魔法78:ティュールからのレポート_11 | 小説

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現代的な魔法世界の話…。SFもどきです。

1)

さて、能力的に、術者たる彼も含めて、
3人が限界だったレオンは、
先に麗奈をという二人を説得し、
ヒルダとバルトロメオ帝を、
エオリア公の下へ送り届けた後、
麗奈を送り届けるために戻ってきて、
今、彼女に、回復魔法をかけている。

 「 あ…、ありがとう。」

壁際で座り込んでいた麗奈は、
レオンに回復魔法をかけてもらいながら、
たどたどしく、お礼を言った。

 「 もう、歩けるか?」

すっと手を差し出した彼の手をとり、
軽く握り合う。

 「 よっ!」

レオンが、握っている手を強く掴んだ瞬間、
麗奈は、心臓が跳ね上がるような思いがし、
息もなぜか、詰まってくる。
おかげで、立ち上がりはできたが、
すぐに足元がふらついて、覚束なくなってしまう。
再び、倒れこみそうになったのを、
支えてくれたのも彼だった。

 「 あ…。」

麗奈は、お礼を再び言おうとして、
ふいに、咽喉の渇きを覚え、
何も言えなくなってしまった。

 「 あ…?」

レオンは、不思議そうに、
言葉を詰まらせた麗奈に問い返すと、
じゃあ、行くぜ?と、瞬間移動しようとした直前、

 「 ま…。待って!」

今、奥で戦っている母親のことを思い出し、
麗奈は、レオンを呼び止める。

 「 どうしたんだ?忘れ物か?」

 「 違うの!違う…。」

ぶんぶん、かぶりを振って、麗奈は否定した。

 「 私も行く。私も戦う。」

 「 死ぬかもしれないぜ?」

あの妖犬のマスターが、この奥にいるはずだ、
恐らく、半端な強さじゃあるまい。

 「 かまわない…。見捨てていけない。」

どうやら、彼女の意志は固いようだ。
レオンは、嘆息し、利き手に持っていた
ガイアライセンを、麗奈に押し付けた。

 「 まぁ、いっか。これ、持っとけよ。」

 「 あのぉ、こんな大剣、私、持てない…。」

やんわりと断るが、彼は、まだ押し付けてくる。

 「 ん?大丈夫だよ?ほら。」

軽く笑って差し出すものだから、
恐る恐る、大剣を手に取って、麗奈は驚いた。
見かけに似合わず、恐ろしく軽いのだ。

 「 軽いだろ?」

 「 えぇ…、何で?」

不思議そうに、問いかける麗奈に、
レオンは、わかんねとだけ言って、
リュイスと、サラが戦っている戦場へと、先に駆けていった。
麗奈も迷わないように、ガイアライセンを携え、
彼の後を、離れずに追っていった。

2)

 「 フラウ!」

サラが呼ばうと、手元には、
光り輝くレイピアが握られていた。
それも、唐突に、手元に現れたようだ。

 「 呼んだ?サラ?」

 「 奴を倒すわよ?」

 「 おけぇ♪」

サラは、フラウに、ヴェールの魔力を伝わらせ、
リュイスに、反撃を開始した。

 「 ばかめ!やれるものなら、やってみるがいい!」

リュイスに、闇の魔力が結集していき、臨界にまで達すると、

 「 セレスト・ペルテネ!」

サラの周囲を、九人の泣き女(バンシー)が取り囲んだ。

 「 くっ!振り切るわよ!」

しかし、いくら体勢を変えても、
フェイントをかけようとしても、
彼女らは、どこまでも追いかけてきた。
振り切ったと思っても、いつのまにか、
取り囲まれているのだから、始末に悪い。

 「 だめ!振り切れない!」

フラウは、彼女らのしつこさに悲鳴をあげた。
サラが、フラウに注意を向けた、その一瞬、

 「「「 ぅわああああああああああああ…ん!!!!」」」

サラを取り囲んだ、九人の泣き女(バンシー)から、発せられた、
指向性のある高周波の泣き声のような輪唱が、辺りに響き渡る。

 「 何?この音?」

ついで、輪唱に呼び寄せられたかのように、
サラの足元に、影のような漆黒の陥穽が、広がってゆき、
彼女を呑み込もうと、徐々に口を開けていっていた。

 「 やば!冥界につながってる!」

サラは、フラウの光の魔素の力で、
リュイスの闇の力で作られた陥穽を相殺させたが、
九人の泣き女(バンシー)は、いまだ、健在であった。

 「 消えてないし…。」

当面の敵のタフさに、呆れたように、つぶやくサラに、
何かに気づいたフラウが、警告を放つ。

 「 来るよ!第二波!」

 「「「 ぅわああああああああああああ…ん!!!!」」」

 「 ちょ!さっきよりもこれ、強い!」

陥穽の広がる速度が、さっきよりも速かった。
ゆえに相殺する間も無く、サラは漆黒の闇に落ちていった。


3)

 「 きゃあああああああ!」

漆黒の闇の中で、サラは悲鳴をあげながら、
冥界へと誘われていくかと思われた。

 「 しっかり!大丈夫?」

どこかで聞いた声とともに、
悲鳴をあげるより早く、しっかりと手首がつかまれた。
見上げると、必死に彼女の手首を握っている麗奈だった。
その、麗奈を、レオンが、地上で支えている。

 「 な…!何やってるのよ!逃げなさいって、言ったでしょ!」

 「 み…帝と、ヒルダさんは、父さんのところへ逃げたわ!」

麗奈から、予想と違う答えが返ってくる。
絶句するサラをよそに、麗奈は、レオンに合図した。

 「 捕まえたわよ!レオン!引き上げて!」

 「 わかった!」

応答の声とともに、サラと麗奈の身体が、
陥穽から、引きづりだされた。
しかし、それよりも早く、穴が狭まっていく。
術の効果が切れ掛かっているようだ。

 「 早く!」

そして、穴が無くなる、ぎりぎりのところで、
サラと麗奈は、穴から脱出できたのだった。

 「 あれ?あいつらは?」

ようやくのことで、穴の外に出ると、
リュイスもバンシーもいなくなっていた。

 「 俺たちがきたときは、穴だけで、誰もいなかったですよ?」

 「 逃げたのかしら?」

サラは、無人の場所を見渡した。
麗奈と、レオンも見渡すが、誰もいない。

 「 そうみたいっすね?」

三人は、一時、休憩をとることにしたのだが…。
突如、いずこともなく、レオンたちに攻撃が走った。

【 つづく 】

*次回更新は、11月3日。19:00~21:00の予定です。