2021 Locus Awards Winners【Locus Online】
https://locusmag.com/2021/06/2021-locus-awards-winners/

 

 

2021年 ローカス賞が発表されました。

ローカス賞はアメリカのSF雑誌「ローカス」の読者投票によって選ばれるSF&ファンタジーの文学賞。SF部門、ファンタジー部門などの一般書部門のほかにヤングアダルト部門があります。

ローカスの編集者と書評家たちが選んだ前年の推薦作品リストが2月に発表され、その後ローカスの読者と一般からの投票によって受賞作品を決めます。

推薦作品発表(20作程度/2月)→最終候補作品発表(5作程度/6月ごろ)→受賞作品発表(1作/7月ごろ)のスケジュールです。


このブログではほぼYA部門のみのご紹介となりますので、全部門の受賞作品についてはいちばん上のリンク先をご参照ください。


今年のYA部門受賞作品はこちらです。


A Wizard’s Guide to Defensive Baking
by T. Kingfisher


14歳のモナは町の防衛を担当する魔術師たちとは違う。雷を操作することもできないし、水と話すこともできない。使い魔は魔法を注ぎ込んだせいで命を持ってしまったパン生地だし、彼女の魔法はパンにしかかからない。叔母さんのパン屋で踊るジンジャーブレッドマンを作る生活に満足している。
ところがそのパン屋で死体を発見して、モナの人生は一変した。町をうろついて魔法使いを狙う暗殺者の次のターゲットになってしまったのだ。

アメリカの児童書作家アーシュラ・ヴァーノン(Ursula Vernon)がYA以上対象の作品用の別ペンネーム「T.キングフィッシャー(T. Kingfisher)」名義で執筆した作品。
2020年アンドレ・ノートン賞受賞作品。現在2021年ロードスター賞最終候補。

 

 

 

 

 

この本と賞を争った今年の最終候補作品は以下の通り。




Over the Woodward Wall (The Up-and-Under #1)
by A. Deborah Baker


優等生の少年エイヴリーと冒険好きの少女ジブ。同じ通りに住んでいても世界が違っていた2人は、ある朝の登校中、予定外の寄り道で石壁を乗り越えたところ、謎と冒険と奇妙な生き物でいっぱいのもうひとつの世界「上と下(アップ&アンダー)」へ行ってしまった。元の世界に戻るには、不可能の都へ行って「杖の女王」の力で送り返してもらわなければならない。

「不思議の国の少女たち」のショーニン・マグワイアが別ペンネーム「A・デボラ・ベイカー(A. Deborah Baker)」名義で執筆した児童書デビュー作品。シリーズ1作目。「オズの魔法使い」っぽい異世界ファンタジーのようです。

 

 



The Silvered Serpents (The Gilded Wolves #2)
by Roshani Chokshi 


1889年パリ。セヴェリン・モンタニエ=アラリーはパリ中に知られる富豪のホテル経営者。でもそれは表の顔で、もうひとつの顔は、パリのもっとも有力な家々からなる秘密結社によって魔法で作られた品々を盗む窃盗団のリーダー。
仲間は、血はつながっていないが兄弟同然のトリスタン、フィリピン人の歴史家エンリケ、ポーランド人の女技術者ゾフィア、秘密を抱えるインド人の踊り子ライラ。

「アル・シャーと時の終わり」のロシャニ・チョクシによるYA作品。シリーズ2作目。(上のあらすじは1作目のものです)

 

 

 

 

The Scapegracers  (Scapegracers #1)
by Hannah Abigail Clarke


ウエスト高校のカースト底辺付近でひっそり過ごしていたサイドウェイズ・パイクは魔女で、レズビアンで、そして人生通してはみ出し者で、友達作りに苦労してきた。でも学校トップの人気者女子3人に40ドルで雇われてハロウィンパーティに魔法をかけることになり、未知のグループに足を踏み入れることになった。その邪悪な三位一体の女子は、危険な天使で、砂糖をまぶした毒蛇で、そして今は、信じられないことにサイドウェイズの親友だ。
4人はパーティを計画し、むかつく男子に呪いを飛ばし、サイドウェイズに彼女を見つけようとし、彼女たちの魔法を盗もうとする魔女狩り人からうまく逃れる。

アメリカの新人ハンナ・アビゲイル・クラーク(Hannah Abigail Clarke)のデビュー作品。3部作の1作目。

 

 

 

 

Legendborn (Legendborn #1)
by Tracy Deonn


母さんが事故で亡くなった後、16歳のブリー・マシューズは家族の思い出や子供の頃の家と関わることは何もしたくなかった。ノースカロライナ大学チャペルヒル校での成績優秀な学生のための収容療法は、逃げ出すための完璧な方法に見えた。キャンパスでの初日に空飛ぶ妖魔を目撃してしまうまでは。
「レジェンドボーン」は化け物を狩る学生たちの秘密結社。自らを「マーリン」と呼ぶ謎のティーンがブリーの記憶を消そうとするが、それに失敗して彼女のユニークな魔力と埋もれた記憶を呼び覚ましてしまう。

アメリカのYA作家トレイシー・デオン(Tracy Deonn)の長編デビュー作品。シリーズ1作目。
2021年コレッタ・スコット・キング/ジョン・ステップトー新人作家賞受賞。現在2021年ロードスター賞最終候補。

 

 

 

 

Deathless Divide (Dread Nation #2)
by Justina Ireland


白人の母と黒人の父を持つジェイン・マッキーンが生まれたのは、南北戦争の戦場で死者が歩きはじめ、戦争が道を外れ、アメリカが永久に変わってしまった日の2日前のことだった。
今の国では、死者と戦う危険な仕事は、子どもの頃に家族から引き離され、訓練学校で戦闘を学ばされた黒人とインディアンの役目。
ジェインは武器の扱いも礼儀作法も学んで、富裕層を護衛するアテンダント(従者)をめざす。学校での教育を終えたらケンタッキーの我が家へ帰るつもりだが…

アメリカのYA&児童書作家ジャスティナ・アイルランド(Justina Ireland)のブレイク作。南北戦争時代を舞台にした歴史改変ゾンビもの「Dread Nation」シリーズの2作目。(上のあらすじは1作目ものです)

 

 

 

 

A Song Below Water (A Song Below Water #1)
by Bethany C. Morrow


サイレン(海の妖獣)であるということを隠すことを強いられている16歳のタヴィアは、片手で数えられるくらいしか黒人がおらず、魔法を持つ者となるともっと少ないオレゴン州ポートランドに閉じ込められている。でも少なくともタヴィアにはいつも親友のエフィーがいて、学校劇、家族の秘密、報われない片想いに一緒に立ち向かってきた。
ところが国を揺るがすサイレン殺人事件の後、全てが変わった。

アメリカのファンタジー作家べサニー・C・モロウ(Bethany C. Morrow)のYAデビュー作品。シリーズ1作目。

 

 

 

 

Shadowshaper Legacy (Shadowshaper Cypher #3)
by Daniel José Older


夏休みのあいだ、絵が好きなNYのティーン・シエラ・サンチャゴの周りでは、ゾンビ男の出現や涙を流すグラフィティアートなどおかしな現象が相次いだ。
やがてシエラは、絵画や音楽、物語に宿る魂と交流できる人々の結社「シャドウシェイパーズ」に出くわす。その結社の裏切り者であるドクター・ジョナサンが、ほかのメンバーたちを殺そうと狙っているらしい。
友達やハンサムなアーティストのロビーとこの事件に巻き込まれたシエラは、やがて自分のシャドウシェイパーとしての才能や家族の過去を見つけだしていく。

スターウォーズのスピンオフノベル「スター・ウォーズ ラスト・ショット」の著者として日本に上陸しているアメリカのYA作家ダニエル・ホセ・オルダーのオリジナル作品の人気シリーズ「Shadowshaper Cypher」の3作目。(上のあらすじは1作目のものです)

 

 

 

 

Race to the Sun
by Rebecca Roanhorse


7年生のニゾーニ・ビグレイはモンスターを探知することができる。たとえばバスケットボールの試合のスタンドに現れた上等なスーツの男とか。その男、ミスター・チャールズはは父さんが働く会社の新しい上司で、、ニゾーニと弟のマックとそのナバホの血筋、そして双子の英雄の伝説に興味を抱いていた。ニゾーニは彼を危険だと感じていたが、父さんは信じないだろう。
その父さんが「逃げろ」というメモを残して失踪し、ニゾーニとマック、親友のダヴェリイは救出に乗り出すことになる。

プエブロインディアンの血をひくアメリカのSF作家レベッカ・ローンホース(Rebecca Roanhorse)の児童書作品。世界各地の神話、伝承と現代FT&SFが融合した作品のみを出すディズニーハイペリオン社の児童書レーベル「リック・リオーダン・プレゼンツ」所属作品で、アメリカインディアンの伝承が題材になっているようです。

 

 

 

 

A Peculiar Peril (Misadventures of Jonathan Lambshead #1)
by Jeff VanderMeer


ジョナサン・ラムシェッドは謎めいた人物だった祖父を亡くして孤児になり、館と遺品を受け継いだ。
そしてすぐに、館の地下室がただの奇妙な場所ではないと気がついた。そこには3つの扉があって、「オーロラ」と呼ばれる世界につながっていた。そこは魔法があふれ歴史は改変されていて、アレイスター・クロウリーと呼ばれるオカルト使いの独裁者が軍を率いてヨーロッパを侵略しているもうひとつの地球だった。

「サザーン・リーチ」シリーズなどで知られるSF作家ジェフ・ヴァンダミアの初?YA。2部作の1作目。

 

 

 

 

 


また、今年はYA部門ではなく長編デビュー作が対象(一般書も含めて選考対象)のFIRST NOVEL(第一長編)部門でこちらのYA作品が受賞していますので、あわせてご紹介します。


Elatsoe
by Darcie Little Badger, Rovina Cai (Illustrator)


現実のアメリカとよく似た世界。宿題があって、親友がいて、ピスタチオのアイスがあって。
でもいくつか違いがある。こちらのアメリカは、魔法とモンスターと知識と、そしてインディアンとそれ以外の人々の伝説とでドラマチックに作り上げられた世界。
この少々奇妙なアメリカに住む少女エラトソーは、リパン・アパッチの一族に伝わる力で死んだ動物の幽霊を呼び覚すことができる。大好きないとこが殺され、彼女は町の完璧な見た目の下にある恐ろしい秘密を、機転と才能と友だちの力を借りて暴いて家族を守ろうとする。

リパン・アパッチ族の新人YA作家ダーシー・リトル・バジャー(Darcie Little Badger)の作品。魔法が存在するパラレルワールドなアメリカが舞台のファンタジーのようです。
2021年ゴールデン・カイト賞YAフィクション部門オナー(銀賞)作品。2020年アンドレ・ノートン賞最終候補作品。現在2021年ロードスター賞最終候補。