2023 Locus Awards Winners【Locus Online】
https://locusmag.com/2023/06/2023-locus-awards-winners/

 

 

2023年ローカス賞最終候補作品が発表されました。

ローカス賞はアメリカのSF雑誌「ローカス」の読者投票によって選ばれるSF&ファンタジーの文学賞。SF部門、ファンタジー部門などの一般書部門のほかにヤングアダルト部門があります。

ローカスの編集者と書評家たちが選んだ前年の推薦作品リストが2月に発表され、その後ローカスの読者と一般からの投票によって受賞作品を決めます。

推薦作品発表(20作程度/2月)→最終候補作品(トップ10ファイナリスト)発表(10作/6月ごろ)→受賞作品発表(1作/7月ごろ)のスケジュールです。


このブログではYA部門のみのご紹介となりますので、全部門の受賞作品についてはいちばん上のリンク先をご参照ください。


今年のYA部門受賞作品はこちらです。


Dreams Bigger Than Heartbreak (Unstoppable #2)
by Charlie Jane Anders


ティナは自分が「平凡」だと思い悩んだことがない。その必要がない。愛されて育った普通の少女ティナ・メインズは彼女の一面。実は惑星間通信のできる救助ビーコンの保持者で、それが起動したら、世界を救って星々を旅するという夢が現実になるのだ。しかし実際にビーコンが起動すると、ティナの運命は予想していたものと違っていて…
 
伝説的な銀河の女英雄(宇宙人)のクローンとして作られ、仲間が迎えに来るのを待ちながら地球で暮らしている女子高生を主人公にした青春スペースオペラ。
「永遠の真夜中の都市」のチャーリー・ジェーン・アンダーズのYAデビュー作「Unstoppable」シリーズの2作目(上のあらすじは1作目のものです)。1作目「Victories Greater Than Death」(未訳)は昨年のこの部門の受賞作品。2年連続&2作連続受賞という珍しいことになりました。
Amazon Studiosでドラマ化の予定があります。

 

 

 

 

この本と賞を争った今年のトップ10ファイナリスト作品は以下の通りです。



The Scratch Daughters (Scapegracers #2)
by H.A. Clarke


ウエスト高校のカースト底辺付近でひっそり過ごしていたサイドウェイズ・パイクは魔女で、レズビアンで、そして人生通してはみ出し者で、友達作りに苦労してきた。でも学校トップの人気者女子3人に40ドルで雇われてハロウィンパーティに魔法をかけることになり、未知のグループに足を踏み入れることになった。その邪悪な三位一体の女子は、危険な天使で、砂糖をまぶした毒蛇で、そして今は、信じられないことにサイドウェイズの親友だ。
4人はパーティを計画し、むかつく男子に呪いを飛ばし、サイドウェイズに彼女を見つけようとし、彼女たちの魔法を盗もうとする魔女狩り人からうまく逃れる。

アメリカの新人ハンナ・アビゲイル・クラーク(Hannah Abigail Clarke)のデビュー作シリーズの2作目。(上のあらすじは1作目のものです)
2022年アンドレ・ノートン・ネビュラ賞最終候補作品。

 

 

 

 

Bloodmarked (Legendborn #2)
by Tracy Deonn


母さんが事故で亡くなった後、16歳のブリー・マシューズは家族の思い出や子供の頃の家と関わることは何もしたくなかった。ノースカロライナ大学チャペルヒル校での成績優秀な学生のための収容療法は、逃げ出すための完璧な方法に見えた。キャンパスでの初日に空飛ぶ妖魔を目撃してしまうまでは。
「レジェンドボーン」は化け物を狩る学生たちの秘密結社。自らを「マーリン」と呼ぶ謎のティーンがブリーの記憶を消そうとするが、それに失敗して彼女の風変わりな魔力と埋もれた記憶を呼び覚ましてしまう。

アメリカのYA作家トレイシー・デオン(Tracy Deonn)によるシリーズ2作目。(上のあらすじは1作目のものです)
Black Bear Televisionでドラマ化の予定があります。

 

 

 

 


The Kindred 
by Alechia Dow


貧しい惑星ハリの平民の少女ジョイ・アバラと若き公爵フェリックス・ハームディは、生まれた時から埋め込まれたチップで精神が繋がった「キンドレッド(血族)」。テレパシーで会話をし、お互いの感情を共有している。
ある日王家の人々が暗殺され、フェリックスは王位を継ぐ者になり、そして暗殺の容疑者にもなってしまった。自分が死ぬまで彼らは止まらないし、キンドレッドのジョイも標的にするだろう。
生まれて初めて直接顔を合わせた2人は、宇宙船を盗んで逃げ出し、地球と呼ばれる奇妙な星に不時着した。

ドイツ在住のYA作家アレキア・ドウ(Alechia Dow)の作品。彼女のデビュー作「The Sound of Stars」(未訳)と同じ世界観で書かれた姉妹編のようです。

 

 

 

 

Bitter (Pet #0.5)
by Akwaeke Emezi


ビターはユーカリプツの生徒として選ばれたことにわくわくしていた。その学校では、ビターはほかの創造的な才能を持つ生徒たちに囲まれて絵画の勉強ができる。でもこの楽園の壁の外では、通りをデモ隊が埋めてルシルの町を支配する不正義に抗議していた。ビターの本能はユーカリプツの壁の中にとどまろうとしているが、彼女の友人たちは大人たちの「物事はあるがまましておこう」という言葉に従わず、この世界に納得しようともしていない。
幼い頃からの友情、芸術への情熱、新たな恋の間で引き裂かれ、ビターは自分の居場所がわからない。アトリエか、通りのデモ隊の中か。

ナイジェリア生まれの作家アクワエケ・エメジ(Akwaeke Emezi)のファンタジーとしてもYA文学としても高い評価を受けた2019年のYAデビュー作「Pet」(未訳)の前日譚。同作のヒロインだったジャムの母親ビターの学生時代の物語のようです。

 

 

 

 

Unraveller 
by Frances Hardinge
【アンラベラー(仮)/フランシス・ハーディング/東京創元社】


人々の誰もが呪いを作り出せる世界で、その呪いを解く力を持つのはたったひとりだけ。
ケレンは自分の才のすべてを理解できているわけではないものの、悪意により姿を変えられてしまった人々を助けていた。鳥に変えられてしまったのを元に戻してあげたネトルは、今では常に一緒の相棒で親友だ。
だがケレン自身も呪いを受けており、自分とネトルでそれを解くことができない限り、ケレンは周りのすべての人々とすべての存在を崩壊させてしまう危険に直面することになる。

「嘘の木」、「ガラスの顔」のフランシス・ハーディングの最新作。東京創元社から今年邦訳刊行予定だそうです。

 

 

 

 

Rust in the Root 
by Justina Ireland


1937年。才能ある若き魔法使いのローラ・アン・ラングストンは、魔法を持つ者と持たない者で分断されたアメリカで暮らしている。
17歳の誕生日、魔法免許を取得して、「縁起の悪い存在」よりもましな何かになるため、瞬間移動の扉でペンシルヴェニアからニューヨーク市にやってきた。
しかしそれから6か月後、彼女が持っているのは空っぽの財布とだめになった夢だけ。戻る場所ももうないローラは政府の機関・魔法管理部隊に志願した。

架空の歴史を辿ったアメリカを舞台にしたスチームパンクファンタジーのようです。アメリカのYA作家ジャスティナ・アイルランド(Justina Ireland)の作品。

 

 

 

 

Lakelore 
by Anna-Marie McLemore


その湖の近くに住む人々は誰でも水底にある世界の物語を知っていた。半分は空気、半分は水の別世界。
でもそこへ行ったことがあるのはバスティアン・サルヴァノとロア・ガルシアだけだっった。バスティアンは地上と湖の下の別世界の両方で育った。ロアは水の下の世界をたった一度見たことで人生と運命を変えられてしまっていた。
ある日、空気と水の境界線がぼやけだし、湖の下の世界が地上へ浮かび上がりはじめた。自分たちの秘密を隠しておきたいなら、バスティアンとロアはそれを阻止しなければならないし、そのために協力しなければならない。

メキシコ系アメリカ人作家アンナ=マリー・マクレモア(Anna-Marie McLemore)の作品。2023年ラムダ賞YA部門最終候補。

 

 

 

 

Ballad & Dagger (Outlaw Saints #1)
by Daniel José Older 


マテオ・マティスは地元の伝説のミュージシャン・ゲルヴァルの目に留まるのを夢見る高校生の天才ピアニスト。16年前に彼の故郷サン・マドリガル島は海に消え、生き残りの人々はNYへと移住した。現在のブルックリンで強く結びついて暮らしている移住者たちはみんな故郷へ帰る方法を見つけてくれる誰かを待っている。
さまざまなルーツが混ざったサン・マドリガル独自の文化を祝う年に一度のパーティ「グランドフェイト」の夜、島を沈めた悪の存在が彼らを見つけ出した。そしてある人物による恐ろしい殺人を目撃してしまったマテオの人生は永遠に変わってしまう。

スターウォーズのスピンオフノベル「スター・ウォーズ ラスト・ショット」の著者として日本に上陸しているアメリカのYA作家ダニエル・ホセ・オルダーのオリジナル作品。シリーズ1作目。世界各地の多様な神話、伝説を題材にした現代ファンタジーを集めた児童書&YAレーベル「リック・リオーダン・プレゼンツ」の所属作品。サンテリア神話を題材にしています。
(サンテリアとは西アフリカから連れてこられた黒人奴隷たちに伝わるヨルバ人の神話と、植民者が持ち込んだキリスト教、その他心霊主義などが混ざって出来上がったキューバの民間信仰だそうです)

 

 

 

 

An Arrow to the Moon
by Emily X.R. Pan


ハンター・イーは完璧な弓矢の腕前を持っているが、それ以外は人生のすべてが間違った曲線を描いている。彼は家族の過去の過ちによって呪われており、逃げ出さない理由は弟と、超自然の風と、新しい高校で出会った素敵な女の子だけだ。
卒業を控え、両親の期待で息が詰まりそうで校則を破りはじめたルナ・チャンは、同じクラスに入ってきた不思議な転校生の男子と、奇妙な蛍と、フェアブリッジの町に広がる奇妙な亀裂によって自分の人生が覆されてしまったことに気がついた。ハンターとルナがお互いの家族同士の憎しみと秘密を解き明かしていくうち、彼らの周囲のすべてが崩れはじめる。

ロミオとジュリエット+中国神話なファンタジー小説だそうです。台湾系アメリカ人のYA作家エミリー・X・R・パン(Emily X.R. Pan)の作品。