2020 National Book Awards Longlist for Young People’s Literature【NBA】
https://www.nationalbook.org/2020-national-book-awards-longlist-for-young-peoples-literature/

 

2020年全米図書賞児童書YA部門のロングリストが発表されました。

全米図書賞はNational Book Foundation(全米図書協会)によって選ばれる賞で、アメリカでもっとも権威ある文学賞のひとつ。
毎年全米図書協会によって、毎年各部門5人ずつ、計20人の審査員が選ばれ、彼らによって審査が行われます。

ロングリスト発表(9月/10作程度)→最終候補(ファイナリスト)発表(10月/5作程度)→受賞作品発表(11月/1作) のプロセスで賞が決まります。

フィクション、ノンフィクション、詩、児童書&YA、翻訳作品と部門がありますが、このブログでは児童書・YA(Young People’s Literature)部門のみのご紹介となります。



今年の全米図書賞児童書・YA部門ロングリストは以下の通り。


King and the Dragonflies
by Kacen Callender 


12歳のキングストン・ジェイムズは、亡くなった兄さんのカリードはトンボになったのだと信じている。カリードはまだ夢の中に訪ねてきてくれるが、キングストンは悲しみが家族を変えてしまうのを見つめながら、その秘密を守っている。
亡くなる前日に、カリードはキングに、親友のサンディと付き合うのをやめるように言っていた。サンディはゲイだと疑われていたから。
しかし暴力をふるう父親を持つサンディに助けを求められたキングは、彼と一緒に逃げ出して一緒に暮らしはじめ、やがて自分自身について、兄の死の真実について向かい合わなければならなくなる。

2018年にデビューして現時点ですでに著作が6作と多作な上にいずれも好評な注目の作家。アメリカ領ヴァージン諸島出身のYA&ミドルグレード作家カセン・キャレンダー(Kacen Callender)の新作。
2020年ボストングローブ・ホーンブック賞フィクション&詩部門受賞作品。

 

 

 

 

We Are Not Free
by Traci Chee


わたしのまわりの世界には、おしゃべりして冗談を言って笑う友人たちがいる。外の世界には、収容キャンプ、有刺鉄線、監視塔、わたしたちを憎んでいる町と国がある。
わたしたちは自由じゃない。でも孤独じゃない。

サンフランシスコのジャパンタウンで育った14人の「ニセイ(日系二世)」の少年少女たちの視点から、第二次世界大戦中の日系人強制収容所での彼らの生活を描く歴史青春小説。
カーカス賞最終候補になった異世界ファンタジー「The Reader」シリーズ(未訳)が好評だった日系アメリカ人YA作家トレイシー・チイ(Traci Chee)が祖父母や親戚たちへの取材をもとに執筆した、彼女初の非ファンタジー作品です。

 

 

 

 

Lifting as We Climb: Black Women’s Battle for the Ballot Box 
by Evette Dionne 


有色人種の、とくにアフリカ系アメリカ人の女性は、参政権のため、合衆国市民として完全に平等に扱われるために戦っていた。その前線はジェンダーだけではない。アフリカ系アメリカ人の女性たちは、黒人の同志たちとのあいだに線を引く白人の女性参政権論者も相手にしなければならなかった。アメリカの女性参政権運動の中に蔓延する深い人種差別に打ち勝つ必要があった。

アフリカ系アメリカ人たちの女性参政権運動を描いた児童向け歴史ノンフィクション。アメリカのブラックフェミニストカルチャーをテーマに執筆するライター・エヴェット・ディオンヌ(Evette Dionne)の作品。

 

 

 

 

Apple (Skin to the Core) 
by Eric Gansworth


タスカローラ族に混ざって暮らすオノンダガ族一家に生まれた著者が、自身の人生、アメリカのネイティブの人々について、政府によるインディアン寄宿学校の負の遺産などについて詩の形式で語る回顧録。

オノンダガ族のYA作家エリック・ガンスワース(Eric Gansworth)の作品。

 

 

 

 

Every Body Looking (Ada #1)
by Candice Iloh


子どもの頃の最初の思い出、いとこから受けた虐待、母親の薬物中毒、ナイジェリアではなくアメリカの娘のために家を作ろうとする父親の試み。
ナイジェリア系アメリカ人の新人キャンディス・イロー(Candice Iloh)のデビュー作品。ファーストジェネレーション(移民2世)のヒロインを主人公にした自伝的ヴァースノベル(詩で書かれた小説)のようです。シリーズ1作目。

 

 

 

 

When Stars Are Scattered 
by Omar Mohame & Victoria Jamieson 


オマーと弟のハサンは、人生のほとんどをケニアの難民キャンプ・ダダーブで過ごしていた。そこでの生活は厳しい。十分な食べ物があったことがなく、苦痛なほどに退屈で、言葉が話せない弟は必要な医療ケアを受けられない。だから学校へ行ける機会を得たとき、オマーはこれが未来へのチャンスだと思った…でもそれは、たった一人の家族である弟を毎日残していくということだ。

ソマリア難民オマー・モハメ(Omar Mohame)の少年時代の物語をアメリカの児童書作家&イラストレーターのヴィクトリア・ジェイミソン(Victoria Jamieson)が執筆したグラフィックノベル作品。

 

 

 

 

Trowbridge Road
by Marcella Pixley 


1983年の夏、トロウブリッジロード。ひと月前に父さんがエイズの合併症で亡くなってから、母さんは料理をすることも家から出ることもせず、あらゆるところに存在すると信じている病原菌を避けて閉じこもった。お腹を空かせたジェーンは近所へ出かけ、想像力が豊かな少年ジギーと友だちになる。
だがジェーンの外の世界とのつながりが強くなるにつれ、母さんはますます遠く、危険なまでになり、ジェーンは真実と回復を選ぶか、唯一の家庭を選ぶかを決めなければならなくなる。

80年代を舞台にした青春物語のようです。アメリカの教師でYA作家マルセラ・ピクスリー(Marcella Pixley)の作品。

 

 

 

 

Moon: The People, Technology, and Daring Feats of Science Behind Humanity’s Greatest Adventure
by John Rocco


月面着陸は人類史上もっとも野心的でスリリングで危険な冒険のひとつだった。この美しく綿密に取材された絵本は、40万人にのぼる名もなきヒーロー――技術者、数学者、裁縫師、溶接工、工場労働者――と彼らの発明、NASAの前代未聞の試みを成功させた技術革新を語る。

絵本「くらくてあかるいよる」のジョン・ロッコがアポロ計画を描いた264ページの大作歴史ノンフィクション絵本。

 

 

 

 

The Way Back 
by Gavriel Savit


東欧のユダヤ人にとって、魔物はどこにでもいる存在だ。真っ暗な真夜中に屋根の上で踊り、木々の中に集い、死者を悩まし、生者を連れ去ろうと手を伸ばす。
でも魔物たちには彼らの国がある。迷う魂たちが暮らし、魔物の貴族たちが治める「はるかな国」。死の天使が小さな町に通りかかったある夜、2人の若者イェシュダとブルマは「はるかな国」への旅へ送り出されることになる。

ユダヤの民話を題材にした、ニール・ゲイマンとフィリップ・プルマンのファンにおすすめのダークファンタジーだそうです。
俳優・シンガーとしても活動する児童書作家ガヴリエル・サヴィット(Gavriel Savit)の作品。ヘブライ語でも書く作家みたいですが、訳者の名前が見当たらないので、これは英語が原書なのかな?
プロフィールに東京で舞台に立ったことがあると書いてありますが、調べると2013年のディズニー・オン・クラシックの出演者に「ガブリエル・サヴィット」さんがいますね。同一人物だろうか。

 

 

 

 

Cemetery Boys
by Aiden Thomas 


保守的なラテン系の家族になかなかジェンダーを受け入れてもらえないトランスジェンダーの少年ヤドリエルは、自分が生者を癒すブルージャ(女魔術師)ではなく死者の魂を解き放つブルージョ(男魔術師)だと示すことに決めた。いとこで親友のマリーザの助けを借り、ヤドリエルは儀式を行って、いとこの幽霊を探して解き放とうとする。
ところが彼が呼び出した幽霊は殺された不良少年のジュリアンで、おとなしく死んでいようとはしない。仕方なくジュリアンを助けることにしたヤドリエルだが、一緒に長く過ごせば過ごすほど彼を行かせたくなくなってしまう。

ラテン文化を取り入れたファンタジー&ラブストーリーのようです。アメリカの新人YA作家エイデン・トーマス(Aiden Thomas)の作品。

 

 

 

以上10作品。