こちら↑の記事に引き続き、2023年のYA文学映画化作品を振り返ります。

【8月】

武田綾乃原作「特別編 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト~(原作タイトル「響け!ユーフォニアム」シリーズ)」

 

 

原作は武田綾乃が2013年にスタートした高校の吹奏楽部の少女たちの友情を描く青春小説のシリーズ作品。
本編10巻と番外編数作が宝島社から刊行されています。
今回の映画の原作となっているエピソードは短編集「響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のホントの話」の収録作品「アンサンブルコンテスト」のようです。

映像化は2015年からスタートした京都アニメーションによるTVアニメーションと同じスタッフによる劇場アニメーション、TV版を編集した劇場版のシリーズがありますが、今回の映画は完全新作の劇場映画です。


監督はTVシリーズ版からこの作品を手がける石原立也。
脚本もTVシリーズ版から続投の花田十輝。


出演(声優)は黒沢ともよ、朝井彩加、豊田萌絵、安済知佳など。

2023年8月4日から日本公開されました。12月20日にDVDが発売予定です。

 

 

 

 

 

ケイシー・マクイストン原作「Red, White & Royal Blue(原作邦題「赤と白とロイヤルブルー」)」

 

 

原作はアメリカのベストセラー作家ケイシー・マクイストンの2019年のデビュー作。
アメリカ初の女性大統領の息子で、メキシコ系で若くてイケメンで天才ときてホワイトハウスのイメージアップ戦略の強い味方になってるアレックスが、ある日イギリスのヘンリー王子とケンカしているところがタブロイドに載ったせいで両国の国民感情が悪化。関係者一同がダメージコントロールのための作戦を考えた結果、2人でインスタ映えする仲良しアピールをすることに。ところがそのうちに思いがけず本物の恋がはじまって…

というロイヤルロマンスコメディ。2020年の全米図書館協会アレックス賞(YAにおすすめの一般書に贈られる)受賞作品です。
二見書房から邦訳が出ています。


監督&脚本はトニー賞を複数部門受賞した舞台ミュージカル「The Inheritance」を手がけた劇作家のマシュー・ロペス(Matthew López)。これが映画監督デビュー作。


主演は「キスからはじまる物語」シリーズのテイラー・ザハール・ペレス&「シンデレラ」(カミラ・カベロ主演版)のニコラス・ガリツィン。
ほか出演はユマ・サーマン、「天才執事ジーヴス」のスティーヴン・フライ、「ナイトメア・アリー」のクリフトン・コリンズJr.、「Lの世界」のサラ・シャヒなど。


2023年8月11日からAmazonプライムで配信されています。

 

 

 

 

 

ブラム・ストーカー原作「The Last Voyage of the Demeter(原作邦題「吸血鬼ドラキュラ」/映画邦題「ドラキュラ/デメテル号最期の航海」)」

 

 

原作はブラム・ストーカーの古典怪奇小説「吸血鬼ドラキュラ」。
といっても、原作全体の映画化ではなく、英国に向かうドラキュラを乗船させたために船員と乗客が全滅してしまった客船デメテル号のくだりのみを抽出した映画化という珍しい企画です。


監督は「スケアリーストーリーズ 怖い本」のアンドレ・ウーヴレダル。
脚本は「レゴ ニンジャゴー」のブラギ・F・シャット。


出演は「ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結」のデヴィッド・ダストマルチャン、「ラチェッド」のジョン・ジョン・ブリオネス、「ナイチンゲール」のアシュリン・フランシオーシなど。「MAMA」や「スレンダーマン」など多くのホラー映画でモンスターやクリーチャーを演じているハビエル・ボテットがドラキュラを演じます。


2023年8月11日からアメリカ公開され、初登場5位。2023年9月8日から日本公開されました。現在は配信やDVDで見られます。

 

 

 

 

 

 

アビゲイル・ヒン・ウェン原作「Love in Taipei(原作タイトル「Loveboat, Taipei」)」(原作未訳)

 

 

原作は、中国にルーツを持つアメリカのYA作家アビゲイル・ヒン・ウェン(Abigail Hing Wen)による2020年発表の作品。

18歳の中国系アメリカ人の少女エヴァー・ウォンが、中国語と中国文化を勉強させたい両親によって夏休みに台湾へ送られてしまうが、実はその中国文化勉強キャンプは、書道や寺院巡りをする優等生たちではなく、クラブに通ったり蛇の血入りの日本酒を飲んだりする悪い子なティーンたちが集まる場所だった(※両親はそれを知らない)。
優等生になるのを望まれて育ったエヴァーは思いがけない初めての自由な日々の中、夜遊びしたり夢だったバレエスクールに通ったりしつつ、不良のクサヴィエ、美形で天才のリック、美人のルームメイト・ソフィーとの間で恋でもめたりする…

という青春ラブストーリーのようです。
なかなか好評で、続編「Loveboat Reunion」が今年刊行されています。


監督は「台北の朝、僕は恋をする」のアルヴィン・チェン。
脚本は原作者アビゲイル・ヒン・ウェン。

主演は「フラーハウス」のアシュリー・リャオ。
ほか出演は「好きだった君へ」シリーズのロス・バトラー、「ブックスマート」のニコ・ヒラガ、「Titans/タイタンズ」のチェルシー・ジャンなど。


2023年8月11日からアメリカで配信されたようです。

 

 

 

 

呉承恩原作「The Monkey King(原作邦題「西遊記」/映画邦題「モンキー・キング」)」

 

 

原作「西遊記」は明代に成立した中国の古典小説。仏典を求めて天竺への旅をする玄奘三蔵と、彼に同行した孫悟空、猪八戒、沙悟浄という半人半獣の仲間たちの冒険を描いた長編作品です。
岩波書店、福音館など複数の版元から、一般書、児童書、抄訳、リライトなど多くのバージョンの邦訳が出版されています。

 

このアニメは三蔵に出会う前の悟空を描いた前日譚のようです。

西遊記の3DCGアニメはすでに主に中国で複数作られてますが、こちらはアメリカ、中国、香港の合作。監督も脚本も中国系ではないアメリカ人です。


監督は「ボックストロール」のアンソニー・スタッチ。

脚本は「ブラザー・ベア」のスティーブ・ベンチッチ&ロン・J・フリードマン。

出演(声優)は「ジュラシック・ワールド」シリーズのBDウォン、実写「ムーラン」(ディズニー版)のロン・ユアン(Ron Yuan)、「クレイジー・リッチ!」のジミー・O・ヤン(Jimmy O. Yang)、TVアニメ版「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ」(2012年版)のフーン・リーなど。


2023年8月18日からNetflix配信予定されています。

 

 

 

 

 

M.T.アンダーソン原作「Landscape With Invisible Hand」(原作未訳)

 

 

原作は、「フィード」などで知られるアメリカのYA作家M.T.アンダーソンの2017年の作品。
すべての疾病を治療できるレベルの医療技術を含めた素晴らしいテクノロジーを人類に提供してくれる友好的(?)なエイリアンの団体「ヴヴ」がやってきたことで雇用市場が崩壊してしまった未来の地球。
地球の古くさい文化が大好きなヴヴ向けに「50年代カップル風」の交際をして、その動画配信で稼ごうとするティーンのカップル・アダムとクロエは配信を続けるうちに仲が最悪になってしまうが、別れたら(配信ができなくなり)家が破産してしまうので別れられない…

という設定のSF青春物語?のようです。


監督&脚本は「サラブレッド」のコリー・フィンレイ(Cory Finley)。


主演は「ボクらを見る目」のアサンティ・ブラック。

ほか出演は「レポーター・ガール」のカイリー・ロジャース、「アンクル・ドリュー」のティファニー・ハディッシュ、「ソプラノズ ニューアークに舞い降りたマフィアたち」のマイケル・ガンドルフィーニ、「13の理由」のジョシュ・ハミルトン、「ミッドサマー」のウィリアム・ジャクソン・ハーパーなど。


2023年8月18日アメリカでやや小規模に公開され、初登場21位。日本公開は未定です。

 

 

 

 

フィオナ・ローゼンブルーム原作「You Are SO Not Invited To My Bat Mitzvah!(映画邦題「バト・ミツバにはゼッタイ呼ばないから」)」(原作未訳)

 


原作はフィオナ・ローゼンブルーム(Fiona Rosenbloom)という作家による2005年発表のYA小説。
人生の重大イベントであるバト・ミツバ(ユダヤ教の成人式。男子13歳、女子12歳または13歳で行うようです)を控えたヒロインのステイシー。
BCBGのオシャレなドレスを着て、友だちに列席してもらって、片思い相手のアンディとダンスしたい――と計画していたのに、母さんからはフランケンシュタインの花嫁みたいなださいスパンコール付きドレスを押し付けられるし、親友が片思い相手とキスしているのを目撃してしまうしで何も計画通りにいかなくなってしまう…
…という、ユダヤ教の行事を題材にした青春ラブコメのようです。


監督は「クラッシュ真実の愛」のサミ・コーエン。
脚本は「アグリードール」のアリソン・ペック。

出演は「アナと雪の女王」のイディナ・メンゼル、「サーフサイド・ガールズ」のミヤ・チェック、「ウォーキング・デッド:ワールド・ビヨンド」のサマンサ・ロレイン(Samantha Lorraine)、「ナルコス」のルイス・ガスマンなど。

またアダム・サンドラーとジャッキー・サンドラー(奥さん)、セイディ・サンドラー(娘)、サニー・サンドラー(娘)とアダム・サンドラーの一家が揃って出演。(アダム・サンドラーはこの映画のプロデューサーでもあります)
ヒロインを演じるのはサニー・サンドラーで、現実世界でもお姉ちゃんのセイディ・サンドラーがその姉役のようです。お父さんのアダム・サンドラーはお父さん役。
お母さん役はさすがに実のお母さんではなくイディナ・メンゼルです。(※実のお母さんは別の役で出演)


2023年8月25日からNetflix配信されています。

 

 

 

9月編以降はまた後日。