こちら↑の記事に引き続き、2023年の児童書&YA文学賞受賞作品をまとめます。

 

 

【1月】

2023年 ストーンウォール賞児童書部門【LGBTQを取り扱った本】

Love, Violet
by Charlotte Sullivan Wild, Charlene Chua (Illustrator)


クラスの生徒の中でヴァイオレットが一緒に冒険したいと思うのは、誰より明るい笑顔で笑って風みたいに走るミアだけ。だからヴァイオレットはミアのために特別なバレンタインを準備した。だってミアは最高だから。でも、もしミアがヴァイオレットと同じように思わなかったら?

アメリカ生まれイタリア在住の絵本作家シャーロット・サリヴァン・ワイルド(Charlotte Sullivan Wild)が文を、シンガポール生まれカナダ在住のイラストレーター・シャーレイン・チューア(Charlene Chua)が絵を担当しています。

【このほかの受賞・候補作品選出文学賞】
2022年ラムダ賞児童書部門(最終候補)

 

 



2023年 ストーンウォール賞YA部門【LGBTQを取り扱った本】

When the Angels Left the Old Country
by Sacha Lamb


天使のウリエルと悪魔のリトルアッシュ(通称アシュメダイ)はこのシュテットル(ユダヤ人の村)に住むたったふたりの超自然的存在だ。彼ら天使と悪魔は何世紀ものあいだともに律法を学んできたが、ユダヤ人への迫害と新天地を求める心により、人間の若い住人たちはみな彼らの村を出てアメリカへ行ってしまった。
しかしその若き移民たちの中のひとりが行方不明になって、ウリエルとリトルアッシュは彼女の捜索に乗り出した。
その過程で彼らは、親友(であり生涯の恋の相手)だった女の子に「男と結婚するから」という理由で捨てられたローズ、渡米の旅の途中で謎の死を遂げた父を持つマルキという人間ふたりの手を借りることになる。

ユダヤ人の村を守護する天使と悪魔コンビの冒険物語。「グッド・オーメンズ」のファンにオススメの作品だそうです。アメリカの新人YA作家サシャ・ラム(Sacha Lamb)のデビュー作。

【このほかの受賞・候補作品選出文学賞】
2023年マイケル・L・プリンツ賞(オナー)
2023年ミソピーイク賞一般書部門(受賞)

 

 




2023年 シュナイダー・ファミリーブック賞YA部門【障害を取り扱った文学】

The Words We Keep
by Erin Stewart


浴室で姉のアリスが自傷しているのをリリーが見つけてから3ヶ月が過ぎた。それからずっと、リリーはなんとか自分と家族を元通りにしようとしている。でもアリスが治療プログラムを終えて家に帰ってきて、見ないようにしている自分の感情を無視するのはもっと難しくなった。
そんな時に、アリスと一緒に治療を受けていた少年ミカが転校してきた。学校の授業で彼とペアを組んで「意外な場所に詩を見つける」という課題に取り組むことになったリリーは、自分の中で出口を求めて膨れ上がっているものは言葉なんだと気がつく。

アメリカのYA作家エリン・スチュワート(Erin Stewart)の作品。

 

 

 


2023年 シュナイダー・ファミリーブック賞ミドルグレード部門【障害を取り扱った文学】

Wildoak
by C.C. Harrington


マギー・スティーヴンスの学校生活は吃音のせいでとくに辛いものになっている。クラスで話す機会や注意をひくことを避けるためにマギーはなんでもする。それで無情な父さんはマギーを「治療」に送り出すことを決め、母さんの出した妥協案をマギーは不本意ながら受け入れた。ウィルダークの森のきれいな空気の中で何週間か過ごし、ほとんど覚えていないおじいちゃんに会いに行く。
そこでマギーは捨てられたユキヒョウの子どもに出会った。この子の存在が他の人に知られれば危険だ。そしてユキヒョウだけでなくマギーやこの森に残された時間もあまり多くはない。

イギリス出身アメリカ在住の児童書作家C・C・ハリントン(C.C. Harrington)の作品。

 

 

 

 

【2月】

2023年 スコット・オデール賞【歴史小説対象】

African Town
by Irene Latham, Charles Waters


アメリカが奴隷の輸入を禁止して間もない1860年、110人の成人男性、女性、子どもが捕らえられ、クロティルダ号という船でナイジェリアのベナンからアラバマに送られた。苛酷な中間航路でアメリカへ渡り、アラバマ川流域の湿地帯で身を潜め、その後はこっそりと各地のプランテーションに振り分けられる。そこで彼らは何とか自分たちの文化を守ろうとしつつ、囚われた生活に馴染もうとする。南北戦争が終わり、生き延びた者たちは自分たちのコミュニティをつくる。名前は「アフリカン・タウン」。その町は今もある。

奴隷としてアメリカに送られた最後の黒人たちを散文詩形式で描く歴史年代記。「アレッポのキャットマン」のアイリーン・レイサムとアメリカの詩人チャールズ・ウォーターズ(Charles Waters)の共著です。

 

 

 

 

【3月】


2023年 ゴールデン・カイト賞ミドルグレード部門

The Civil War of Amos Abernathy
by Michael Leali


歴史オタクの少年エイモス・アバナシーは歴史のために生きている。文字通り。母さんが経営する「生きた歴史パーク」のボランティアとしてヒストリカル・リエナクター(※歴史上の出来事の再現イベントで過去の人々をコスプレで演じる人)をするのはほぼ彼の人生だ。でも、パークにやってきたベンに恋をしたことで、自分が歴史の中で見逃しているもの――たとえば自分とベンのような存在――があるんじゃないかと疑問を抱くようになる。

アメリカの児童書作家マイケル・レアリ(Michael Leali)の作品。ご本人も子どもの頃にヒストリカル・リエナクターをしてたそうです。


【このほかの受賞・候補作品選出文学賞】
2023年ラムダ賞ミドルグレード部門(最終候補)

 

 

 

2023年 ゴールデン・カイト賞YA部門

Beneath the Wide Silk Sky 
by Emily Inouye Huey


サム・サカモトの人生に「写真家になりたい」という夢のために使う時間はない。母さんが亡くなって、サムが気にかけなければならないのは家の農地だ。最後の1回の支払いができなければ家族はこの土地を失ってしまう。でも、さらに大きな困難が地平線から姿を現しはじめていることには気がついていなかった。
1941年12月7日、真珠湾攻撃が行われ、日系アメリカ人への敵意は国中を席巻した。激しくなる憎悪と暴力に耐えながら友情を育んだ近所の少年ヒロから写真をもういちどはじめるようにと勧められ、サムは自分の写真は周囲の偏見を記録できるのではないかと気がつく。

第二次世界大戦下の日系アメリカ人の少女を主人公にした歴史YAのようです。日系アメリカ人の新人YA作家エミリー・イノウエ・ヒューイ(Emily Inouye Huey)の作品。自身の家族の経験をもとに書かれた作品とのことです。

 

 


2023年 シド・フライシュマン賞

Freddie vs. the Family Curse
by Tracy Badua


フレディ・ルイスは呪われている。ふつうの人たちにもついてない日はあるだろうが、フレディと彼の一家はついてないまま数世代を過ごしている。写真撮影の日に鳥のフンが落ちてくるとか、転んだりつまずいたりしすぎるせいであだ名が「フェイスプラント(顔面着地)フレディ」になるとか。
ある日幸運を呼ぶという家宝のお守りを見つけたフレディは、これでようやく自分の運勢が変わると思ったが、それはこの上ない間違いだった。というのは、その家宝には怒りっぽい先祖の魂が閉じ込められていて、彼を殺した邪悪な精霊が復讐に戻ってこようとしていたから。

フィリピン系アメリカ人の児童書作家トレイシー・バドゥア(Tracy Badua)の作品。

 

 



2023年 ゴールデン・カイト賞高学年向けノンフィクション部門

Absurd Words: A kids’ fun and hilarious vocabulary builder for future word nerds 
by Tara Lazar


ことばはすばらしい。ことばがなければあなたはこの文章を読むこともできないし、この本は白紙だ。もっと最高なのは、ことばがあまりにもたくさんあるということ。英語だけでも100万以上の単語があるし、マリアム・ウェブスター辞書には毎年1000語前後が追加される。新しい単語と、新しい意味が加わった単語。わたしたちの生活の変化とともに、たくさんのことばが成長する。
でも読み書きできる膨大な単語が存在するのに、多くの人はそのうち2万語程度しか使わない。存在する単語のたった2パーセントだ。

ユニークな単語やその使い方、語源などを紹介する児童向けの言語学ノンフィクションのようです。アメリカの児童書作家タラ・ラザール(Tara Lazar)の作品。

 

 

 

 

【4月】

2023年 ウォーターストーンズ児童文学賞 児童書部門【新人作家対象】

Nura and the Immortal Palace
by M.T. Khan


経営不振のお菓子屋で必死で働く母さんと食べさせないといけない3人の弟妹たちがいるヌーラは、毎日お金を稼ぐために鉱石採りをして過ごさなければならない。ある日その採掘場で事故が起こって、親友のファイサルを含めた4人の子どもたちが生き埋めになった。もう死んでいると言われたが、あきらめずにファイサルを見つけるために現場を掘ったヌーラは、かわりに紫の空と桃色の海のある奇妙な世界への入り口を見つけてしまった。
そこは魔神たちの世界で、ヌーラは彼らの豪奢な宿屋に招かれた。そこにはファイサルや生き埋めになった子供たちがいて…

「アル・シャーと時の終わり」+「千と千尋の神隠し」のようなファンタジーだそうです。

 

 



2023年 ウォーターストーンズ児童文学賞 YA部門&総合部門【新人作家対象】

The Cats We Meet Along the Way 
by Nadia Mikail


17歳のアイシャは姉さんのジューンに2年会っていない。そして世界があと9ヶ月で滅亡するという今、アイシャと母さんはジューンを探し出して過去の傷を修復する時だと決断した。アイシャの彼氏ウォルターとその両親(あとのら猫のズタボロ(名前))も連れ、一同はワイルドにデコったキャンピングカーでマレーシアを横断する旅に出る。

ロンドン在住のマレーシア人新人YA作家ナディア・ミカイル(Nadia Mikail)のデビュー作品。
この本はすべての部門の受賞作品から選ばれる総合部門も受賞しました。

【このほかの受賞・候補作品選出文学賞】
2023年カーネギー賞作家賞(ノミネート)
2023年ブランフォード・ボウズ賞(ショートリスト)
2023年YA Book Prize(ショートリスト)