こんにちは、リブラです。

今回は「ミルトン・エリクソン心理療法<レジリエンスを育てる>」の第9章の解説です。

 

*夫の浮気の仕返しに浮気を考えていた女性

 

夫の浮気を知ってショックを受けた女性が、エリクソンにアドバイスを求めて診察室を訪れました。

 

彼女は、夫が同じ集合住宅に住む女性と肉体関係になっているのを知ったばかりで、ひどく傷つき、ひどく怒っていました。

 

彼女は仕返しを考えていて、エリクソンには、

「通路の向こう側に住むハンサムな男性がわたしに色目を使っていることに前から気づいているのだけど、夫に復讐するためにわたしが浮気をすべきかどうかを、教えてほしい」と話しました。

 

エリクソンは「答えは既にあなたの無意識の中にあります。ですから、それがどういうものかを知るために催眠療法を使おうと思います」と言いました。

 

エリクソンは女性をトランス状態に入れて、彼女の目論見通りにハンサムな男性と浮気をした未来の時点まで、想像上の時間を進めました。

 

その催眠療法中に彼女が体験したのは、恐ろしく気が滅入り、絶望感に苛まれている自分でした。

浮気後、自尊心が甚だしく欠如した状態を体感したのでした。

 

それを感じることにより、彼女は夫が自らの不適切な行為に苦しんでいるけれど、彼女がその不適切な行為を実行して夫以上に苦しんでいることがわかりました。

 

トランス状態の彼女は、「わたしも同じ過失を犯したから、夫はもう自らの行為に罪悪感を感じる必要がない」と気づきました。

 

エリクソンはトランス状態から彼女を目覚めさせると、トランス状態中彼女が語ったことをすべて話して聞かせました。

 

女性はエリクソンに感謝して、「答えは出ました。夫の罪を役立てて、自分自身の怒りの感情に折り合いをつけたいと思う」と言いました。

 

「ミルトン・エリクソン心理療法<レジリエンス>を育てる」より

 

人は怒りに駆られると、絶対に壊したくないものまで壊そうと目論見ます。

 

今回の女性にしても、夫の浮気に激しく傷つき、怒りを覚えたのは夫婦の信頼関係や家庭の危機を感じたからです。

 

その感情の根底で「夫から1番愛されるのはわたしのはず。他の女が彼から1番愛されるなんて嫌!」と彼女のインナーチャイルドが愛の欠乏感を訴えたからです。

 

インナーチャイルドは、親から全面的に世話を受けていた乳飲み子の頃の関係を愛のある関係とみなすので、「自分にだけ注がれる一途な愛情」を求めます。他の誰かに関心が移れば、「自分は見放される」という怖れを抱くのです。

 

そして、彼女のインナーチャイルドは同じ苦しみを夫にも味わい共感してほしいと望みます。

だから彼女は色目を送るハンサムな男性との浮気を目論んだのでした。

 

インナーチャイルドが怖れや怒りを抱いて、感情を乗っ取っているときは、目の前のことしか見えなくなります。

 

恋したわけでもない男の誘惑に乗って、したくもない浮気を仕返しのためにしても、自尊心を損ない、罪悪感が募って気が滅入るのを彼女の潜在意識は全てお見通しで知っていたのです。

 

彼女にとって1番大切なのは夫との関係でした。

仕返しのために浮気をしたら自分から夫との関係に亀裂を入れることになります。

 

トランス状態で彼女は浮気後の状態を体験して、自ら関係を壊したときの感情を味わい、罪悪感や絶望感を感じたのです。

そして、それは夫も味わったであろう感情であると彼女はわかったのです。

 

感情に乗っ取られず、ニュートラルな視点で眺めれば、仕返しのための浮気で家庭崩壊も起こり得ると簡単に想像がつくでしょう。

 

また、望む未来の世界線を念頭に置いて、今何を選択するのが良いかを「未来→現在」の流れで考えることができたでしょう。

 

潜在意識は、物質世界の物や時間の囚われがありません。

だから、あらゆる可能性の広がる未来も想定可能な世界です。

 

問いかければリクエストに答えてくれる世界でもあります。

ただし、その答えは感情に駆られ状態では受け取れません。

 

たとえ潜在意識が答えてくれたとしても、駆られている感情に邪魔されてその答えに納得できないでしょう。

 

夫の浮気に怒りで取り乱している状態で、この女性にもし、エリクソンが「仕返しの浮気なんかしても、夫婦関係が悪化するだけですよ。ご主人だって罪悪感に苛まれているでしょう」と言ったとしても、聞く耳を持たなかったでしょう。

 

浮気問題に憑りつかれた感情を脇に置いて、静かなトランス状態に入って浮気後の自分の未来の感情を体験したから、その未来は無しだとわかったのです。

 

自身の潜在意識から答えをもらったこの女性は、「答えは出ました。夫の罪を役立てて、自分自身の怒りの感情に折り合いをつけたいと思う」といいました。

 

「仲睦まじい夫婦関係である未来」を呼ぶには、現在選択するべき行動は仕返しではなく、自分自身の怒りの感情の対処や夫の罪の理解や役立て方だとこの女性は方針を決めることができたのです。

 

未来への世界線を切り替えられるポイントは、「今、ここ、この瞬間」の選択です。

現在の瞬間、瞬間に意識のフォーカスを当てるものが材料となり、未来を形成していきます。

 

「望む未来で体験したい感情」が決まったら、就寝直前や目覚めた直後あたりのくつろいで安らかな状態のときに、そのイメージを想定して、それに伴う感情を味わい、「これを体験するには今何を選択したらよいだろうか?」と尋ねてみるとよいでしょう。

 

すぐに答えが来ることも、なかなか返って来ないこともありますが、潜在意識は何らかの形で返答してくれます。

 

物質世界の形や時間や制限に囚われていると、潜在意識の答えを現実性に欠けると思い込んで無視しがちです。

 

ですから、くつろいだり、ボォーっとしているときに、突然、良いアイデアやインスピレーションが降りてきたりするのです。

 

次回は「エリクソン心理療法<レジリエンス>を育てる」の解説を予定しています。

 

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最後まで読んでくださり、ありがとうございます。