2020 Hugo Awards【The Hugo Awards】
http://www.thehugoawards.org/hugo-history/2020-hugo-awards/

 

2020年 ロードスター賞(Lodestar Award)の最終候補作品が発表されました。

こちらの賞は、毎年世界のどこかでSFファンの集会「ワールドコン」を催し、1950年代から続くファン投票によるSF文学賞ヒューゴー賞を管理している団体The World Science Fiction Society(世界SF協会/WSFS)が創設したYA対象のSF&ファンタジー文学賞。

ヒューゴー賞と同じくファン投票で選ばれ、同賞と一緒にワールドコンで発表されますが、「ヒューゴー賞のYA部門」という扱いではなく、同じ団体が行う別の賞、という位置付けのようです。

最終候補発表(4月ごろ/6作)→受賞作品発表(8月ごろ/1作)のスケジュールです。



今年の最終候補作品は以下の通りです。


Catfishing on CatNet(Catfishing on CatNet#1)
by Naomi Kritzer


別れた父さんに怯えて引っ越しを繰り返す母さんのせいで、ステフは1か所で6か月以上暮らしたことがない。彼女の唯一の「いつもの場所」は、ユーザーが動物画像をアップしあうネット上のコミュニティ「ねこネット」だ。ステフはそこの管理人「チェシャねこ」が意識を持つAIだということを知らないのだが。
しかしステフの恐ろしい過去が彼女に追いつき、またチェシャねこの存在が外部の人間に知られてしまい、彼女を救えるかどうかはステフ自身とそのネット上&ネット外の仲間たちの肩にかかることになった。

動物画像SNSに集うねこ画像好きなAIと危険な過去を持つ人間の少女とその仲間たちの友情を描く近未来SFサスペンス。アメリカのSF作家ナオミ・クリッツァー(Naomi Kritzer)の初YA。シリーズ1作目。
一般書扱いの短編として2016年のヒューゴ―賞やローカス賞を受賞している「Cat Pictures Please」(未訳)という作品のYA長編化作品のようです。
現在2020年エドガー賞YA部門ノミネート作品。現在2020年ローカス賞YA部門推薦作品。現在2029年アンドレ・ノートン賞ノミネート作品。

今年のジャンル系賞レースはこの作品が強いですね。これ実はラムダ賞のYA部門もいけそうな作品なので、もしかしたらSF系(ローカス、アンドレ・ノートン、ロードスター)、ミステリ系(エドガー)、LGBT(ラムダ)と3ジャンルで候補になれるんじゃ?って予想してたんですが、ラムダ賞は候補漏れしました。

 

 
 
 

 

 

 

Deeplight
by Frances Hardinge


神々は死に絶えた。何十年も前、彼らはお互いに敵対し、お互いを引き裂いた。誰も理由は知らない。だが、彼らは本当に永久にいなくなったのだろうか?
いまだに脈打っている恐ろしい神の心臓を発見した15歳のハークは、親友ジェルトの命を救うため、すべてを危険にさらして、盗人や、軍事科学者や、狂信的なカルト集団の手からそれを守ることになった。
でもその心臓のせいで、ジェルトはしだいに不気味な変貌を遂げていく。どんどん怪物になっていく友だちへの友情をいつまで保てるだろうか。

「嘘の木」、「カッコーの歌」のフランシス・ハーディングの新作。「海底2万マイル」+「フランケンシュタイン」な作品だそうです。早く読みたい。
現在2020年YA Book Prizeショートリスト作品。

 

 

 

Dragon Pearl

by Yoon Ha Lee

13歳のミンは狐の精霊の末裔。でも母さんは家族を守るため、家の人間に狐の魔法を絶対使わせない。誘惑の術も変身の術も。家訓に縛られながら親戚に囲まれて窮屈な暮らしをするミンは、ほこりをかぶった貧乏惑星ジンジュを逃げ出したくてたまらない。兄のジュンを追って宇宙軍に入り、たくさんの世界を見る日が待ちきれない。
ところが、ジュンが任務を放棄して強大な力を持つ伝説の「龍珠」を探しに行ってしまったとの知らせを受けた。ミンは兄の汚名を晴らすために彼を探しに出発する。

一般書「ナインフォックスの覚醒」で日本に上陸したばかりの韓国系アメリカ人SF&ファンタジー作家ユーン・ハ・リー(Yoon Ha Lee)による児童書。
世界各地の神話、伝承と現代FT&SFが融合した作品のみを出すディズニーハイペリオン社の児童書レーベル「リック・リオーダン・プレゼンツ」所属作品。こちらの作品は韓国民話とSFが融合しているようです。
現在2020年ローカス賞YA部門推薦作品、現在2019年アンドレ・ノートン賞ノミネート作品。

 

 
 
 

 

 

 

Minor Mage
by T. Kingfisher


オリヴァーはものすごく二流の魔法使い。彼の使い魔は日に何度もそれを思い知らせてくる。
知ってる呪文は3個だけで、そのうちいちばん使えるのは自分のアルマジロの鱗屑アレルギーを緩和する呪文。使い魔がアルマジロだから重要だ。四大精霊を召喚しようとすれば鼻血を出すし、四大精霊にティッシュを持ってきてもらってぽんぽんなぐさめてもらってひと吹きの魔法とともに消え去られるほど気まずいことはない。
オリヴァーはものすごく二流。でも、残念ながら村で唯一の魔法使いだ。

アメリカの児童書作家アーシュラ・ヴァーノン(Ursula Vernon)がYA以上対象の作品用の別ペンネーム「T.キングフィッシャー(T. Kingfisher)」名義で執筆した作品。

 

 

 

 

Riverland
by
Fran Wilde


家がうまくいっていないとき、12歳のエレノアと妹のマイクは、エレノアのベッドの下の秘密の場所に隠れて、怪物のお話を語る。そのお話や母さんの家の魔法が、おせっかいな人々や父さんの怒りから2人を守ってくれるようだった。
でも父さんが家宝の魔女のガラス玉を壊してしまうと、ベッドの下に突然川が現れて、エレノアとマイクは別の世界へ入り込んでしまった。そこでは夢が生まれ、悪夢が現実世界へ現れ出ようと暴れ、秘密が重大な結果を生む。

DV父を持つ姉妹の異世界冒険物語のようです。アメリカのSF&ファンタジー作家フラン・ワイルド(Fran Wilde)の作品。
現在2019年アンドレ・ノートン賞ノミネート作品。

 

 

 

 

Wicked King (The Folk of the Air #2)
by Holly Black


7歳の時に両親を殺され、2人の妹と一緒に暴力的で危険な妖精たちの世界の裏切り渦巻く宮廷へ連れて行かれてそこで育ったジュード。17歳の年に、人間でありながら妖精の世界で暮らし続ける権利を求め、妖精王の息子である残忍なカーデン王子と戦う。

「最後のゲーム」のホリー・ブラックによるシリーズ2作目。ユニヴァーサルで映画化の予定があります。(上のあらすじは1作目のものです)
現在2020年ローカス賞YA部門推薦作品。

 

 

 

以上。受賞作品の発表は8月ごろ。