続:ウェイリー訳「源氏物語」からの現代語訳は・・・! | マンボウのブログ

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それでは、ウェイリー訳「源氏物語」からの21世紀に入っての現代語訳を見てみよう!チョキ

 

 

先ずは、指輪「桐壺」の冒頭から。

 


原文は・・・右差し

 

   いづれのおほん時にか、女御更衣あまた侍ひ給ひけるなかに、いとやむごとなききはにはあらぬが、すぐれて時めき給ふ、ありけり。 (玉上琢彌訳注「源氏物語」 角川ソフィア文庫 p.25)

 

 

  At the Court of an Emperor (he lived it matters not when) there was among the many gentlewomen of the Wardrobe and Chamber one, who though she was not of very high rank was favored far beyond all the rest; ・・・(ウェイリー訳: p.4)

 

 

二つの現代語訳は・・・

 

 

  ある天皇の宮廷に(彼がいつの時代に生きていたのかはどうでもよい)、衣装の間や寝室につかえる女性たち [ 更衣・女御 ] が大勢いたなかに、とても身分が高いわけではなかったが、ほかの者たちよりもはるかに寵愛を受けている人がいた。・・・(佐復秀樹訳: p.15)

 

 

 

  いつの時代のことでしたか、あるエンペラーの宮廷での物語でございます。

 

  ワードロープのレディ、ベッドチェンバーのレディなど、後宮にはそれはそれは数多くの女性が仕えておりました。そのなかに一人、エンペラーのご寵愛を一身に集める女性がいました。・・・(毬矢姉妹訳: p.9)

 

 

 

それでは、指輪「若紫」の場面はどうか・・・口笛

 

 

原文は・・・右差し

 

  (源氏)「見ても又逢ふ夜まれなる夢の中にやがて紛るヽ我身ともがな」

と、むせかへり給ふ様も、さすがにいみじければ、

  (藤壺)「世語りに人や伝へむ類なくうき身を醒めぬ夢になしても」

おぼし乱れたる様も、いと道理にかたじけなし。

 

 

  I need not tell all that happend. The night passed only too quickly. He whispered in her ear the poem: "Now that at last we have met, would that we might vanish forever into the dream we dreamed tonight!" But she, still conscience-stricken: "Though I were to hide in the darkness of eternal sleep, yet would my shame run through the world from tongue to tongue." And indeed, as Genjiknew, it was not without good cause that she had suddenly fallen into this fit of apprehension and remorse. ・・・(ウェイリー訳: p.94)

 

 

二つの現代語訳は・・・

 

 

  「今やついに私たちh会えたのだから、今日見た夢のなかに永遠に消えてしまえればいいのに!」。しかし藤壷はいまだに良心が咎めて、「永遠の眠りの暗闇に隠れたとしても、私の恥は舌から舌へと世間を駆け巡りましょう」。そして実際、源氏にはわかっていたように、藤壷が突然この懸念と自責の念に襲われたのにはもっともな理由がなくはなかったのだ。・・・(佐復秀樹訳: p.211)

 

 

 

 「ようやくまた逢瀬が叶ったのです。今宵、共に見たこの夢のなかへ、永遠に消えてゆきたい!」

 

      見ても また逢ふ夜まれなる夢のうちに、やがてまぎるるわが身ともがな

 

 しかしフジツボの方は、良心の呵責に苦しんでいました。

「永遠の眠りの闇に隠れても、ああ、わたしの恥は、口から口へ世に知れ渡ることでしょう」

 

      世語りに人や 伝へむ。たぐひなく憂き身を覚めぬ夢になしても

 

 フジツボが不安と後悔に激しく襲われるのも無理はない、ゲンジもそう思います。。。。(毬矢姉妹訳: p.231-2)

 

 

 

これらの現代語訳は、同じウェイリー訳から翻訳されたとしては、ずいぶん印象が異なるなあ!びっくり

訳者が男性であるか、女性であるか、そのあたりにも一端はありそうだけど。

 

 

特に、毬矢姉妹訳では、登場人物が、ゲンジ、フジツボ、アオイ、オウミョウブなどカタカナ表記になっているのだ。エンペラ-やプリンセスもそうだし、ショウナゴンやアゼチノダイナゴンも。これは慣れないと戸惑うかも(まるで、西欧文学からの翻訳のようだ)。特に人名や地位の漢字は意味合いを持つので、それが伝わらない憾みがあるわ!うーん

 

 

   源氏物語、新たな現代語訳次々 角田光代氏ら解釈多彩 - 日本経済新聞 さん

 

      毬矢まりえ&森山恵(姉妹)

 

 

 

なお、若紫を拉致しようとした光源氏は、こうのたまうのだった。

 

 

   メモ・・・私もまた、この可哀そうな子と同じで、ごく幼い時分に、やさしく愛してくれたただひとりの人を奪われ、子供時代は長い年月にわたって孤独とみじめさに苦しみました。・・・(佐復秀樹訳: p.198)

 

 

これを言い訳ととるか、心からの迸りととるか如何に?グラサン

 

 

 

 

   <「源氏物語」を愉しむ!>・・・16