皆川博子「辺境図書館」を読む・・・! | マンボウのブログ

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フラヌールの視界から、さまざまな事象に遊ぶ

ブロガーさんの紹介記事に惹かれて、こんな本を図書館から借りてきた。チョキ

 

 

辺境図書館

 

 

メモ初出:「インポケット」2014年10月号~2016年10月号。「水族図書館」は書き下ろしです。

 

 

<内容>

知れば知るほど
読めば読むほど
好きになる。

《この辺境図書館には、皆川博子館長が蒐集してきた名作・稀覯本が収められている。知らない、読んだことがない、見つからない――。
そんなことはどうでもよろしい。読みたければ、世界をくまなく歩き、発見されたし。運良く手に入れられたら、未知の歓びを得られるだろう。(辺境図書館・司書)》

小説の女王・皆川博子が耽溺した、完全保存版ブックガイド。(書き下ろし短編も収蔵)

 

 

<著者>

指輪皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。最新刊に『クロコダイル路地』。

 

   新宿本店】『海賊女王 上・下』(光文社)刊行記念 皆川博子さんサイン会(2013年9月7日) | 本の「今」がわかる 紀伊國屋書店

 

 

 

目次のラインアップを見て、紹介されている25作品のどれもが読んだことないのに愕然とした!ガーン

著者名でさえ、ドノソ、ピランデルロ、ヤーン、ジュースキント、ド・ミュッセくらいしか知らない。

 

 

   メモ・・・全編ムディートの独白からなるのですが、妄想と現実が混沌となった饒舌体で、読む者を、言葉の濁流の中に快く溺れさせます。

 <年老いた女たちの力は絶対だ。世間の連中が言っているように、彼女たちは静かな余生を送るためにこの修道院に来たのでは決してない。>

 召使いたちは、屈辱の日々を過ごしながら、復讐の力を蓄える・・・・と、ムディートは語ります。

 <ざらざらした皺だらけのその手のなかに、主人たちの別の半身を、投げ捨てられた無用の半身を、汚く醜いもののすべてを溜めこんでいる>老婆たちを、主人ドン・ヘロニモは恐れ疎み、エンカルナシオン修道院には一度も足を向けません。・・・(p.9-10)

 

キラキラ001 『夜のみだらな鳥』とホセ・ドノソ、と題する上記の叙述からして、およそ日本の現代作家による作品とは趣を全く異にする。年老いた女たち、老婆たち、と二通りの表現(翻訳)を使用しているけど、意味合いは同じだろう。世間の連中の思惑とは異なる世界に生きている女性の高齢者たちの生き様が如実に喝破・暴露されている(!!!)。グラサン

 

 

   魔術的リアリズム」だけではなく「マニエリスム」として。ホセ・ドノソ『夜のみだらな鳥』 | 万巻の書を読み 万里の路を行く

 

        José Donoso(1981)

 

 

メモ『夜のみだらな鳥』は『百年の孤独』に比肩するラテンアメリカ小説の傑作、魔術的リアリズ

ムの傑作として評価されている。奇書であり怪書である。

 

 

私は、「いま、ここ」(つまり、時空)を超える小説・物語を好むので、いわゆる私小説的な日本現代作家による小説はほとんど読んでこなかった。唯一、辻邦生本「背教者ユリアヌス」は、青春時代に読破して感銘を受けたもので、遠く異境の時代も遡ったロマンス?が世界の拡がりを感得させてくれたのだった!びっくり

 

 

 

   メモ・・・各国人の気質をあらわすジョークは、いろいろありますが、「この世に存在しないものは」というのも、その一つです。

 アメリカ人の哲学者。

 ドイツ人のユーモリスト。

 フランス人とイタリア人は忘れましたが、イギリス人に関しては、

 「変人でないイギリス人」

 となっています。

 イギリス人とのつきあいがないので、事実かどうか知らないのですが、たまたま週刊誌で藤原正彦氏のエッセイを読んだら、イギリス人の変人ぶりに言及しておられました。ご友人であるイギリス人の行動がやっぱり変であったらしい。

 シェークスピアが『ハムレット』のなかで、墓堀人に「イギリスに行ったら頭がおかしくたって目立たねえ。みんなおかしいからな」と言わせているのですから、十六世紀このかた、まず間違いなく変人揃いなのでしょう。・・・(p.16-7)

 

キラキラ002 『穴掘り公爵』とミック・ジャクソン、ではこう始まる。

 

イギリス人といえば、ジェントルマンというイメージが一般的な位置づけだけど、全く異なるのに驚く。

では、日本人はどうなのか?がちょっと気になるなあ。うーん

 

   メモ・・・イギリスの料理は不味い、というのも定評のあるところで、ポール・クローデルが日記に<イギリス料理を前にしてはただ一言しかない。「仕方ないでしょう」>とか<イギリス料理に調味料は使わない。麻酔剤が使われるのだ。>などと記し・・・・・フランス人がイリギスを褒めることは滅諦にないですが・・・・、私もロンドンでろくな食べ物にありつけなかったおぼえがあります。・・・(p.21)

 

これは、何となく頷けるけど(^^)ウシシ

 

 

   メモ・・・国籍をポーランドと書きましたが、ブルーノ・シュルツが生まれた1892年、ポーランドという国家は消滅して久しくなっていました。ロシア、プロイセン、オーストリア=ハンガリー帝国に分割され、シュルツの生地ドロホビチという小さい街は、オーストリア=ハンガリー帝国領のガリツィア地方に属していました。現在は、ウクライナ領となっています。ヨーロッパの国境は、歴史の長い時の間で、しばしば移動します。シュルツが高校を卒業した四年後-----1914年-----第一次世界大戦が始まり、シュルツの生家も店も灰燼となります。ドイツの敗北によって大戦が終わり、ポーランドは独立した国家として再建され、ドロホビチはポーランド共和国に帰属しました。

 わずか二十一年後、1939年、第二次世界大戦。ポーランドに侵攻したドイツ軍に、ドロホビチはいったん占領され、すぐに、同時に侵攻したソ連に引き渡されます。ドイツとソ連は不可侵条約を結び、ポーランド領ウクライナはソ連領とする密約を結んでいたのでした。・・・(p.30-1)

 

 

キラキラ003 『肉桂色の店』ブルーノ・シュルツ、の項は、こんな歴史的な叙述が目を惹く。ヨーロッパはかくも時期時期によって、属領となったり、帰属する国が異なるという歴史を負っているいるのだった!えーん

 

これは、日本に生きている現代人たちには理解を超えるだろうて。。。昨今のウクライナ情勢に関してもこんな歴史を周知している人は少ないだろう。強国ドイツとロシア(ソ連)に挟まれた地理的な関係からポーランドという国がさまざまな忍従・忍耐を強いられたという歴史を今一度思い起こす必要があるかもしれない!OK

 

 

 

 

       (次回に続く)