Best Young Adult Fiction【Goodreads】
https://www.goodreads.com/choiceawards/best-young-adult-fiction-books-2021
年末恒例のアメリカ読書SNS「Goodreads」のお祭りGoodreads Choice Awardsの今年の受賞作品が発表されました。
これはアメリカ最大の読書SNS「Goodreads」のユーザー投票によるその年の人気本ランキング。
この「Goodreads Choice Awards」にはヤングアダルトだけで「ヤングアダルトフィクション部門」と「ヤングアダルトファンタジー&SF部門」と2つ部門があります。
児童書には「ミドルグレード(小学校高学年~中学生向け児童書)&児童書」と「絵本」部門の2つがあります。
ではYAフィクション部門の結果から。
(このブログではYAフィクション、YAファンタジー&SF、児童書&ミドルグレードの3部門のみ、各上位10作品までのご紹介となりますので、他の部門、10位以下の作品については上のリンク先などをご参照ください)
今年のトップはこちらの作品でした。(カッコ)の中は得票数です。
Firekeeper's Daughter (35,648 votes)
by Angeline Boulley
オジブウェ族の父は亡くなり、地元の町にも近くのオジブウェ族居留地にもなじめない18歳のドニ・フォンテイン。薬学を学ぶのが好きで、遠くの大学へ行って町を出るつもりだったけれど、叔父さんが薬物の過剰摂取で亡くなり、おばあちゃんが発作を起こし、あきらめて傷ついた母さんの世話をすることになった。唯一の光はホッケー部のスター選手の彼氏ジェイミーだったが、彼は何かを隠している様子。ドニが親友が殺害された事件の目撃者になってしまったことで、そのすべてが明るみに出た。
化学と伝統的な薬の知識を使って、ドニは捜査に乗り出す。
カナダのアシナベ(オジブウェ族)の新人YA作家アンジェリン・ボウリー(Angeline Boulley)の好評デビュー作品。オバマ元大統領夫妻の製作会社Higher GroundによってNetflixドラマ化の予定があります。現在2022年カーネギー賞ノミネート作品。
この部門でオジブウェ族の作家がトップになったの初めてじゃないかな。読んでみたいですねえ。
2位以下のトップ10作品は以下の通り。今年はミステリが強いです。トップ10のうち6作がミステリ。ノミネートにはたくさん入ってたラブコメ系は軒並みトップ10から漏れてますね。
2位 The Hawthorne Legacy (The Inheritance Games #2) (33,974 votes)
by Jennifer Lynn Barnes
高校で奨学金を勝ち取ろうと必死の平凡な女子高生エイヴリーは、ある日突然、会ったこともないテキサスの億万長者トビアス・ホーソーン(故人)の全遺産を理由もわからず譲り受けてしまい、相続の条件として、暗号や謎解きが隠されたホーソーン館で暮らすことになった。
そこにはまだ、エイヴリーに莫大な遺産を奪われた格好のホーソーンの遺族たちが住んでいて…
アメリカのYA作家ジェニファー・リン・バーンズ(Jennifer Lynn Barnes)によるスリラー2部作の1作目。「誰かが嘘をついている」と映画「ナイブズ・アウト」のファンにオススメだそうです。Amazonでドラマ化の予定があります。(上のあらすじは1作目のものです)
3位 Ace of Spades (33,442 votes)
by Faridah Àbíké-Íyímídé
音楽の才能を持つデヴォン・リチャーズと級長のチアマカ・アデバヨはエリート学校であるニヴェウス私立校の完璧な生徒だった。でも「エース」と名乗る謎の人物が、人生を覆し未来の計画のすべてを脅かすようなふたりの暗い秘密を暴きはじめた。
エースは暴露を止める気配はなく、いかれたいたずらは危険なゲームに変わった。
ロンドン生まれのナイジェリア系イギリス人で現在はスコットランドのアバディーン大学で学ぶ学生さんの新人作家ファリダ・アビケ・イミデ(Faridah Àbíké-Íyímídé)のデビュー作。「ゴシップガール」+「ゲット・アウト」な学園スリラーだそうです。現在2022年カーネギー賞ノミネート作品。
4位 Aristotle and Dante Dive into the Waters of the World (Aristotle and Dante #2) (32,298 votes)
by Benjamin Alire Sáenz
アリは高校ではずっと本当の自分を隠していた。何も言わず、目立たないようにして。4年生の年も同じように過ごすんだと思っていた。でもダンテに出会って、自分の中の何かがひび割れて開き、もう元には戻れなかった。新しい友だちに手をさしのべ、いじめに立ち向かい、自分の声を上げるようになった。そしていつもそこにはダンテがいた。穏やかで賢いダンテ。アリのいらだちをなだめて、心を望みで満たしてくれる。
80年代エル・パソに暮らすふたりの少年アリとダンテの成長を描いたアメリカの一般書&YA小説家で詩人ベンカミン・アリーラ・サエンス(Benjamin Alire Sáenz)の2012年のベストセラー青春小説「Aristotle and Dante Discover the Secrets of the Universe」(未訳)の9年ぶりの続編。1作目は現在実写映画化作品が撮影を終えてポストプロダクション中です。来年には見られそうかな。
5位 Concrete Rose (The Hate U Give #0) (24,346 votes)
by Angie Thomas
ドラッグ王の息子に生まれた17歳のマーヴェリック・カーターは自分の街ガーデンハイツで、父親が服役しているあいだ、学校、麻薬取引、ふたつの仕事を掛け持ちして暮らしている。すべてをコントロールできていると思っていたが、突然セブンという赤ん坊ができて、自分が彼の全てを守らないといけない父親になってしまった。
ベストセラー「ザ・ヘイト・ユー・ギヴ あなたがくれた憎しみ」のアンジー・トーマスの新作。「ザ・ヘイト・ユー・ギヴ」の前日譚にあたるストーリーで、主人公は同作のヒロイン・スターのお父さん(のティーンの頃)です。現在2022年カーネギー賞ノミネート作品。
6位 As Good As Dead (A Good Girl's Guide to Murder #3) (23,624 votes)
by Holly Jackson
大学入学をひかえたピップだが、この前の事件の結末に今も脅かされている。彼女の犯罪捜査実録ポッドキャストがバズったせいでネットで殺害予告が来るのはもう慣れているが、匿名の人物から「お前が消えたら誰が探してくれるのかな」というメッセージが何度も送られてくるのはさすがに気になった。
脅迫はエスカレートし、ピップは実際に自分が誰かにつけられていることに気がついた。そして6年前に逮捕された地元の連続殺人鬼とそのストーカーのつながりにも。
ホリー・ジャクソンの大ヒットYAミステリ「自由研究には向かない殺人」シリーズの3作目にして完結編。シリーズ1作目は東京創元社で邦訳が出ており、一般書に混ざって年末の「このミステリーがすごい」で2位を獲得するなど日本でも好評です。海外YAは世界を席巻したパラロマもディストピアも日本ではいまひとつ振るわなかったんだけど、ミステリは金脈かもですね。
ただ「誰かが嘘をついている」も「自由研究には向かない殺人」も「ローンガールハードボイルド」も売り手も読み手も大人ばかりが消費しちゃってて意外とYAまで届いてないので、YAに読まれてほしい。
7位 The Cousins (22,394 votes)
by Karen M. McManus
ストーリー家のミリー、オーブリー、ジョナの3人はいとこ同士だが、お互いのことはほとんど知らず、自分たちの祖母に会ったことがない。隠遁生活を送るお金持ちの祖母は、3人が生まれる前に、彼らの両親から相続権を奪った。だから夏休みに祖母の島で働かないかという招待の手紙を受け取ったとき、彼らは驚き、そして興味をそそられた。
しかし島で過ごすうち、彼らは家族の謎めいた暗い過去に気がついていくことになる。
「誰かが嘘をついている」のカレン・M・マクマナスのスタンドアローン作品。2021年エドガー賞YA部門ノミネート作品。
8位 Last Night at the Telegraph Club (18,241 votes)
by Malinda Lo
17歳のリリー・フーは、相手を見たい、そばに行きたい、触れたいと思うその感情がいつ根付いたのか思い出せない。いつからそれが育ちはじめたにしろ、花開いたのはあの瞬間。レズビアン・クラブ「テレグラフ・バー」のネオン看板の下でキャスリーン・ミラーに出会ったとき。
しかし赤狩り時代の1954年のアメリカ、とくにチャイナタウンは、女の子同士が恋に落ちるには危険な場所だった。
レズビアンのキャラクターが登場するYA向けのSFやファンタジーを多く書いている中国系アメリカ人の作家マリンダ・ロー(Malinda Lo)による歴史小説。2021年全米図書賞児童書YA部門受賞作品。
9位 Instructions for Dancing (17,685 votes)
by Nicola Yoon
両親が離婚してから、17歳のエヴィー・トーマスはもはや愛を信じていない。あるありふれた午後、妹のダニカと彼氏がキスしているのを見たエヴィーは、彼らの恋の始まりと終わりを幻視するという奇妙な体験をした。
なぜこんなことが起きたのかと考えるうちに、エヴィーは「ラ・ブレア・ダンススタジオ」というダンス教室に出会い、そこでXという名前の少年と一緒にダンスを習うことに。
「エブリシング、エブリシング わたしと世界のあいだに」のニコラ・ユンの新作。
10位 The Box in the Woods (Truly Devious #4) (13,148 votes)
by Maureen Johnson
素人探偵スティヴィ・ベルには素敵な殺人事件が必要だ。自分の高校の殺人犯を捕まえた後、彼女は正常(つまり退屈)な夏休みを過ごすために実家に戻った。
しかしそこでスティヴィは、サニーパインズのオーナーからのメッセージを受け取った。そこはかつてはキャンプ・ワンダーフォールという名前で、未解決事件「森の箱殺人事件」で有名だった施設だ。1978年に4人のキャンプカウンセラーが殺され、遺体がおぞましい姿でさらされていた場所。新しいオーナーはその捜査をスティヴィに依頼してきた。
モウリーン・ジョンソンのYAミステリのヒット作品「寄宿学校の天才探偵」シリーズの4作目。この巻はエリンガム・アカデミーの外が舞台になっているようです。
シリーズ3作目まで東京創元社から邦訳が出ています。