「中村仲蔵 ~歌舞伎王国下剋上異聞~」、

東京公演は2/6~2/25@東京建物Brillia HALL。

その後広島、愛知、宮城、福岡、大阪を周りました。

私は東京公演のみ2回観劇と配信を見ました。

 

お名前が変わったりしていきますが

とりあえずメインどころ。

中村中蔵→仲蔵:藤原竜也さん

二代目松本幸四郎→四代目市川團十郎:高嶋政宏さん

市川八百蔵、酒井新左エ門:市原隼人さん

中村伝蔵→二代目市川八百蔵:浅香航大さん

中村伝九郎:廣田高志さん

志賀山お俊:尾上紫さん

金井三笑:今井朋彦さん

コン太夫:池田成志さん

 

シモテに花道があるステージ。

真ん中に大きく正方形の板の間が取られています。

基本的にはそこでお芝居する感じなので

あまり見切れはなかったのではないかと思います。

ステージ奥には3段のセット。

役者の楽屋になっている感じ?

ワンブロックごとにすだれを下ろして

シルエットだけ見せたり、

見えないところから飛び出てきて

動きを際立たせたりすることができます。

 

暗がりの中で1人踊るは志賀山お俊。

孤児だった仲蔵を引き取って、

踊りのイロハを叩き込みました。

花道から仲蔵が登場。

「おっかさん」と独り言ちると、

「稽古場でおっかさんなどと呼ぶんじゃない!」と

折檻された思い出が蘇ります。

仲蔵が気を失うまで踊らせた

苛烈な「おっかさん」、

俺は心底ではおっかさんを恨んでいるのか?

でも自分がここまで来れたのは

おっかさんが踊りを叩きこんでくれたおかげ、

恨んでいるわけがない。

肩にかけていた緑の布をステージ上に残して

お俊は消えていきます。

入れ替わりに現れたのは師匠の中村伝九郎。

歌舞伎界に縁のない仲蔵に

適当に「中村中蔵」と名付けました。

出世をして色んな名題を提示されたけれども、

にんべんがついて「中村仲蔵」になったものの、

師匠がつけてくれた名前を名乗り続けているよ、と。

緑の布を広げると色鮮やかな羽織りになりました。

それを着てこれから踊る「狂乱雲井袖」は

後の世まで語り継がれるだろう、と

コン太夫に予言されました。

仲「いざ役者人生の終わりに

ひと狂いして見せようぞ」

というところから始まりました。

和太鼓のリズムとカンテの響きで

ドラマティックに場面転換。

 

グッと時代は遡ります。

中蔵(まだにんべんは無い)は

稲荷町という最下級の役者です。

四代目團十郎もまだ二代目松本幸四郎。

中蔵の踊りの評判を聞いていて

二代目肝いりの勉強会に参加させるように

伝九郎に提案しますが、

伝九郎は幸四郎に中蔵の生い立ちを教えます。

あいつは孤児で志賀山お俊に貰われたが運の尽き、

母親の厳しい踊りの修行から逃げたくて

自分に弟子入りしたい、と泣きついてきたのだ、と。

が、幸四郎は生い立ちを気にしませんでした。

楽屋を駆け回って御用聞きをする中蔵18歳、

先輩達には可愛がられている様子。

同門の後輩中村伝蔵、

同い年の中蔵のことを「中あにさん」と呼びます。

2人しか弟子がいないけど。

「あにさん」と呼ぶ方が

2人の格差があるように聞こえて

いやなのだそう。

当時、歌舞伎の最高峰である「市川團十郎」、

三代目が夭折し、空座になっていました。

四代目を継ぐのは幸四郎かはたまた市川八百蔵か、

皆が注目している事柄でした。

荒事(ヒーローもの)が得意で人気があるのは八百蔵、

安定して何でもできるのが幸四郎。

中蔵は幸四郎推しで

「幸四郎親方のような役者になりてぇ」と

話していたのを本人に聞かれ、気に入られます。

伝九郎は中蔵と伝蔵を連れて八百蔵の楽屋に。

理由をつけて中蔵だけ残して先に帰ります。

八百蔵は四代目市川團十郎になるために

器用な自分を捨てて「荒事」に絞りました。

三代目團十郎にはなかったたくましい筋肉を

中蔵に見せつけます←脱ぐ

八百蔵はうぶな中蔵に

女遊びを教えてやる、と言います。

「本当ですかアップ

中蔵、女性の体つきや所作など、

女形をやるために興味がある様子。

けれども歌舞伎の世界は男社会なので、

男同士の情も大事だ、という八百蔵。

「初めて見たときから

俺はお前の念者になると決めてたんだぜ」

中蔵をバックハグして股間に手を・・・。

中「こんなことが師匠に知られたら!」

と拒もうとしますが、伝九郎も承知の上でした。

逃げきれず。

あちこち押さえて

よろめきながら戻った中蔵。

前もって伝えておいてくれれば、

と伝九郎に恨み言を言います。

血筋も何もない中蔵は

伝九郎が頑張って引き上げようとしても

せいぜい相中が関の山。

中村勘三郎ならともかく

その弟である自分には力がないし、

次の團十郎に一番近いのは八百蔵だと思っている、

出世したいなら八百蔵を頼れ、と。

伝九「どうにもならないことに抗うな!」

と言い捨てて捌けます。

中「俺は頭がおかしいのかなぁ・・・。

どうにもならないことなんてねぇ、と思ってる。

血筋なんて関係ねぇ、誰の助けもいらねぇ。

自分の足だけでどこまでも歩いて行けるって」

物心ついたころから中蔵には

まっすぐな花道のような道が見えました。

そして「それがお前の歩く道だ」、

「道の先で待ってる」と誰かの声が聞こえました。

その道を踏みしめて歩く途中、

八百蔵の急逝を知らされます。

 

次のシーンでは中蔵は役者をやめていました。

中村座を出て八百蔵の元へ行った中蔵を

伝九郎は面倒を見きれない、と戻ることを許さず。

病気の母お俊との生活のために

踊りの師匠になっていた中蔵。

母は本人以上に口惜しく

歌舞伎の世界に戻って欲しいと思っていました。

でもそれでは生活がままならず、

母の恩に報いることがない、と中蔵。

お俊「なら報いとくれ!

何年かかってもいい。

中村座の表のいっとう高いところに

あんたの名題看板揚げとくれ!」

中蔵を鼓舞して亡くなります。

 

1人になったことで中蔵はまた

歌舞伎役者に戻ります。

とうとう四代目團十郎を襲名した幸四郎。

興行主との付き合い方を変え、

演目や配役は主役である自分が決めることとし、

立作者には中村座と因縁のある

金井三笑を据えました。

伝九郎、七代目勘三郎(植本純米さん)は

苦虫を潰したような表情。

團十郎は下っ端の中に中蔵を見つけ、

早速役をつけるように三笑に頼みます。

台詞の無い猪の前脚の役ですが←

以前の弟弟子で少し出世をした伝蔵は

心中穏やかではありません。

 

舞台の奈落にお稲荷さんが祀ってあります。

舞台の神様らしきコン太夫、

四代目團十郎を含め今まで3人しか

コン太夫を見たり意思疎通できた人はいません。

お酒を替えに来た中蔵に見えたので

コン太夫はびっくり!

中蔵は大道具さんだと思って

会話をしていますが・・・。

 

下っ端仲間ができました。

他の座で女形をやっていましたが、

立役でやり直すことに決めたら

中道りから稲荷町に落とされた

瀬川錦次(古河耕史さん)。

彼はその後どんどん名前が変わりますw

(市川武十郎→市川染五郎 and more)

彼がイノシシの後ろ足となり、

2人で謎の稽古を重ねて本番当日、

伝蔵の見せ場が色褪せるほど

派手に暴れ回りましたが、

主演の團十郎には

「もっとやれ!」と気に入られました。

群像劇をやりたくて

芝居のできる若手を増やしたい團十郎、

次の芝居では中蔵に一言台詞のある役を与えます。

 

それを聴いていた先輩役者任三郎(植本純米さん)は

伝九郎に告げ口。

中蔵が台詞をうまく言えないように

師匠自ら芝居の邪魔をします。

終演後、芝居を壊したとして、

伝九郎が中蔵を折檻。

團「中蔵はお前のもんじゃねぇ。

こいつは・・・天の下されもんかもしれねぇ」

伝九「こいつはねぇ、

俺が昔拾った子犬です。

欲しいなら差し上げますぜ」

先輩たちに楽屋なぶりに合う中蔵。

任「この世界じゃ

分を知るってことが何より大事なのさ」

中「分を知るって何ですか?

(中略)

なんで芝居に血筋が必要なんですか?」

任「決まりなんだよ!

この世界で飯食ってく以上、

守らなきゃなんねぇ掟みたいなもんさ」

中「飯食うために芝居やってるんですか!?

任三郎さんは、もっと

芝居がしたくねぇんですかぃ?」

任「食うために役者やって何が悪いんだ!!

この世界にいたければな、

夢見ちゃいけねぇんだよっ」

中「もっと面白い役やってみたくねぇんですかい?

もっともっともっといい芝居が・・・」

ますますひどく傷めつけられ、

先輩たちに「俺たちは一生ここなんだよ」と言われ、

「やりてぇ芝居だできねぇんだったら

死んだ方がマシだ。

殺してくだせぇ!」と中蔵。

任三郎が止めて、なぶりが終わり

置き去りにされた中蔵。

コン太夫は死にに行く中蔵を

止めるでも慰めるでもなく・・・。

 

三味線を抱えた武士、酒井新左エ門。

夜道を急いでいると4人の覆面男に取り囲まれます。

覆面をしていても新左には心当たりがありました。

新左に剣術で負けた男たちの逆恨みでした。

4人がかりでも新左一人に歯が立たず、退散。

一息ついた新左の耳に水音が聞こえます。

大川に身を投げた中蔵でした。

引き上げられて気を失ったまま

新左の屋敷につれて来られます。

目が覚めた中蔵は命の恩人に

「お恨み申し上げます」と言って泣きます。

新「身投げか?

それは悪いことをした。

望みをかなえてやる」

と、新左が刀に手をやると

中蔵、一瞬ビビリはしたものの、

鯉口を切った手元に見入り、

新左の立ち居振る舞いを観察します。

中「鯉口三寸くつろげばの鯉口?」

「仮名手本忠臣蔵」の中の台詞です。

芝居好きな新左も台詞を続けます。

新「スパッと首を落としてやる」と

刃を近づけると

「あぁっっっ、おぉっっっ」と

都度うめき声を上げるものの

目は新左の手元に戻る中蔵。

新「やかましい!

『死ぬ~、助けて』と騒いでいるから

わざわざ川に飛び込んで助けてやったのに、

『お恨み申し上げます』だと!?

叩き切るぞ!

マジで・・・」

まだ所作を吸収しようとしているその目つきに、

新「もういい、帰れ」と呆れ気味。

気絶している間に連れてこられたので

「ここはどこでございましょう?」と尋ねると

「武士は容易に自分の名や住まいを

明かさぬものだ」と言われてしまいます。

握り飯と履物をくれた新左。

新「お前、役者だな」

首を切られそうになっているのに

瞬きもせず手元を観察していた、と指摘された中蔵。

中「なにゆえに私はそうなのでしょうか。

昔からことあるごとに」

新「それはお前が役者だからよっ。

本物そっくりに真似て

舞台の上で赤の他人を演じる、

そういう嘘に命をかけるのが

お前ら役者の性なんだろう」

帰る道々、自分は身を投げたものの、

本当に死ぬ気ではなく、

身投げをしたらどういう感覚なのかが

知りたかっただけかもしれない、と思う中蔵。

それが役者の、自分の性だから。

「おもしれぇなぁ。

おっかさん、やっぱり役者はおもしれぇよ!

血筋なんて関係ねぇ!

位もしきたりも全部関係ねぇ!

俺はバカみたいに芝居をすりゃあいいんだ。

性だから、それが俺の性だから。

出世しなきゃ面白い芝居ができねぇんなら

這い上がりゃいい!」

と決意します。

「役者、演じてなんぼだぜ」

暗転して1幕終了。

このときの中蔵の表情が素晴らしくてですね、

いじめられたり身投げしたりした後なので

髪の毛とかざんばらなんですけど、

それが迫力を増してより良かったです。

 

2幕

死にかけた後の中蔵はますます芝居に邁進。

錦次と切磋琢磨して中通りに出世。

絶好調の中蔵も、台詞を忘れることはあります。

あるとき台詞を忘れて頭真っ白になっていると、

奈落よりコン太夫の助け舟が聞こえます。

わざと聞き取りにくく言っているのですが←

「耳打ち~するんだよーーー」

團十郎のところに近寄り、

「台詞忘れました」と耳打ち。

團十郎は驚きつつも

「相分かった」と芝居を続けます。

これが観客からは

相当言いよどむような内容だったのだろう、

と理解され、評判になりました。

團「明日からもその芝居で行くように」

台詞を忘れたとしても

切り抜けるのも腕のうち、というお話です。

助けてくれたお礼を持ってコン太夫の元へ。

中蔵はコン太夫に、心の中の道の話をします。

先の見えない道は不安ではないか、と尋ねられると、

そこをただ真っすぐ走ればいいのだ、と思うと

楽しくてしょうがない、

体の中がムズムズと何かがうごめいて

いてもたってもいられなくなるという中蔵。

ムズムズの正体は

芝居のためなら宿主をも食らう化け物が

中蔵の中に住んでいる、

飼いならせ、食われるなよ、とコン太夫。

コ「1つ予言をしてやろう。

中蔵、お前は名題役者になる」

中「どれくらいでなれますか?」

普通に考えたら名題役者になれるはずがないのに、

驚きもしない中蔵にコン太夫がびっくりですが、

5年で名題役者になれる、と告げます。

中「名題役者の上はないのですか?」

コ「そんなものはない・・・あ、1つだけあるな。

市川團十郎」

さすがにそれは望まない中蔵。

 

次々取り上げられていく中蔵に

焦りを覚えた伝蔵は

亡き八百蔵の妹おるやと婚約。

伝九郎に媒酌人をしてもらう確約を取り付けます。

次に團十郎には、

おるやが形見の狭い思いをしないように、と

父親代わりを願い出ます。

八百蔵の妹なら家族も同然、と承諾する團十郎に、

実は自分が婿入りをし、

八百蔵の名前を残したい、(とおるやが言ってる)

と打ち明けます。

中村座をやめて市川一門に入る、ということ。

團「師匠は承知しているのか?」

伝蔵「仲人を引き受けてくれたのが何よりの証拠」

二代目八百蔵が中通りのままでは格好がつかない、

ということで相中への昇進も決まりました。

伝九郎は祝言の後、怒り心頭、

二代目八百蔵は中村座出禁に。

ちなみに白無垢のおるやは純米さんだそうですw

 

仲蔵の命の恩人の新左。

なんだか家が没落しちゃった様子?

元々四男だった新左は

武士にこだわりがあるでもなく、

三味線弾きにでもなろうかと。

母上が江戸を離れるのを三味線でお見送り。

 

センターに正座をした中蔵ただ一人、

始まったのは「外郎売」。

5分一人でしゃべり倒します。

徐々に早口になり、

まさに早口言葉でお馴染みの

言い回しが続きます。

集中力に感服しました。

中蔵が5年という驚異的なスピードで

名題役者になったお披露目の公演です。

中蔵から仲蔵へ、にんべんがつきました。

血筋がなくても出世できる

道筋をつけてくれたことに、

かつていじめていた兄弟子たちも大喜びです。

そんなお祝いムードに水を差すように(←)

二代目八百蔵が中村座に帰ってきます。

絶対的地位に上り詰めた仲蔵にも

いまだにライバル心を燃やしています。

次の公演の「仮名手本忠臣蔵」、

仲蔵に決まっていた役を奪ってしまいました。

三笑は團十郎の御用作者、という扱いに

不満を感じるようになり、

対等の立場に立ちたいと思っていました。

伝九郎と共謀し、

自分たちのゴリ押しを

團十郎がどこまで許すか試してみよう、

と企みます。

その駒にされたのが仲蔵。

主要な役をあてがわれず、

5幕だけに登場してすぐ殺される

斧定九郎という浪人の役、ただ一役のみ。

5幕は前後の幕ほど見せ場が無く、

弁当幕と呼ばれているところです。

コン太夫には愚痴を言いますが、

役がもらえたんだから、と受け入れる仲蔵。

稽古が始まり、

お決まりの台詞を言って登場する定九郎に

三笑はダメ出し。

山賊がこれから襲う相手に

声を掛けるのはおかしいし、

セリフが多すぎるのでカット!

「五十両」というたった一言だけ許されました。

その後イノシシに間違われて

撃たれて死ぬシーンも、

うめき声を上げながらもがく演技をしてみせると、

「声を出すな!」と三笑、灰皿を床に投げつけます。

江戸時代にその素材はないだろうww

仲「先生、灰皿を投げねぇでくだせぇ」

誰かさんへのオマージュですね。

とにかくセリフは一言、

それ以外に声を上げてはいけない、

という縛りの中で、

他の演技については好きにさせてもらうことを

約束させた仲蔵。

團十郎は怪訝な顔をしながらも

口出ししませんでした。

 

母を見送った後、

大刀を質に入れてしまった新左。

伸びきった髪に着崩した着物、

ビジュアル的に刀がないと似合わない、

と質屋の主人が真っ赤な鞘の一対を

譲ってくれました。

センスがいいものとは言えませんが。

 

定九郎の芝居をどうするか、

なんとか三笑の鼻を明かしたい、

と悩み続けていた仲蔵。

馴染の蕎麦屋で、店員・万蔵(斉藤莉生さん)に

仲蔵さんが相手にするのは

三笑ではなくお客さんでしょ、

と諭されてモヤモヤが晴れる仲蔵。

そこへ新左が店に走り込んで来ました。

急に降り出した雨に雨宿り。

質屋でもらった忘れ物のボロボロの傘、

雨に濡れないよう

着物の裾を帯に挟んで脚は丸出し、

しかも例の赤い刀という強烈なビジュアルに

仲蔵は目を奪われます。

隣の席で1杯の酒を飲む浪人風の男の仕草を凝視。

その視線に気づいた新左としばし言葉を交わします。

新左の草履の鼻緒が切れると、

インスピレーションを与えてもらったお礼か、

自分が履いていた草履を差し出します。

それはかつて新左がくれた草履でしたので、

新「ぴったりだ」←

仲蔵が名前を尋ねると

「武士は容易に自分の名や云々」

その言葉であの時の、と仲蔵は気付いたようです。

ボロ傘を開いて肩越しに

「あばよ」と言って去って行く新左。

仲「あれだ」とニヤリ。

 

三笑や伝九郎に知られぬように

染五郎(ex錦次)がこっそり

仲蔵派の役者たちを奈落に集めました。

仲蔵の考えで、

定九郎の衣装や小道具を一新する算段をします。

定九郎は山賊だけれども

元をただせば家老のぼんくら息子。

黒羽二重の単衣に白献上の帯を

ずっと着ていてもおかしくない。

それにボロッボロの傘を合わせたい。

そして仲蔵の動きに合わせた三味線を

ぶっつけ本番で弾き続けて欲しいのだけれど、

いつもの三味線弾きが具合が悪くなってしまい、

そこに推薦状を持って現れたのが新左!

腕には自信がありました。

 

コン太夫の長い口上(9分らしい)。

「仮名手本忠臣蔵」について

ざっくりと教えてくれます。

この間に仲蔵は、

着物から出ている部分は全部白塗りの

定九郎に変身します。

コン太夫さん、お疲れさまでした。

雨の山崎街道の暗がり(花道)に、

ボロ傘を差して黒い単衣は尻からげ。

赤い鞘の刀と脇差をぶら下げて、

顔と手足は真っ白に塗られた定九郎登場。

稲叢の後ろに隠れ、旅人を待ちます。

稲叢で休もうとした旅人に

背後から手が伸びて財布を奪い、

旅人が振り向いたところをグサリ。

財布を口に咥えて目を見開いた表情がまるで野犬。

心が無い。

刀についた血をゆっくりと時間をかけて

着物の裾でぬぐいます。

財布を手に取りこれまたゆっくりと溜めながら、

たった一言。

「ご~じゅうりょう~~~」

しかし直後に猪と間違えられ

撃たれてしまいます。

ブワッと血を吐く、

その色彩が潔いほど鮮やかです。

暗闇に黒い単衣、

そこから出た部分がライトを浴びてより白く、

そしてその白を染める赤。

ちなみにこのシーンの前

(コン太夫の口上の最中かな?)

ステージ上に1枚シートが敷かれます。

血のりで板が汚れないように、ですね。

もがき苦しむ動きに合わせて

新左の三味線が音を刻みます。

音はそれだけ。

やがてこと切れます。

仲蔵は「もう死んでもいい」というほど

やり切った気分で床に倒れたまま。

これだけやったけれども

観客は静まり返って自分を見ている。

ただ1人の心も動かせなかったから

自分は役者をやめる、と。

コン「明日になれば分かる」

再び見えた心の道、

その先に人影が見えました。

現れたのは團十郎。

「こっから先は1人で行け」と見送ります。

團十郎は仲蔵に五代目を継がせたいほどの

実力を認めていました。

歌舞伎界は決して許さないけれども・・・。

 

今までにない定九郎は大好評。

その一方で、仲蔵をないがしろにした三笑は

居場所を失い、江戸を離れることに。

関西で力をつけてもう1度勝負する!と、

捲土重来を誓います。

 

月日は流れ、四代目團十郎引退の日。

そばに控えるのは

五代目團十郎を継ぐ息子(深澤嵐さん)、

二代目八百蔵、四代目松本幸四郎(ex錦次)。

錦ちゃん、出世したね。

團十郎の引退の挨拶に並びはしなかったものの

四代目に呼ばれて仲蔵、

三番叟の衣装で遅れて登場します。

幸四郎は五代目とは仲が悪い様子。

五代目は八百蔵の妻おるやに横恋慕していて、

それが幸四郎には人として許せないようです。

が、八百蔵は体が悪いらしく、

自分が亡くなった後は

妻と息子を面倒見て欲しいと

五代目に頼みます。

「息子の面倒は俺も見る」と言う仲蔵に

「息子まで影響を受けたら困る」と八百蔵。

自分も仲蔵に影響を受けていたことを

さらしてしまいます。

この2人の溝も埋まったのかな。

「同じ時代を生きた役者で

中村仲蔵に影響を受けていないやつなんていねぇよ」

と幸四郎。

そして総出で踊る最後のシーン。

仲蔵にはおっかさんも

楽しそうに踊っているのが見えます。

恩返しできたんですねぇ。

歌舞伎界のパワハラ、セクハラ、いじめなど

ブラックでゲスい部分も多々あれど、

最後が明るく終わるのが良いです。

最後の最後に仲蔵が思いっきり舌を出します。

「舌出し三番叟」という作品で実際にある

表情(振り)なのだそうですが、

面白い芝居ができるなら、

何があろうと、邪魔されようとどうでもいいよ、

と言っているような

そんな気がした終わり方でした。

 

印象的な言葉、シーンが多くて、

2度の観劇では足りないほどの素晴らしい作品でした。

配信も2度しか見れなくて残念でした。

全然飽きませんでした。

皆良かったけど藤原竜也最高!でした。

あとは四代目團十郎の高嶋さんも良かったな。

歌舞伎界のために若手を育てたい、と

身分関係なく才能ある若手にチャンスを与えて

成長を喜んでくれる、

上に立つものとして理想的。

でも一方でやっぱりちょっと嫉妬もあるところが

人間味があっていいな、と思いました。

引退のときの老け役も良かったです。

さすがですね。

でも藤原竜也最高!←2度言う、何度でも言う

 

 

てんびん座おとめ座