2023 Top Ten Best Fiction【YALSA】
https://www.ala.org/yalsa/2023-top-ten-best-fiction

 

 

YALSA(全米図書館協会ヤングアダルトサービス部会)が選ぶ2023年Best Fiction for Young Adults(ヤングアダルトのためのベスト小説)と、トップ10作品が発表されました。

これは、良質な文学作品を、ヤングアダルト世代を相手にする司書や図書館職員たちなどに紹介するため年1回作成されるブックリスト。

過去16か月に出版された「12-18歳のための文学作品」が対象で、投票権を持つ15人の「YALSA’s Best Fiction for Young Adults Committee(YALSAヤングアダルトのためのベスト文学委員会)」メンバーによって選考されます。

1年間毎月ノミネート作品を選出し、年明け1月~2月ごろに、そこからベスト作品リスト(60~90冊程度)と、その中でも特にすぐれたトップ10リストを発表します。

今年のトップ10作品はこちらです。
(リストの全作品については上のリンク先をご参照ください)


All My Rage 
by Sabaa Tahir


サラフディンとノーアは親友以上の関係。ふたりは家族だ。カリフォルニア州ジュニパーの小さな砂漠の町のはみ出し者として一緒に育ち、ほかの誰にもできないほどお互いを理解し合っていた。ふたりの絆を壊してしまったあの喧嘩までは。
今のサラフディンは、体調が悪化していく母さんと、悲しみでアルコールに溺れる父さんを抱えて家業のモーテルのために奔走している。
一方ノーアは、暴力的な叔父の酒屋で寝起きしながら、こっそり大学へ行ってこの町を永遠に出ていく準備をするという綱渡りの生活をしている。

ベストセラー異世界ファンタジー「仮面の帝国守護者」のサバア・タヒアによる非ファンタジー作品。現代アメリカのパキスタン系少年少女の青春物語のようです。
2022年ボストングローブ・ホーンブック賞フィクション&詩部門受賞作品。2022年全米図書賞児童書YA部門受賞作品。2022年マイケル・L・プリンツ賞受賞。2022年ウォルター・ディーン・マイヤーズ賞YA部門オナー(銀賞)。

 

 

 

 

Gideon Green in Black and White
by Katie Henry


かつて地元のネックレス盗難事件を解決した町の少年探偵ギデオン・グリーン。でも中学生になると、1年中トレンチコートを着用していつでも宝物のフィルムノワールのコレクションに夢中なギデオンの周囲からはみんな離れていった。親友だったリリーも含め。
今は16歳。探偵業は引退し、毎日ひとりでランチを食べるトレンチコート姿の学校のはぐれ者として生活している。そんな彼のもとに、5年間ろくに話もしなかった元親友リリーが助けを求めてきた。学校新聞で地元の事件について記事を書こうとしている彼女の手伝いをするため、ギデオンは編集部に加わることに。

フィルムノワールの世界に生まれたかったフィルムノワールオタクの少年探偵を主人公にした青春ミステリ。アメリカのYA作家ケイティ・ヘンリー(Katie Henry)の作品。

 

 

 

 

I Must Betray You
by Ruta Sepetys


1989年ルーマニア。17歳のクリスチャンの夢は作家になること。でもルーマニア人に夢を見る自由はない。みんなルールと権力に縛られている。チャウシェスクの独裁政権下、クリスチャンは秘密警察から密告者になるように脅されている。彼の選択肢は2つだけ。愛するすべての人たちを裏切るか、東欧最悪の邪悪な独裁者をひそかに弱体化させるために自分の地位を使うか。

「灰色の地平線のかなたに」のルータ・セペティスの新作。現在2023年カーネギー賞ノミネート作品。

 

 

 

 

Man Made Monsters
by Andrea L. Rogers, Jeff Edwards (Illustrations)


ヴァンパイア、人狼、ゾンビ、エイリアンといったモンスターが登場する、19世紀、第一次世界大戦時代、ベトナム戦争の頃、現代、そして未来と、アメリカのさまざまな時代を舞台にしたホラー小説オムニバス。
しかし全体を読むと、同時にウィルソン家というチェロキーの一族の年代記にもなる、という趣向の作品のようです。

チェロキー族の作家アンドレア・L・ロジャース(Andrea L. Rogers)のYAデビュー作。2023年ウォルター・ディーン・マイヤーズ賞YA部門受賞作品。

 

 

 

 

The Door of No Return
by Kwame Alexander 


11歳のコーフィは上(かみ)クワンタの村の暮らしが何よりも大好きだ。家族も、炉端で聞く父さんの父さんの昔話も、近所の女の子アマも、それに泳ぐことも。彼が泳ぐ姿は非凡で、ヒメハヤのようだと言われる。だからアマや友達の前で、水泳の試合で年上の従兄弟に勝って見せたいと思っていた。
その前に、村祭りの相撲大会でコーフィの兄さんが上クワンタの代表に選ばれた。しかしその試合は始まるやいなや、思いがけない死によって終わった。コーフィの世界は覆され、彼は生きるために戦い、愛する地を遠く離れて旅に出ることになる。

アメリカのニューベリー賞作家クワメ・アレクサンダー(Kwame Alexander)の新作。

 

 

 

 

The Getaway
by Lamar Giles


高校2年生の少年ジェイは壁に囲まれた世界有数の有名リゾート地カーロフ・カントリーで最高の生活を送っている。家族がいて、仲間がいて、放課後は人気テーマパークでバイト。世界のほかのどの場所だろうとこんな楽しい生活はない。でも人々がこの地に休暇を過ごしにやってきて、すべては変わった。
食糧不足、山火事、洪水といった壁の外の世界の問題は深刻化し、やがてカーロフの中でもトラブルが起こるようになった。友だちのコニーの一家が失踪したのがそのはじまりだった。ジェイと仲間たちはこのユートピアのようなリゾート地の恐ろしい真実を知ることになる。

アメリカのYA作家ラマー・ジャイルズ(Lamar Giles)によるディストピア小説。

 

 

 

 

The Girl Who Fell Beneath the Sea
by Axie Oh


ミナの国は猛烈な嵐に襲われて荒廃している。村々は洪水に押し流され、わずかに残った資源をめぐって血みどろの争いが起こる。人々は、かつては守り神だった海神が、今は人間に死と絶望をもたらしていると信じている。海神をなだめるため、毎年「花嫁」として美しい少女が海に投げ込まれる。
その年に花嫁に選ばれたのは村で一番の美人のシム・チョンだったが、彼女の恋人でミナの兄ジョウンが儀式の夜に、死罪覚悟で海までついて行ってしまった。兄を救うため、シムのかわりに海に飛び込んだミナは、神々の王国で海神を探す。

韓国系アメリカ人のYA作家アクシー・オウ(Axie Oh)の作品。

 

 

 

 

The Life and Crimes of Hoodie Rosen
by Isaac Blum


フーディー・ローゼンの人生はそこまで悪くない。たしかに、彼の属する典型的なユダヤ教徒のコミュニティはほぼユダヤ人のいない閑静な町トレガロンに移動したが、フーディの世界はそんなに変わっていない。変わらずバスケもしているし、宿題もサボってるし、スーパーにはコーシェル(ユダヤ教徒が食べていい食べ物)のおやつもいっぱい。トレガロンの人々は典型的なユダヤ教徒が集団でいっぺんに引っ越してきて嬉しくないようだが、そこはフーディの問題じゃない。
でもそれは、アンナマリーに出会って恋をしてしまうまでの話。たまたまその子はユダヤ教徒コミュニティを追い出そうとしている頑固な市長の娘だったのだ。

アメリカの新人YA作家アイザック・ブラム(Isaac Blum)のデビュー作品。2023年ウィリアム・C・モリス賞受賞作品。2022年全米図書賞児童書YA部門ロングリスト作品。

 

 

 

 

The Summer of Bitter and Sweet
by Jen Ferguson


夏を前にしてルーは充分に面倒ごとを抱えている。この後彼女は家族が経営するアイスクリーム屋で、最近別れた元彼と、3年前に何も言わずに町を出ていって最近戻ってきた元親友キングとバイトすることになっている。一生関わりたくなかった生物学上の父親からは手紙が来ているが、向こうがどんなに言ったところでルーは彼に会うのは無理。
キングとの友情は思ってもみなかったほど暖かくて安心できるものだったが、そこで一家のアイスクリーム屋が危機に陥った。

カナダの新人YA作家ジェン・ファーガソン(Jen Ferguson)のデビュー作。2023年ウィリアム・C・モリス賞最終候補作品。2023年ストーンウォール賞YA部門オナー。

 

 

 

 

The Sunbearer Trials (The Sunbearer Duology #1)
by Aiden Thomas


太陽は10年に一度力を補充する。それによって太陽神ソルは世界をめぐり続けてオブシディアンの邪神たちを退けておける。
そのための儀式「サンビーラー・トライアル」には13歳から18歳までの半神たちがソルによって選ばれる。勝者にはソルの王国の寺院へ光と生命を届ける役目が与えられるが、敗者には最高の栄誉――ソルに捧げられる生贄になること――が与えられる。生贄の体は太陽石の燃料となり、次の10年間、ソルの王国の人々を守る。
その年のトライアルに選ばれたのは鳥の女神を母に持つ17歳の翡翠の半神テオと、悪運の神を父に持つ13歳のシオだった。

デビュー作「Cemetery Boys」(未訳)でブレイクしたアメリカのYA作家エイデン・トーマス(Aiden Thomas)の作品。メキシコ神話にインスパイアされたファンタジーのシリーズ1作目。

 

 

 

 

以上です。