こんにちは、リブラです。

今回は「ミルトン・エリクソン心理療法<レジリエンスを育てる>」の第9章の解説です。

 

*ぜんそくの少年

 

慢性のぜんそくに苦しむ少年がエリクソンの診察室に連れて来られました。

 

少年は話しを始める最初から、何度も吸入器に手を伸ばし、楽に呼吸ができるようにしていました。

 

少年は見るからに不安そうだったので、エリクソンは

「きみはぜんそくのこと、どのくらい怖いと思っているかな?

呼吸が止まるかもしれないと思ったときのきみの恐怖はすごいだろうなぁ。

それがどんなか、話してくれるかい?」と思いやるように尋ねました。

 

少年は見た目にわかるほどほっとした様子になりました。

死や呼吸停止をどれだけ恐れているか詳しく聴きたいといわれたのは、これが初めてだったのです。

 

少年は、いきなり呼吸ができなくなる恐怖について、胸が締めつけられる恐ろしい感覚や、以前に見た死の幻影を事細かに説明しました。

 

彼は、そのようにして自分の体験を夢中になって語りながら、素晴らしい聞き手に出会えたことに安堵し、楽に呼吸を始めました。

 

そのタイミング(暗示の受け入れ準備ができた頃合い)を見計らって、エリクソンは

「ねぇ、恐怖のことを話すと、呼吸が前より楽になるね」と指摘し、少年もそのとおりだとを認めました。

 

そこでエリクソンは、次のようにいいました。

「きみのぜんそくの原因だけど、一部は恐怖で、一部は花粉だってこと、わかってもらいたいんだ。

飲んでいる薬は、花粉が原因のぜんそく用だね。それはちゃんと飲むんだよ。

 

ところで、きみの今のぜんそくを100%だとして、もし、わたしが1%減らしても、きみはその変化に気づかないだろうね。

そのとき、きみのぜんそくは1%減っているんだ。

 

たとえば、わたしがきみのぜんそくを2%いや5%、いやいや10%減らしたとして、きみは変化に気づかないかもしれないけど、ぜんそくはすでに軽くなっているんだ

 

エリクソンは、「量は特定できなくても少しずつぜんそくを減らしていく」という考えに少年が関心持てるように誘導したのです。

 

このあとエリクソンは、少年が「今後このぜんそくをどれだけ残しておくつもりか」について話し合い、

「5%・・・それとも10%、いや20%・・・あるいは30%、いやいや40%かな?」と尋ねると、

 

少年はきっぱりいいました。

「花粉から来るぜんそくは20%にしておきます」

 

こうして、少年は吸入器の使用を以前より80%少なくする自由を得ました。

少年の人生に対する姿勢は、このときを境にすっかり変わりました。

 

「ミルトン・エリクソン心理療法<レジリエンス>を育てる」より

 

今回の少年のぜんそく症状の改善は、典型的な暗示の成功事例です。

 

でも、エリクソンは、彼をトランス状態に入れたりしていませんよね?

暗示をかけるのに、必ずしも催眠が必要ということではないのです。

 

要は、本人の潜在意識が拒まなければ、暗示内容はストンと届き、総出で協力して心と身体に働きかける流れに入ります。

そこで必須なのは、顕在意識と潜在意識の信頼関係です。

 

少年の顕在意識(気づいている意識)は、ぜんそくの症状に恐怖して「早く治りたい」と思っています。

吸引器が命綱だと信じています。「吸引器で防ぎ切れないときは死んでしまう」と想定しています。

 

少年の潜在意識(無意識)は、身体を使って「恐怖」の状態を表現しています。

この「恐怖」を顕在意識に伝えるまでは、ぜんそくの症状を消すことはできないと思っています。

 

エリクソンは、少年の顕在意識のフォーカスが「死の恐怖を防ぐ吸引器」に向かっているうちは、彼の潜在意識が無視されるのがわかるので、「ぜんそくの恐怖を表現する方」にフォーカスを向けさせました。

 

ぜんそくの恐怖を表現するには、心と身体が感じている苦痛や恐怖を言葉にしなければなりません。

 

すると、必然的に、少年の潜在意識が表現したかったことを彼の顕在意識が受けとめ、言語変換することになります。

 

彼の潜在意識は感じていた恐怖を顕在意識に気づいてもらえたので、毎瞬・毎瞬ぜんそくの症状を発生させる必要がなくなったのです。

 

潜在意識の恐怖に気づいた少年の顕在意識は、信頼するエリクソンの「ぜんそくの原因は『一部は恐怖、一部は花粉』」という説明を受けとめ、確かに話に夢中な間は吸引器に手を伸ばさずに済んだ事実を認めます。

 

花粉が原因のぜんそく症状は薬に任せて、恐怖が原因のぜんそく症状は、自身が恐怖を手放す度合いで減らしていくことが可能だと少年の顕在意識は理解し、希望を見出したのです。

 

絶望状態の人にとっては、感じることができないほどのわずかな回復でも、治癒への道が拓かれるのを感じてうれしくなります。

 

彼は死の恐怖に怯えてぜんそく症状を悪化させることよりも、ぜんそくの治癒に向けて一歩一歩近づくイメージの心地良さを選択したのです。

 

少年は顕在意識のフォーカスを、

ぜんそく症状や死の恐怖→恐怖を表現すること→ぜんそくの原因(花粉と恐怖)の理解→見えないレベルで進行する治癒へのイメージ「今後このぜんそくをどれだけ残しておくつもりか」を決めるまで、段階的に移して行き、

 

ぜんそくに生活を支配されている状態から、自分でぜんそく症状をコントロールする状態に意識変革を起こしたのです。

 

ここで、もし、少年が急激に症状が回復をする方法を推奨されたなら、彼の顕在意識は喜んでも、彼の潜在意識は拒んだことでしょう。

それでは彼の顕在意識と潜在意識のペースが会わず、共同創造になりません。

 

「ぜんそくの支配」が「ぜんそくを治してくれるものの支配」に変わるだけです。

 

少年が片時も手放せない吸引器と同じで、「これがなかったら死んでしまう」という恐怖は変わりません。

 

彼の潜在意識は、病気を通して心と身体のつながりに気づき、顕在意識と共に回復プロセスを歩みたいのです。

 

わたしたちの顕在意識は「早く、確実に成果を出す」ことを考えがちですが、潜在意識は「無理なく、自然なペースで、ゆっくりと」なのです。

 

顕在意識は時間や結果に価値を置きますが、潜在意識は感情や集合意識との協調に価値を置きます。

潜在意識は集合意識と協調することで無限のパワーが引き出せますが、それは顕在意識と潜在意識の間で不協和音が起きていないときに限ります。

 

「無理なく、自然なペースで、ゆっくりと」をイメージすることで、時間や結果に囚われない集合意識の流れに乗りやすくなります。

 

また、時間や結果に囚われない姿勢顕在意識が示すと、潜在意識は「ペースを合わせてくれている」と安心します。

 

「量は特定できなくても少しずつぜんそくを減らしていく」という考え方をエリクソンが提案したのは、少年の潜在意識を安心させるためです。

 

意識の95%を占める潜在意識を味方につけないと、顕在意識だけではやる気になっても思い通りに進みません。

 

本人の顕在意識が自発的に指示を出し、潜在意識がそれを受けとり、心と身体と集合意識に働きかけるという流れなら、1番スムーズな展開になります。

 

だから、エリクソンは、少年自らが「花粉から来るぜんそくは20%にしておきます」と決めるように仕向けたのです。

 

自分で症状のコントロールができるという安心感があれば、もう、恐怖に負ける心配はありません。

 

そして、その自発性は、レジリエンス(挫折から再起する力)を育てます。

 

「早く、確実に成果を出す」ことが気になり出したら、意図的に「無理なく、自然なペースで、ゆっくりと」をイメージする潜在意識モードに戻してみましょう。

 

顕在意識が結果に執着してイライラするポイントを見つけることができます。

それこそが、顕在意識と潜在意識のペースのズレ方向性の不一致がわかるところです。

 

意識の95%を占める潜在意識を味方につけたいならば、「無理なく、自然なペースで、ゆっくりと」のイメージを意識することです。

 

潜在意識を味方につければ、もれなく集合意識の流れに意図的に乗れて、神羅万象・万物がタイミングよく働いてくれる展開になります。

 

次回は「人生の扉を開く最強のマジック」の解説を予定しています。

 

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新メニュー(月の欲求・土星の制限の観念書き換えワーク、キローンの苦手意識を強味に変えるワーク)が加わりました。

 

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。