar J. Khabushani


若い3兄弟は、父親によって母親のもとから連れ去られ、夜中にロスアンゼルスを出発してイランに向かった。ほとんど知らない国の先祖代々の故郷に。
数ヶ月後に戻ってきてアメリカの生活に再び放り込まれた彼らは、ひどく、元に戻らないほど変わってしまっていた。
焼き尽くされるようなカリフォルニアの太陽の下、我らが主人公の末っ子は、父による虐待でめちゃくちゃになった少年時代を、バスケットボールコートで出会った少年との秘密の恋が刻まれた思春期を、9.11の影響下に生きるムスリムとして突然敵視されるようになった自分の立場を繫ぎ合わせようとする。

アメリカの中学校の先生で新人作家カーシャヤー・J・カブシャニ(Khashayar J. Khabushani)のデビュー作品。

 

 

 

 

Maame
by Jessica George


マディのロンドンでの生活が報われているとはとても言えない。母さんはほとんどガーナに行っており、進行したパーキンソン病をわずらう父さんの主な介護人はマディだ。会社の上司は悪夢で、会議のたびにマディは自分が唯一の黒人であることにうんざりさせられる。
母さんがいちばん最近のガーナ旅行から戻ってくると、マディは実家を出てついに人生をスタートするチャンスだと飛び上がった。自分でも認める遅咲きの彼女は、重要な「初めて」の経験の準備ができている。同居人付きのアパートを見つけ、仕事の後の飲み会を断らず、キャリアの評価をさらに上げ、出会い系サイトの世界に飛び込んで。でもほどなくして悲劇に見舞われて…

ガーナ人の両親を持つロンドン生まれの作家ジェシカ・ジョージ(Jessica George)の作品。

 

 

 

 

Starter Villain
by John Scalzi


チャーリーの人生は行き詰まっている。離婚した臨採教師で猫と同居中、その家は兄弟が売却したがっている。下町でパブを開店したいというのが唯一の望みだがローンを銀行に断られた。
そんな時、長年没交渉だったジェイク叔父さんが亡くなって、彼が駐車場チェーンの陰でこっそり経営していたスーパーヴィラン業をチャーリーが相続することに。
叔父さんがはじめた無慈悲で金持ちのライバルスーパーヴィラン軍団との戦いに勝利する役目はチャーリーに託された。

「怪獣保護協会」のジョン・スコルジーによるスーパーヒーロー(スーパーヴィラン)小説。

 

 

 

 

The Talk
by Darrin Bell


ダリン・ベルが母さんから「本物に見える水鉄砲を持ってはダメ」と言われたのは6歳のときだった。警官はは幼い黒人の男の子を実際よりも年上で、実際よりも無邪気でないように見るから、彼の身が心配なのだと。

白人から危険とみなされ時には殺害されてしまう「黒人」としてロスアンゼルスで育ち、ティーンの頃にロドニー・キング事件、親になってからジョージ・フロイド事件を経験してきたコミック作家が、息子たちに向けて語るグラフィックノベル回顧録。
アメリカのコミック作家ダリン・ベル(Darrin Bell)の作品。

 

 

 

 

Whalefall
by Daniel Kraus


ジェイ・ガーディナーは亡くなった父の遺骨をモナステリー・ビーチの向こうの太平洋で探そうという無茶な挑戦をしようとしていた。難しいのはわかっているが、父の自殺に対する罪の意識を和らげるにはこれしかない。
ダイビングはきわめて順調にはじまったが、その途中で巨大なマッコウクジラに飲み込まれてしまった。入ったのは4つの胃のうち最初のひとつ目。酸素が尽きるまであと1時間。内なる悪魔に打ち勝ちクジラの腹から脱出するのに1時間しかない。

クジラのお腹から脱出しようとするスキューバダイバーの1時間を描く科学的に正確なサバイバルスリラーだそうです。ネトフリの人気アニメシリーズ「トロールハンターズ」の原案小説「Trollhunters」(未訳)の作者(※ギレルモ・デル・トロとの共著)として知られるアメリカのYA作家ダニエル・クラウス(Daniel Kraus)の一般書作品。

 

 

 

 

以上です。