こんにちは、リブラです。

今回は「ミルトン・エリクソン心理療法<レジリエンスを育てる>」の第9章の解説です。

 

*エリクソンを平手打ちしようとした女性

 

若い女性がエリクソンの診察室に入ってきて、彼をにらみつけました。

彼女の診察予約を取ったのは夫でした。

 

エリクソンは彼女に挨拶して、

「もし、わたしがたったの一言でも間違った言葉を口にしたら、あなたはわたしに平手を喰らわせて出ていくだろうと、ご主人から伺っています。

 

ひとつだけ、困っていることがありましてね。

どちらに身をかわしたらいいか、わからないんです。

 

あなたは右利きですか?左利きですか?」と尋ねました。

 

女性はびっくりしてエリクソンを見て、

「どうやらあなたは間違ったことは言いそうにありませんね」と言いました。

 

エリクソンは「たぶん言わないでしょう」と答え、

「ところで、あなたはわたしと身長が変わりません。

 

とても良い体格をしていますが、わたしよりほんの少し軽いでしょう。

それでも平手打ちはできそうです。

 

で、あなたは右利きですか?左利きですか?」とさらに尋ねました。

 

女性は「右利きですよ」と答えました。

 

エリクソンはそれ以降、彼女から治療に必要な情報をさらに集めることができるようになり、平手打ちされることはありませんでした。

 

「ミルトン・エリクソン心理療法<レジリエンス>を育てる」より

 

診察室に入ってくるなりエリクソンをにらみつけたこの女性は、最初から臨戦態勢であったことがわかります。

 

おそらく、医療機関や医師に対して警戒心を抱くような何かが過去にあったのでしょう。

 

わたしたちはこの女性ほど極端ではないにしろ、先入観のフィルターで人を観てしまうことが多々あります。

 

ただし、この先入観のフィルターや警戒心の鎧は、心にも人間関係にも大きな負担がかかります。

 

この女性が行きたくもない病院に会いたくもない精神科医のところに行くことになったのも、心を病み治療が必要になったからです。

 

この女性がエリクソンに会うことも必然で、催眠療法の先駆者であったエリクソンが平手打ちを予告する女性と対峙することも必然であったと言えるでしょう。

 

怖れが強い人にとっては怖れたものが現実に、好奇心が強い人にとっては仰天するようなおもしろいものが現実に現れるのがこの世の常です。

 

そうなると、この対決はエリクソンの方が圧倒的に優勢です。

 

まず、この女性は敵地にたった一人で乗り込んでこなければなりませんでした。

使えるのは、「平手打ちを喰らわせる」かもしれないという脅しだけです。

 

それに対しエリクソンは、自分のテリトリーで、得意技の信頼構築で挑むのです。

 

彼の信頼構築の第一歩は、

相手の思考を受け入れる

それと闘おうとしない

それと争わない

 

そして、「想定外の言動で相手をびっくりさせる」ことです。

 

これはエリクソンが反抗的な患者に対して警戒心を解く常套手段です。

 

病院に無理やり連れてこられた不登校の少女には、初対面で泥棒呼ばわりしてびっくりさせて怒らせ、「顏に着いたシナモンの粒がクッキー泥棒の証拠だ!」と言って笑わせ、そばかすの悩みを「シナモンフェイス」というニックネームで解消させ、信頼構築をとりつけました。

大嫌いな自分が好きに変わる瞬間 | リブラの図書館(スピリチュアルな本と星のお話) (ameblo.jp)

 

今回登場した女性は、エリクソンが「平手打ちを喰らう」ことを前提に右利きか左利きかを尋ねるとは想定していなかったのでびっくりしたのです。

 

この手段は、医師を殺傷しようとエレベーターに忍び込んでいた精神病棟の患者にエリクソンが自ら進んで死に場所を探す話をして、安全にスタッフルームまで誘導したときも使われていました。

 

警戒心が強い状態や臨戦態勢のとき、人は自分の想定の上を行く話をされると驚き、つい相手の誘導に乗ってしまうのです。

質問による「注意のそらし」で命の危険を回避したエリクソン | リブラの図書館(スピリチュアルな本と星のお話) (ameblo.jp)

 

さらに、エリクソンのダブルバインド(二重拘束)のトリックにひっかかるのです。

2つの矛盾するメッセージを会話の中に盛り込むと相手は混乱して精神的な拘束を無意識に感じ、逃げ場を求めて誘導に素直に従います。

 

この女性はエリクソンの想定外の発言にびっくりして警戒が緩み、「どうやらあなたは間違ったことは言いそうにありませんね」と言ったのに対し、

 

エリクソンは「たぶん言わないでしょう」と答えましたが、なおも「平手打ちを喰らう」ことを前提に右利きか左利きかを尋ねる

のです。

 

この女性の潜在意識は早くこのダブルバインド(二重拘束)を仕込んだ矛盾した会話から逃れたくて、以降、エリクソンの問診に素直に答えて治療に必要な情報を与えたのです。

 

プロの精神科医のようなテクニックはそう簡単には使えないよ、と思うかもしれません。

 

でも、信頼構築が難しい相手ほど簡単にこの手法が使えます!

 

なぜなら、信頼構築が難しい相手と交流するときは、双方が警戒心を持ち、最初から先入観のフィルターをバリバリにかけているからです。

 

このとき、先に先入観フィルターを外した方がその交流の主導権を握れます!

 

信頼構築が難しい相手は、先入観フィルター越しに勝手な印象で眺められるに慣れています。

だから、「きっと、コイツはわたしをこんな風に見ているに違いない!」と臨戦態勢で臨みます。

 

ですから、先に先入観フィルターを外しとおくと、それだけで相手の潜在意識にとってみたら予想外でインパクトを与えることができるのです。きっと、その驚きで相手も先入観のフィルターが外れてしまうでしょう。

 

すると、警戒心も溶けて素直にそのとき対峙したままの、ありのままで状態で交流できるので、信頼構築がしやすくなります。

 

わたしたちのエゴは、親しい人でも、苦手な相手にも、見知らぬ人でも、「優しい人」「怖い人」「怪しい人」「安全な人」などの先入観のフィルター越しに眺める癖があります。

 

でも、その先入観のフィルターをつけていることは、相手の潜在意識に察知されます。

仲の良い間柄だと無意識に相手の期待する先入観のフィルターに合わせた人物になり切ったりします。

 

それがありのままの自分とかけ離れたイメージだと、だんだんその関係に疲れを感じるようになります。

 

先入観のフィルターでカテゴリー分けしてわかりやすくしたいのはエゴの安心安全願望ですから、人間関係を良くする効果はありません。

 

仲良くしたいときは、先入観のフィルターを外して、ありのままを新鮮な気持ちで相手を眺め、ありのままの自分で接する方が心が通い合う交流ができます。

 

次回は「エリクソン心理療法<レジリエンス>を育てる」の解説を予定しています。

 

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最後まで読んでくださり、ありがとうございます。