このような書物を渉猟してみて(どちらも古書で入手)・・・
ロベルト・ザッペリ「知られざるゲーテ --- ローマでの謎の生活」(法政大学出版局 2001)
文豪にしてワイマール公国枢密顧問官の謎に包まれた旅の目的を探り,その少年のような好奇心,作品に描かれた女性たちをめぐる詩と真実に推理小説的手法で迫る!
もう一冊は・・・
ヨッヘン・クラウス「シャルロッテ・フォン・シュタイン --- ゲーテと親しかった女性」(鳥影社 2006)
シュタイン家の人々は生きた人間であった。彼らは誠実で多忙な人生を贈った−。ゲーテの付属物としてのシュタイン夫人ではなく、生身の彼女を描くことで、当時のヴァイマルの町や、またそこで生きた人間たちにも光をあてる。【「TRC MARC」の商品解説】
ゲーテとフォン・シュタイン夫人との関係については、多くの書物で語られてきて、もはや手垢がついた感もある・・・ヴァイマルでのほぼ十年間は若きゲーテにとって7歳年長のシュタイン夫人との時期であった。
しかし、上記の二冊は、ゲーテの旅先ローマでの生活であり(親密なシュタイン夫人と逢わない)、長命だったシュタイン夫人の方は、ほぼ30歳代におけるゲーテとの関係が幾ばくか語られているに過ぎないのだ。
つまり、セットにして語られることの多い二人(ゲーテとシュタイン夫人)を敢えて引き離してみたら・・・という視点が新鮮かも知れぬ。
それぞれの目次を紹介しておこうか・・・
「ゲーテ」
第一章 逃走
第二章 微行
第三章 発禁詩人
第四章 遊びと楽しみ
第五章 酒場の娘
第六章 美しきミラノ娘
第七章 ファウスティーネの謎
第八章 別離
「シュタイン夫人」では・・・
一 伝説
二 素性
三 容貌
四 性格
五 家族
六 ゲーテに信頼された女性
七 住まい
八 仕事場
九 余暇
一0 友人たち
一一 死後の名声
という具合だから、二人の接点は、「シュタイン夫人」第六章のみとなる。
「知られざるゲーテ」では、ヴァイマルにおける窮屈な宮廷・官吏生活から解放され(それはシュタイン夫人の軛からの解放であったかも?・・・手紙のやり取りはあったにせよだ!)、匿名の旅先とはいえ、後の文豪へと至るリフレッシュ時期と捉える。当時の郵便事情については良く分からないけど、今でも使われる〇〇気付という宛名で手紙のやり取りを行っていたゲーテの用意周到さは目を惹く(諸侯・有名人の旅は、このようなお忍びが通例であったようだ)!
ティッシュバイン「カンパーニアのゲーテ」(1787)
「シャルロッテ・フォン・シュタイン」では、あくまでシュタイン夫人の生涯にスポットを当て、ゲーテとの繋がりは一つの章(50ページほど)に当てられているに過ぎない。
シャルロッテ・フォン・シュタイン(1742-1827)
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(1749-1832)
こうして二人を並べてみると、どちらも80歳を超える長命だったのだ!
じいさん・ばあさんのゲーテとシャルロッテ(^^)