「スナフキンの手紙」の<まえがき>で、こう鴻上尚史は語っていた。
・・・本当の「語られない言葉」は、戦いの後に生まれると思っているのです。
そして、その「語られない言葉」が、人生そのものになった時、物語は、『ファントム・ペイン』へと続くのです。・・・(p.7)

「スナフキンの手紙」の続編が、この
「ファントム・ペイン」である。
#0の最後で、こういうト書きが・・・
・・・1994年上演の『スナフキンの手紙』のラストが、スクリーンに映される。
追い詰められ、サイコチェーンの結果、時空連続体の壁を突破し、平行世界(パラレルワールド)に出現する7人の登場人物達。それが”平成”と呼ばれる世界だと知る。
初代キャンディーとジャーマネが飛び出し、他の人達も後を追う。それぞれの登場人物は、地下室を出て、”平成”の世界に戸惑う。そして、登場人物全員が、この”平成”の世界で生きていくと決した瞬間。・・・(p.11)
ここから、「ファントム・ペイン」は始まる。
2574日、すなわち7年が経過。
「変革の60年代」「内戦の70年代」「流血の80年代」「希望の90年代」そして、「孤立の2000年代」・・・
山室 教えてくれ。
深町 (集中して)・・・・・僕はその人と違う。
山室 違うのか!本当に違うのか!?
深町 違いますね。でも、『やんす・ちゃんねる』の管理人です。(太郎に)それが引きこもりと関係があるんですか?
太郎 ・・・インターネットで何かを始めた時は、比較的、弟は陽気だったんです。でも、すぐでした。弟は、私にこう言いました。「人間の悪意を形にして見たければ、インターネット上でサイトを持てばいいんだ。いくらでも、悪意のメールや悪意の書き込みを受け取ることができる。インターネットは、人間に、人間の悪意とは何かを教えてくれるシステムなんだ」
ジャーマネ (思わず)そうだよ・・・・・・。あ、いや、私達もホームページ、持っているんで、よく分かるんだ。
生田 嫌な気持ちになるメールとか結構来るもんね。
太郎 だから、私は弟にインターネットと深くつきあうのをやめるように言ったんです。ますます、人間を嫌いになって引きこもりが続くだろうと思って。でも弟は、やめませんでした。弟はこう言ったんです。「僕は人間が怖い。だから、人間の悪意をとことん見てみたい」
サキ それは、終わりのない話ね。
(p.132-33)
<上演記録>
第三舞台20周年記念&10年開封印公演![]()
「ファントム・ペイン」
作・演出:鴻上尚史
キャスト
山室実 大高洋夫
氷川サキ 長野里美
浦安太郎 小須田康人
テンコ 山下裕子
ジャーマネ・村松 京晋佑
キャンディー・生田良子 筒井真理子
後藤田政志 池田成志
深町慎史 山本耕史
水本絵美 旗島伸子
寺田健一 高橋拓自
部下・女1 宮下今日子
部下・男1 横塚進之介
THANKS 西牟田恵(初代キャンディー・明石京子)
林美雄(「スナフキンの手紙」ダイジェスト・ナレーション)
東京公演:2001年9月14日(金)~10月1日(月)ル テアトル銀座
大阪公演:2001年10月5日(金)~9日(火)近鉄劇場
福岡講演:2001年10月13日(土)~14日(日)メルパルクホールFUKUOKA
(註:「スナフキンの手紙」を読んでない人は、読み終えてから、この記事をご覧ください。あっ、もしこの記事を読み始めてしまっても、ご安心を・・・ネタばれしてませんので。
ここには、あと一年余りとなった”平成”の世の少なくとも前半期の状況が反映されていると思います。そして、その混迷は加速度的に増殖し、あらたな課題さえ噴出しているようです。「混迷の2010年代」とでも言えるでしょうか・・・
日本の将来はどんな方向に進んでゆくのか誰にも分からない・・・そんな不安な気分を持ち続けながら、未来に希望を託すしかないかもしれません)