THE CILIP CARNEGIE MEDAL Nominations for 2019【CILIP】
http://www.carnegiegreenaway.org.uk/press.php?release=pres_2019_nominations_carnegie.html

イギリスでもっとも権威ある児童文学賞であるカーネギー賞の2019年のノミネート作品が発表されました。

これは、イギリスの図書館情報研究機関CILIP(Chartered Institute of Library and Information Professionals)により贈られる賞。
前々年9月1日~前年の8月31日までにイギリスで刊行された児童書が審査対象。
昨年からは翻訳作品も審査対象に加わっています。


受賞作品発表までのスケジュールは

①ノミネート作品発表(70~100作程度/前年10~11月)→②ロングリスト発表(20作程度/2月ごろ)→③ショートリスト発表(5~10作程度/3月ごろ)→④受賞作品決定(1作/6月)

の4段階。

今年のノミネートは130作超。過去最多かなこれは…

というわけで、何回かに分けてゆっくり更新したいと思います。これから2週間くらいこの記事が続くと思います。
今年は日本のベストセラー作品もノミネートされています。


今年のノミネート作品は以下の通りです。

The Poet X
by Elizabeth Acevedo


ハーレムに住む15歳のクシオマラ・バティスタは、自分の声など聞いてもらえないと思っているし、この地域で身を隠すこともできないと思っているから、体が女性らしく育ってからは拳に会話をさせている。でも言葉にしたいことはたくさんあって、フラストレーションも情熱もすべて革のノートに書きつけている。ひとりで祈りを唱えるように。
学校のスラムポエトリー部に勧誘されたとき、厳しい母親に見つからずに入部することも、大声で言葉を発することもどうすればいいのかわからなかったが、自分の詩をパフォーマンスしたいという思いが強くなっていくのは止められなかった。

ポエトリースラムのナショナルチャンピオンでもあるらしいアメリカの詩人エリザベス・アセヴェド(Elizabeth Acevedo)の小説家デビュー作品。去年の「ザ・ヘイト・ユー・ギヴ」ほどじゃないけど、今年はこの作品が勢いありますね。
2018年ボストングローブ・ホーンブック賞フィクション部門受賞作品。現在2018年カーカス賞児童書部門最終候補作品。現在2018年全米図書賞児童書部門最終候補作品。





Children of Blood and Bone (Legacy of Orïsha #1)
by Tomi Adeyemi


ゼイリー・アデボラはオリシャの大地が魔法とともに歌っていた頃を覚えている。「燃焼」の力を持つイナの民は炎を燃やし、「潮流」の力を持つオミの民は波を起こし、「享受」の力を持つイクの民は第四の精霊を召喚することができた。
しかし魔法は消え、無慈悲な王によってマギ(魔法使い)たちは殺された。
マギの母親を失い、自分の民とともに絶望の中に残されたゼイリーは、お転婆な王女アマリーの助けを借り、魔法を取り戻して王を倒すための戦いをはじめる。

ナイジェリア系アメリカ人の新人作家トミ・アデヤミ(Tomi Adeyemi)の話題のデビュー作。アフリカ風異世界が舞台のファンタジー。シリーズ1作目。FOX2000で映画化の予定があります。
2018年ドラゴン賞YA&ミドルグレード部門受賞作品。現在2018年カーカス賞児童書部門最終候補作品。





The Red Ribbon
by Lucy Adlington


14歳のエラは才能ある仕立屋。でもここには普通の仕事場はない。普通のお客さんもいない。彼女はアウシュヴィッツ=ビルケナウの強制収容所のひとつ「バーチウッド」のお針子なのだ。
彼女の作るドレスは生と死を分ける。代価は生存。この工房で出会った人生でいちばん深い関係の親友がローズ。戦争が終わったら一緒にドレス工房を作ろうという夢が2人を支えるが…

イングランドの小説家&服飾史研究家ルーシー・アドリントン(Lucy Adlington)による歴史YA。アウシュヴィッツの強制収容所の中に身分の高いナチの女性のためのドレスを作る女性囚人たちの工房が存在していた、という歴史的事実をもとにしたフィクションだそうです。


Kindle版今130円くらいで買えます。



Love, Hate & Other Filters
by Samira Ahmed


アメリカ生まれの17歳マヤ・アジズは2つの世界に引き裂かれている。正しい方の世界は、近くの大学へ行ってママが選んだムスリムの男子と結婚する理想のインドの女の子になること。もうひとつは彼女が夢見る世界。映画学校に行ってNYに住んで、小学校の時から好きだった男の子を追いかける。
でももうひとつ、マヤの力が及ばない現実の世界がある。何百マイルも向こうで起こった恐ろしい犯罪の後、生まれた時から知っていた町や隣人たち、クラスメートは恐怖と偏見、憎しみに囚われ、マヤの人生は引っくり返ってしまう。

インド生まれアメリカ在住の新人作家サミラ・アーメッド(Samira Ahmed)のデビュー作。





Tender
by Eve Ainsworth


マーティとデイジーは人生を装って生きている。マーティは母さんの精神が日々現実から離れて行きつつあるのを隠して、デイジーは不治の病の兄さんを看病する両親が疲弊しきっているのを隠して、2人ともなんでもないふりをして生きている。
でも嘘をつくのはいつかはやめなければならないこと。その時にはどうなる?

2012年にデビューしたイングランド在住のYA作家イヴ・エインズワース(Eve Ainsworth)の5作目の著作。メンタルヘルス、家族、友情、ティーンエイジケアラーが直面する重圧を描く物語だそうです。





Rebound (The Crossover 0.5)
by Kwame Alexander


1998年の夏、バスケが俺に翼をくれた夏。コートの中、そして外でも立ち直る(リバウンド)すべを学ばなければならなかった。

アメリカの詩人クワメ・アレクサンダー(Kwame Alexander)の作品。2015年のニューベリー賞受賞作品「The Crossover」の主人公兄弟ジョシュとジョーダンの父親で元バスケ選手・チャックの若き日を描く1988年が舞台の前日譚のようです。一部は詩、一部はコミックで描かれているユニークなスタイルとのこと。





The Colour of the Sun
by David Almond


1人の男の子が殺された。デイヴィは責められるべき人間が誰かを自分が知っているかもしれないと思っている。彼はゴシップからも興奮からも距離を置き、タインサイドの町を見下ろす丘を歩き回って殺人者を探すが、日が過ぎるに従い、状況はさらに劇的で奇妙なものになっていく。

「肩甲骨は翼のなごり」のデイヴィッド・アーモンドの新作。

The Colour of the SunThe Colour of the Sun
1,442円
Amazon





The House with Chicken Legs
by Sophie Anderson


12歳のマリンカがほしいものは友だち。本物の友だち。彼女が住んでる鳥足がついた家なんかじゃなくて。たしかにその家とは鬼ごっこしたり隠れんぼしたりして遊べるけれど、マリンカはしゃべったり秘密を共有したりできる人間の友だちがほしいのだ。
だけど、死者をあの世へ導く魔女(ヤーガ)を祖母に持っていると、それは難しい。しかもマリンカはヤーガになる修行をしていて、それはつまり学校もなし、パーティもなし、遊び友だちもなしということ。

湖水地方在住のイングランドの新人ソフィー・アンダーソン(Sophie Anderson)のデビュー作。





The Last (Endling #1)
by Katherine Applegate


犬に似た伝説の生物「デアン」は大いなる力を持つと信じられているせいで戦禍に苦しむネダッラ王国では狩られて絶滅寸前になっている。ビクスはそのデアンの群れのひとつに属する最年少の女の子。
彼女の群れが狩られて殺されてしまい、自分が種族の最後の1匹(エンドリング)なのではないかと脅えるビクスは、隠れ住む場所を求めて、そしてデアンたちの隠れ里があるという伝説が本当かどうかを確かめるための旅に出発する。

「世界一幸せなゴリラ、イバン」のキャサリン・アップルゲイトのファンタジー。シリーズ1作目。





A Jigsaw of Fire and Stars
by Yaba Badoe


サンテが宝物でいっぱいの箱に入って浜に打ち上げられたのは赤ん坊の時。移民と難民を乗せて事故に遭った沈没船のたったひとりの生き残りが彼女と思われた。
14歳になったサンテは、「ママ・ローズの唯一のまばゆいサーカス」の一員。でも水の底から、安らぐことのない死者たちがサンテを呼ぶ。自分たちの復讐をしてほしいと。

ガーナ系イギリス人の映画監督でジャーナリスト・ヤバ・ベイドゥ(Yaba Badoe)の作家デビュー作品。2018年ブランフォード・ボウズ賞ショートリスト作品。


Kindle版今100円くらいで買えます。



ノミネート作品はあと120作超ありますが、残りは明日以降。