こんにちは、リブラです。

今回は「ミルトン・エリクソン心理療法<レジリエンスを育てる>」の第9章の解説です。

 

*歯科医に平手打ちを喰わされた女性

 

21歳のジェイキーは恐る恐る歯科医院に入り、「歯を診ていただきたいのですが、歯科用の椅子のある所では先生とお話ししたくなくて・・・」といいました。

 

そこの歯科医はエリクソンから催眠の訓練を受けていましたので、

「わかりました。理由をお話しいただけますか?」と返答しました。

 

ジェイキーは8歳のとき、ある歯科医から泣き止むまで顔を平手打ちされたことがトラウマになり、以来1度も歯の治療を受けず、歯磨きすらしなくなっていたのでした。

 

歯科医(エリクソンの弟子)は、

「あなたには、その椅子に深くもたれていただき、わたしはこのデスクの向こう側で自分の椅子にもたれるというのはどうでしょう?

そこから廊下を覗くと歯科用の椅子は見えますが、あの椅子より出口の方が近いから、見るだけなら、怖がらずに歯科用の椅子を見れますね」といって、ジェイキーを椅子に座らせ、リラックスさせました。

 

その日は、ジェイキーの話しを聞くだけで終わらせて、翌日の遅い時間に次回の予約を取ることで終了しました。

 

次にジェイキーが歯科医院を訪れると、個室の歯科用の椅子にくつろげるようなクッションも用意されていました。

 

歯科医は、抜歯を希望するジェイキーにちょっと部屋を見回した後で座るように促し、

 

「抜歯の前に、口の中を調べたいので、開けたいと思うだけ口を大きく開けてください。

でも、あなたが開けたいと思う大きさより、ほんの少しでも大きすぎてはいけません」といいました。

 

ジェイキーは微笑んで口をゆっくり開け、それを次第に大きく開けていきましたが、歯科医それを観察しただけで口を閉じるようにいいました。彼女の歯はすべてひどい虫歯になっていました。

 

歯科医はジェイキーに「入れ歯が必要になるでしょう」と説明し、

 

「これからわたしはあなたの頬と顎に触ります。

わたしの手が頬と顎に触れる感じに慣れていただきたいのです。

抜歯をするときには、あなたの顔に触れることになりますから」と前置きしてから、抜歯を完了しました。

 

その後ジェイキーは入れ歯の調整のために別の歯科医の所にも送られましたが、それもスムーズに済みました。

 

エリクソンは、ジェイキーが大学に入るための将来的調整や男性との交際~結婚についてまで相談に乗り、後に彼女は歯科衛生士になりました。

 

「ミルトン・エリクソン心理療法<レジリエンス>を育てる」より

 

子どもが歯科を受診するときの恐怖って大きいですよね。

そこで平手打ちを喰らうようなことが起きたら、二度と行きたくなくなるのも無理はないです。

 

わたしも10歳のときに歯科治療に行って以来、26歳になるまで受診できませんでした。

治療が怖いという以上に、治療費が高額になるのが怖かったからです。

 

自分で十分な治療費を払えるときまで放置していたら、今度は仕事の忙しさで歯科医院に行く気になれず、やっと覚悟を決めたのが26歳のときでした。

 

でも、思い切って歯科医院に通い始めたら以外にスムーズで、治療以上の成果もありました。

 

あらゆる面で新しいことに挑戦する不安を持っていたわたしが、それを機に「安全圏から一歩踏み出す覚悟」が容易にできるようになったのです。

 

26歳から治療を始めてほぼ1年かかりましたが、27歳のときにはわたしの最初のサターンリターン(土星回帰)に突入したので、歯科治療はその準備としてタイムリーなイベントでした。

 

わたしの土星(みずがめ座)は1室(本人のハウス)にありますから、自分自身の現実と向き合わねばなりません。

 

現実問題に自分の力で乗り越えることを、1ハウスのサターンリターンでは試されるからです。

 

歯の治療というのは、純粋に自分のためにだけ時間とお金とエネルギーを注ぐのですから、サターンリターンの試練を超えるために自分のことだけに集中する姿勢がとても必要だったのです。

 

わたしの1ハウスのみずがめ座土星は、9室(探求のハウス)のさそり座海王星と90度で葛藤するアスペクトをとっています。

 

海王星は目に見えない神秘的なサイキックな世界を象徴する天体です。

 

わたしは歯の治療を終了すると、英会話やヨガ教室にも通い出すようになりました。

ヨガ講師とはスピリチュアルな話ができて、とても親しい友人になりました。

 

ところが、その友人は、カルト宗教の信者だったのです。

わたしは友人関係を続けたかったけれど、彼女が信じている世界には賛同できませんでした。

 

彼女は自分が信じるものにすべてを捧げて幸せだといっていましたが、自分の頭で考えたり、判断することをしなくなり、誰かの話の受け売りばかりになっていくのが心配でした。

 

マインドコントロールにかかっている人を引きずり出すのは至難の業なのに、本人が望んで信じているものをやめさせるなんて不可能なのに、わたしは彼女が信じている世界の噓を暴き出したら目が覚めるだろうと考え、信者になるそぶりを見せてそこに潜り込む決断しました。

 

ミイラ取りがミイラになってはいけないので、「自分の世界は自分が創る」という自己啓発系のアファメーションの音源を常に聞く状態にして、1か月間教団に出入りしてみました。

 

その結果わかったのは、自分のことを自分の頭で考えることを諦めてしまった人にとって教団はとても居心地よく、自分のことを自分で自由に考えたい人にとっては、束縛しかないところだということでした。

 

わたしの友人はあらゆる選択の自由を奪われているのに心地良さを感じ、そこから離脱して自由になることを恐怖に思い、

わたしは自分の選択で決めるから自分の人生になるんだと信じているので、彼女と生きる世界が違う、袂を別とうと思いました。

 

1室みずがめ座土星VS9室さそり座海王星のハードアスペクトに、トランシットのみずがめ座土星が加わったこのサターンリターンの葛藤は、さそり座海王星の探求するスピリチュアルな真実とみずがめ座土星の論理性の闘いを投影した現象でした。

 

他者が信じている世界も自分が信じている世界も真実ならばひとつに通じるところがあるはずというのがさそり座海王星の思いですが、みずがめ座土星はそこに納得のいく論理性なければ自身の現実に採用不可能と捉えるのです。

 

結局、このときサターンリターンのおかげで、わたしは自分自身のことについては自分の判断で決めたことに後悔しなくなり、自信を持てるようになりました。

みずがめ座土星とさそり座海王星の共同創造のコツを掴んだのです。

 

人間は習慣が馴染んでしまうと、なかなかそれを変えるのが難しい生き物です。

自動的に回る思考回路でベルトコンベヤー式に日課をこなす流れに、エゴが安心するからです。

 

でも、その流れを変えたいと思うならば、「安全圏から一歩踏み出す覚悟」が必要です。

 

「安全圏から一歩踏み出す覚悟」にコミットできれば、今回のケースのジェイキーのように恐る恐るでも薄紙を剝がすように恐怖を越えて、未来の可能性の扉を開くことができるのです。

 

ジェイキーがもし、歯医者を怖がって避け続けていたら、歯の治療すらできない自分を責め、大学に行くチャレンジも、恋愛や結婚するチャレンジもできなかったでしょう。

 

彼女は歯科治療が人生を変える分岐点になったからこそ、その経験を活かして誰よりも患者に優しく安心感を与える歯科衛生士になろうと志したのでしょう。

 

トラウマの恐怖を乗り越えるレジリエンス(挫折から復活するパワー)を育てるには、「安全圏から一歩踏み出す覚悟」にコミットした患者を尊重し、ゆっくりと自発性が現れるのを見守った歯科医(エリクソンの弟子)のような姿勢が必要です。

 

「安全圏から一歩踏み出す」恐怖を理解し、少しずつでも前進する勇気を讃え、自身の未来の可能性を信じる気持ちがレジリエンスを起動させ、奇跡のような展開に導くのです。

 

次回は「エリクソン心理療法<レジリエンス>を育てる」の解説を予定しています。

 

わたしのサロン、リブラライブラリーではあなたの心のしくみをホロスコープで解説し、心の制限、葛藤が引き寄せる現実問題にセルフヘルプで立ち向かえるようサポートします。

 

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新メニュー(月の欲求・土星の制限の観念書き換えワーク、キローンの苦手意識を強味に変えるワーク)が加わりました。

 

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。