2019 Great Graphic Novels for Teens Top Ten【YALSA】
http://www.ala.org/yalsa/2019-great-graphic-novels-teens-top-ten


YALSA(全米図書館協会ヤングアダルト図書館サービス部会)が2019年のGreat Graphic Novels(すぐれたグラフィック・ノベル)ブックリストを発表しました。

アメリカで刊行されたグラフィックノベル(漫画)作品のなかで、YA向けとしてすぐれているものが数十作~100作ほど選出され、その中から特に良かったトップ10リストが毎年発表されます。

ニューベリー賞、プリンツ賞を含む多くの文学賞が一挙に発表される全米図書館協会のYA&児童書の大イベントYouth Media Awardが今月28日に開催予定で、例年このリストはその後に発表されることが多いのですが、今年は先に出ました。


今年のトップ10作品は以下の通り。日本で読める作品も入っています。


Anne Frank's Diary: The Graphic Adaptation
by Ari Folman (adapter), Anne Frank (Original text), David Polonsky (Illustrator)


「コングレス未来学会議」「戦場でワルツを」などで知られるイスラエルの映画監督アリ・フォルマンがシナリオを、「戦場でワルツを」で美術を担当していたデヴィッド・ポロンスキーが作画を担当した「アンネの日記」のグラフィックノベル化作品。
中身の雰囲気がわかるブックトレイラーがあるので貼っておきます。原作付きのコミカライズですが、製作者のガチのアーティスト魂を感じる。


Anne Frank's Diary: The Graphic Adaptation





Hey, Kiddo
by Jarrett J. Krosoczka


ジャレット・クロザウスカはヘロイン中毒で刑務所に入っている母親、学校の旅行で飛行機に乗るために取った出生証明を見るまで名前も知らなかった父親を持ち、祖父母に育てられた。

日本では絵本「ブーンとブラムとピーブゥとモコモコメーとコッコのパンクファーム」が訳されているグラフィックノベル作家ジャレット・J. クロザウスカが少年時代の父親探し、母親との複雑な関係、祖父母との日々の生活、アーティストになるまでの道のりを語るグラフィックノベル回顧録。
2018年全米図書賞児童書部門最終候補。2019年ゴールデン・カイト賞YAノンフィクション部門オナー(銀賞)、現在2019年YALSAノンフィクション賞最終候補。
今年のYA系賞レースでいちばん強かったグラフィックノベル作品。

Hey, KiddoHey, Kiddo
1,778円
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The Unwanted: Stories of the Syrian Refugees
by Don Brown


2011年、内戦で引き裂かれたシリアから、エクソダス規模の難民があふれだした。驚くほどの犠牲者たちの洪水は周辺国を呆然とさせ、次いで混沌が広がっていった。分断と支援のための予算が大きくなるにつれて、受け入れ国の怒りは高まる。2017年には、多くの人々が、彼ら戦争の犠牲者たちに背を向けたくなっていた。難民たちは「いらないもの(アンウォンテッド)」なのだ。

アメリカの児童書作家&イラストレーター・ドン・ブラウン(Don Brown)によるシリア難民を描くグラフィックノベル。現在2019年YALSAノンフィクション賞最終候補。





Crush (Awkward #3)
by Svetlana Chmakova


ジョージは何もかもうまくいっているように見える。誰も彼をいじめたりできないほど大柄だし、性格も良くて、固い信頼で結ばれた友だちのグループもいる。唯一調子が狂うのは、ある女の子と接する時だけ。でも男子の集団力学が変わり始めたとき、ジョージは友だちが期待する行動と自分が本当に望む行動のあいだでバランスを取ることができるのか

ロシア出身のグラフィクノベル作家スヴェトラーナ・シマコワ(Svetlana Chmakova)による、同じ中学校を舞台にした連作青春グラフィックノベル「Awkward」の3作目。このリストの常連シリーズです。





Illegal
by Eoin Colfer, Andrew Donkin, Giovanni Rigano (Illustrator)


姉さんは何か月も前にいなくなり、今兄さんも姿を消して、エボはひとりぼっち。ヨーロッパへの危険な冒険に出るしかないのはわかっている。
エボの長い旅は、彼をサハラ砂漠からトリポリの危険な街路、最後には無情な海へと導いていく。

「アルテミス・ファウル」シリーズのオーエン・コルファー、グラフィックノベル作家アンドリュー・ドンキン(Andrew Donkin)、イタリアのアーティスト・ジョヴァンニ・リガーノ(Giovanni Rigano)による、難民の少年を主人公にしたグラフィックノベルのようです。現在2019年カーネギー賞ノミネート作品。





My Brother’s Husband, Volume 2
by Gengoroh Tagame, Anne Ishii (Translator)
【弟の夫/田亀源五郎/双葉社】


弥一は現代東京で在宅勤務する郊外のパパ。離婚した妻はナツキ、娘は夏菜。彼らの生活は、大きくて人懐っこいマイク・フラナガンという名のカナダ人が玄関に現れたのと同時に突然変化した。マイクは疎遠なまま亡くなった弥一のゲイの双子の弟・涼二の夫だったというのだ。

田亀源五郎が2015年から2017年にかけて発表した全4巻のコミックの英訳版。の2巻目。1巻目も昨年のトップ10に選出されています。カバーが日本版の4巻目のものなので、巻数は「Vol.2」になってますが内容は日本版3,4巻の合本版かな?(ページ数も倍くらいあるし)






On A Sunbeam
by Tillie Walden


宇宙の深奥に向かう旅をする船の乗組員たちは、忘れ去られたはるか昔の美しい建造物たちを修理していく。いちばん新顔の乗組員はミア。かつて学んでいた寄宿学校で女の子に辛い恋をした。
船の新しい友人たちとの距離が近づいていく中、ミアは自分がこの船に乗った真の目的を明かす。失った恋人を追うためだと。

「スピン」のティリー・ウォルデンによる新作。ウェブコミックとして発表されていた作品の書籍化。

On A SunbeamOn A Sunbeam
3,180円
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Royal City, Vol. 2−3
by Jeff Lemire


故郷の衰退した工業都市ロイヤルシティに不本意ながら戻ってきたかつての文壇の寵児パトリック・パイク。2人の姉、高圧的な母と粗暴な父は今でも、何十年も前に溺死した末の弟トミーの亡霊にそれぞれに苦しめられている。一家全員が水から離れていようと苦心する中、町と家族を引き裂く暗い秘密はトミーの死だけではないということが明らかになる。

マーベルやDCで複数の作品のストーリーを手がけ、オリジナル作品「Plutona」なども好評なオーストラリアのコミック作家ジェフ・レミアによる、ある家族とさびれていく町の30年を描く3部作の2、3作目。




(選出されたのは2,3巻目ですが、1巻目を載せないのもなんなのでついでに載せておきますね。)



Silver Spoon Vol.1−4
by Hiromu Arakawa
【銀の匙/荒川弘/小学館】


ずっと成績優秀だった八剣勇吾だが、選んだ進学先は普通科ではなく農業高校。楽をして好成績を取るには農業高校は最適のはずだったが、それは間違い。数学の問題を解いたり詩を暗唱するかわりに、5時に起床して農作業をし、子豚の世話をし、馬に乗る練習をする日々が待っていた。

荒川弘の農業高校を舞台にした青春コミックの大ヒット作「銀の匙」の英訳版1~4巻目。アメリカには農業高校っていうものはあるんでしょうか?

Silver Spoon, Vol. 1Silver Spoon, Vol. 1
1,438円
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Silver Spoon, Vol. 2Silver Spoon, Vol. 2
1,246円
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Silver Spoon, Vol. 3Silver Spoon, Vol. 3
1,184円
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Silver Spoon, Vol. 4Silver Spoon, Vol. 4
1,384円
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Speak: The Graphic Novel
by Laurie Halse Anderson, Emily Carroll (Illustrations)


メリーウェザー高校の1年生メリンダに友だちはいない。理由は夏の終わりのパーティに警察を呼んでぶち壊しにしたから。美術の課題の中で、彼女はようやくあの夜自分に何があったのかに向かい合うことができるようになる。

ロウリー・ハルツ・アンダーソンの、全米図書賞最終候補、プリンツ賞オナー、エドガー賞YA部門最終候補になり映画化もされた1999年発表の代表作「スピーク」のグラフィックノベル化作品。
作画はホラーグラフィックノベルのヒット作「Through the Woods」のエミリー・キャロル(Emily Carroll)です。

SpeakSpeak
2,082円
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以上。

また、トップ10からは漏れましたが、全92作(←数え間違いでなければ、たぶん…)の今年のベスト作品リストにすでに日本で読める作品が数多く選ばれていますので、そちらも後日ご紹介します。