魔性の馬/ジョセフィン・テイ/小学館

イギリスの農園を舞台にした、サスペンスフルで上品な佳作ミステリ。

孤児の青年ブラットは、行方不明の長男パトリックのふりをして、広大な農場を持つアシュビー家に潜り込む。相続によって莫大な遺産を奪う計画だ。
だがパトリックの双子の弟・サイモンは、ブラットに冷たい不信の目と敵意を向けてきた。
そしてアシュビー家の優しい人々の中で過ごすうち、しだいに罪の意識にとらわれていくブラット。
計画はうまくいくのか?そしてパトリック失踪の真相とは?

ブラットとサイモン――詐欺師とそのターゲットでもあり、同時に探偵と容疑者でもある2人の男――の息詰る心理戦も良いのだけど、ブラットが少しずつラチェッツに受け入れられていくあたりの細やかな人間ドラマが暖かくて大変良いです。
ブラットは詐欺師だけど、基本的にとてもピュアな良い子なんですよね。

知的で優しいビイ、かわいいジェーンとルースから、あまり本筋にかかわってこないナンシーとジョージまで、登場人物みんな味わいがあって、愛しい作品。
ブラットのもどかしいほどひかえめな恋もなかなか良いのだ。
 


魔性の馬 (クラシック・クライム・コレクション)/ジョセフィン テイ

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