こんな本を図書館から借りてきた。
沼野雄司「音楽学への招待」(春秋社 2022)
音楽についての学問といっても、その裾野は実に広い。本書では大作曲家の「駄作」からプロレスラーのテーマ音楽、さらには「モーツァルト効果」まで、さまざまな対象を歴史・社会学・心理学など多彩な切り口で考察する。かくも自由で融通無碍な学問のススメ。
<目次>
はじめに
第1章 駄作の考古学――ワーグナー「アメリカ独立百周年行進曲」をめぐって【音楽史学】
第2章 モーツァルト効果狂騒曲 Mozart makes you smarter? 【音楽心理学】
第3章 音楽のエクフラシス――ドビュッシーと「サンギネールの島々の美しい海」【音楽解釈学】
第4章 不確定性音楽をめぐるコミュニケーション――図形楽譜はどうして演奏可能なのか?【音楽社会学】
第5章 儀礼・軍楽・芸能――プロレスの入場テーマとは何か【音楽民族学】
第6章 言語による音楽創造――音楽作品のタイトルとは?【音楽美学】
第7章 あなたは現在、あるいはかつて共産党員でしたか?――アイスラーと非米活動委員会【音楽政治学】
あとがき
文献
沼野雄司(1965- )
目次を見ての通り、いろんな分野を視野に置いた音楽学の諸相が語られている。
プロレスラーの入場曲までが音楽学の範疇に入るのだ。
ドビュッシーの「海」についての解釈・解説(第3章「音楽のエクフラシス」)が最も難解な気がするなあ。
いろいろ引用し出せばキリがないので、最後の章だけ紹介しておこう。
私が最も興味を惹いて読んだのは、第7章で音楽政治学というハンス・アイスラーの項である。
アメリカにおける「赤狩り」から逃れてドイツに帰り着いた時には、東ドイツという国が成立していたのだった。そして東ドイツ国歌を作曲したのがアイスラーだったのだ(40年間だけ国歌だった)!
下に、その楽譜と歌詞を挙げておく。