こんにちは、リブラです。
今回は、ジェームズ・ドゥティ著「スタンフォードの脳外科医が教わった人生の扉を開く最強のマジック」の解説です。
第12章「『適正生存者』のほんとうの意味」のあらすじ
ジム(ジェームズ・ドゥティ)は、激しい片頭痛を訴える患者ジューンを診ることになりました。
「どこが悪くても、声と歌唱力に傷がつくようなことはしたくないの。
それがわたしの1番大切なものだから」とオペラ歌手であるジューンはいいました。
しかし、ジューンの左島皮質の隣に居座る動脈瘤は直径が1センチを超える大きさで、すぐにでも処置する必要がある深刻な状態でした。
手術を急ぎたくてもジューンを納得させるには時間が必要で、ジムは他の脳外科医にも相談してみることを彼女に勧めました。
ジューンはセカンドオピニオンを2人の医師に聞きましたが、怯え切ってジムのところに戻ってきました。
彼女は自分が人間ではなく、診断対象でしかないと感じたというのです。
ジムは、不安と恐れを抱えたジェーンを生身の人間なんだ、患者は故障した機械じゃないし、医師は機械工じゃないという思いで彼女に向き合い、対話を重ねました。
結局、手術を任せられるのはあなただけだとジューンは認め、手術の前日に彼女がカルメンのアリアを歌ったCDをジムにプレゼントしました。
手術が始まりジューンの動脈瘤がむき出しにされると、その根元は周辺の脳に張り付き、破裂させずに切り離すことが難しい状態にあることが明らかになりました。
「もし、僕の手元が狂ったら破裂してしまう。僕のミスは彼女が1番大切にしているものを奪ってしまう」
そう思うと、突然心の中にジューンの顔が浮かび、アリアを歌う彼女の声が聞こえました。
そして、話すことも歌うこともできなくなった、麻痺状態の彼女を思い浮かべてしまい、ガクガクとジムの手が震え出しました。
ジムはいったん手術を中断して腰掛け、目を閉じて呼吸に集中しました。
息を吸い、ゆっくり吐きました。
頭を空っぽにして、恐れがそこにとどまれなくなるまで、呼吸を続けました。
心を開かなければならないときもあるが、外科医としての技術に頼らなければならないときもある。
絶対的な技術者としての能力に。
ジムはこれまで何度もやってきたルーティーンに意識を集中させました。
すると、恐れは去り、意識は澄み渡り、落ち着きを取り戻し、クリップが留まって動脈瘤がきれいに切除されたイメージが頭の中に見えました。
ジムはジューンを苦しめていた怪物(静脈瘤)にとどめを刺し、手術は無事に終わりました。
回復室で目覚めたジューンは、「大丈夫よ。ありがとう」といって手を伸ばしジムにハグをして、手術の成功に気づき泣き出しました。
その日の帰り道、ジューンのアリアのCDを車の中で聞いていると、恵まれた歌声で人の心触れ、人とつながることができた彼女の才能にジムの心は熱くなりました。
ジムは愛する人たちを抱きしめたくなり、感謝の気持ちでいっぱいになりました。
ジューンを助けられたことに感謝し、医師であること感謝しました。
心を開いて人生を送れば傷つくこともあるが、心を閉じて人生を送るほうがもっとつらい。
ジムはこのとき、脳神経外科医として超然とすべき自分と、他者とのつながりを追い求める自分との間に、まだ、折り合いをつけられずにいました。
これまでは脳の謎を探求してきたが、今度は心の秘密にも同じだけの学究的な厳格さと自然科学を当てはめることに力を注ぐときがきていると、彼は思いました。
「スタンフォードの脳外科医が教わった人生の扉を開く最強のマジック」より引用。
わたしたち人類は、優れた脳が生み出す優れた科学やテクノロジーに支えられ、地球の食物連鎖のトップに君臨しています。
しかし、優れた複雑な脳を持つが故に、苦しむことがあります。
未来に起こるかもしれないことを想像して不安になったり、過去の失敗を嘆いたり、自分には価値がないと責めて不快な気持ちに陥るのです。
時間のことととか「自分は何か」とかを一切考える必要がない生き物には、無縁の苦しみです。
わたしたちの思考も感情も脳から生まれます。
わたしたちは、考える脳と感じる脳の両方を持っているのです。
感じることに意識を向けると、思考はそれを邪魔します。
考えることに意識を向けると、感情はそれを邪魔します。
1人の頭の中で、意識の矛先をどこに向けるかの奪い合いが起こるのです。
ジューンの気持ちに共感するジムも、冷静に開頭し静脈瘤を除去する脳神経外科医のジムも、同じひとり人間です。
思考する左脳の機能を頼りにすると、保守を求め、安全圏を死守する判断ばかりを下すようになります。
ジューンに不安と恐れを抱かせたセカンドオピニオンの医師たちは、彼女の気持ちに寄り添うことを避け、冷静にその手術で起り得るリスクと可能性の説明をして、医師としての義務を果たしたのでしょう。
でも、「心を開いて人とつながることの力」を体験しているジムには、不安と恐れに陥っているジューンに共感せずにはいられません。
ジューンもジムと心でつながることができたから、手術を任せる決心ができたのです。
けれども、心がつながると、ジューンが歌えなくなったり麻痺して動けなくなる未来を恐怖する気持ちも同時に伝わってきてしまいます。
見えないけれど、わたしたちは人々の様々な感情の海の中を浮遊するように生きています。
人の言動や情報に感化されたり、流行に合わせたくなったり、音楽や映像や物語に心を動かされたりするのは、感じる脳の働きである人とつながる機能の成せる技です。
感じる脳の働きがなかったら、喜びや楽しみが人とつながることで増幅されるダイナミクスを感じることはできません。
ドットコムバブルの崩壊で財産を失う前まで、ジムは「心を開いて人とつながることの力」に価値を感じられず、「ルース教え」の最も大切な「心を開くこと」を無視してきました。
その結果、感情を分かち合える人間関係を一つも持っていなかったこと、お金で買える幸せは幻想だったことに気づき、「心を開くこと」をメインに据える人生に切り替えることで再起を図りました。
そのプロセスにあるときにぶつかった問題が、「心を開く」と共感は通うが個としての自分の意識に集中し難くなることでした。
「すべてつながっている自分」と「個として分離している自分」の両立の問題でした。
この問題でもジムは「ルースのマジック」(マインドフルネス)を実行することで切り抜けました。
目を閉じ呼吸に集中することで、クリップが留まって動脈瘤がきれいに切除されたイメージを描くことができました。
「ルースのマジック」が「心を開くこと」なしでも具現化に成功することをジムは巨万の富を得ることで実証しました。
しかし、「心を開くこと」なしにその具現化を呼んだ場合、ほんとうの幸せを見失うことも彼は知りました。
そして、「心を開くこと」をしてその具現化を呼ぶ場合は、なおさら、その具現化に関わる人々の思いに振り回されることもジューンのケースで体験して、そんな場合もやはり「ルースのマジック」(マインドフルネス)が有効であることを体験したのです。
彼のこの体験は、わたしたちの優れた複雑な脳を扱うための大きなヒントになります。
「心を開いて人とつながることの力」はヒプノティック・リズム(集合意識による集団催眠)とつながりその波に乗ることを意味しています。
けれども、そのヒプノティック・リズムに飲まれてしまったら、「ミイラ取りがミイラになる」のです。
ですからそのとき必要になるのが、「いま、この瞬間」に根を降ろし、心(思考と感情)と身体を一つの方向に向けて選択し、判断し、行動することです。
「いま、この瞬間」だけに意識を向けるとき、心(思考と感情)と身体は一つになるので恐れは消えます。
恐れが消えればニュートラルな心でいられるので、恐れと共鳴するヒプノティック・リズムに飲まれる心配はなくなります。
ニュートラルな精神状態を保つとき、自分の意思でつながりたいヒプノティック・リズムに乗ることができ、その波が導く世界線を呼ぶことができるのです。
「心を開くこと」で難易度を上げましたが、自分ひとりで叶える夢から関わる人々と共に一緒に叶えるひとつの夢にグレードアップするのです。
ジムはジューンの希望の具現化を果たすプロセスで、「脳神経外科医として超然とすべき自分と、他者とのつながりを追い求める自分との間に、まだ、折り合いをつけられずにいること」に気づきました。
それにより、脳の探求のみならず、心の秘密の解明の必要性も感じたのです。
このように「心を開くこと」で他者と自分のひとつの夢を具現化すると、連鎖的に自身の次の扉が開き、発展する道が示されるのです。
次回も「人生の扉を開くマジック」の解説を予定しています。
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