こんにちは、リブラです。

今回は「ミルトン・エリクソン心理療法<レジリエンスを育てる>」の第8章の解説です。

 

*学生のトラウマ的記憶

 

エリクソンが医大で教えていたとき、長く忘れたままになっている記憶を思い出したいという学生がいたので、同意を得て催眠療法のデモンストレーションを行いました。

 

その学生は深いトランス状態に入ると、

「だんだん怖くなってきました。凄く怖いです。何も考えられません。

 

怖くて気分が悪くなりそうです。

でも、理由がわかりません」と喘ぐようにいい、吐き気を催しました。

 

エリクソンは何度か小休止を入れて、催眠ワークを続けました。

 

学生は「それは大きすぎて、ぼくにはできません。どうやるか教えてください」といいました。

 

エリクソンは「全部いっぺんにしないで、こっちで一部、あっちで一部というようにしたらどうですか?

後でそれらを全部集めて、元の大きな全体にしたらどうでしょう?」と答え、その後トランスから戻すとき、

「休息をとって、トランス状態の中で起きたことについてはすべて忘れるように」と指示しました。

 

目を醒ました学生は、「何か悪いものを食べたのかもしれません。むかむかするんです」といいました。

 

そして、再び催眠状態に入ったとき、彼は微笑んでいました。

「おかしいなぁ。ある光景がぱっと浮かび、まるでそこにいるみたいに鮮明です。

 

ぼくは、今オクラホマに戻っています。8歳ぐらいかな」

 

彼は、8歳の頃のトラウマの記憶が意識に達したとき、恐怖の発作を体験しましたが、発作はそれで最後でした。

 

そのトラウマの記憶は、8歳の頃、友だちと納屋で遊んでいるうちに取っ組み合いのけんかになり、彼は干し草用の三叉で友だちの太ももを刺してしまったという事件でした。

 

彼の父親は彼の尻を膝の上でいやというほどぶち、その間彼は緑の藻が張り付く飼葉桶を睨んでいました。

 

父親は彼を友だちの家まで引きずっていき、医師が友だちを治療するのを見守らせました。

 

医師が抗破傷風の血清を打ち、帰ろうとすると、友だちはアナフィラキシーショックを起こしました。

 

両まぶたが腫れあがり、舌が膨らんで口からはみ出し、「ぞっとするような緑がかった色」に見えました。

 

医師はもう1本注射を打ち、メスを取り出したので、当時8歳の子どもだった彼は「屠殺される豚のように友だちが殺される」と考えて震え上がりました。

 

しかし、医学生である現在の彼は、アナフィラキシーショックによる呼吸困難を救うための気管切開による気道の確保であると理解しました。

 

事件のあった晩、彼は友だちの肌が「飼葉桶の藻のような恐ろしい緑」になる夢を見ました。

 

催眠ワークの1週間後、その学生はエリクソンのところにやってきて、

「あの記憶を回復したおかげで、自分自身について驚くようなことがいくつかわかりました」といいました。

 

彼は「精神医学にそれほど関心がなくなり、内科の勉強を始めた」といい、皮膚科に対する姿勢が変わったというのです。

 

以前の彼は、皮膚科学の授業で必ず気分が悪くなり、退出せざるをえなかったのです。

 

トラウマの記憶を取り戻してからは、皮膚科学も臨床講義も楽しんで受講できるようになったということでした。

 

「ミルトン・エリクソン心理療法<レジリエンス>を育てる」より

 

 

ヒトの脳は、生まれたときにはまだ神経細胞を守るカバーのような髄鞘が未完成で、14歳くらいまでの間に髄鞘がついて大人の脳になります。

 

ですから、脳の中で発生する電気的な刺激が全部に伝わりやすく、脳全体で反応しやすいのです。

 

子どもとき、感じた恐怖がとても大きく、感情の記憶に残りやすいのもそのためです。

 

特にトラウマは、感情が主体の記憶なので、激しいネガティブな感情によって事実よりもずっと恐ろしい記憶になって印象づけられていることが多いのです。

 

今回のケースの学生は、あまりに恐ろしい記憶だったので完全に封印され、記憶を失っている状態でした。

 

ただ欠落した記憶があることだけを自覚していたので、それを思い出したくてトラウマの記憶を知らずに催眠ワークに臨んでしまったのでした。

 

でも、これは偶然ではなく、おそらくこの学生の潜在意識が呼んだタイムリーな必然だったとわたしは思います。

 

なぜなら、彼のトラウマの記憶は、医学的な教育を受ける前だったら、けして解消するはずもなく、彼のその後の進路ともあまり関わりなかったはずだからです。

 

この学生のトラウマは、けんかのときに三叉で刺してしまった過ちから始まりました。

 

素手のけんかならば、こんな大事にならなかったはずですが、破傷風が懸念されるほどの刺傷を友だちに負わせてしまい、運悪く抗破傷風の血清でアナフィラキシーショックを引き起こして、二重に友だちが苦しむ姿を見せつけられることになりました。

 

さらに、医師が気管切開をするシーンを見ることになり、友だちが殺される妄想まで記憶されてしまったのです。

 

その上、父親に怒られてぶたれたときに見ていた飼葉桶の藻の緑と、友だちのアナフィラキシーショックを起こしたときの青ざめた顔や腫れて膨れた舌の印象がごちゃ混ぜになり、友だちの肌が緑色になる夢まで見ました。

 

その恐怖と痛みと罪悪感は、8歳の幼い脳では受け止め切れないほど記憶を刻んでしまったのです。

 

それでも、彼の潜在意識は、呪いのようなトラウマの記憶が解けるチャンスをちゃんと知っていました。

 

伝説の催眠療法の精神科医であるエリクソンの講義を彼は受け、自ら催眠ワークのデモンストレーションの被験者になることを志願したのですから。

 

彼の顕在意識は、その催眠ワークがトラウマの記憶や吐き気を催す事態になるとは予想だにしなかったでしょう。

 

普通ならば、こんなに激しいトラウマの記憶を公開のデモンストレーションの催眠ワークで引き出すことは叶わなかったでしょう。

 

実際、彼の潜在意識もトランス状態で「それは大きすぎて、ぼくにはできません。どうやるか教えてください」といっていました。

 

それに対して、エリクソンはやぎ座アセンダントにやぎ座天体集結らしいアドバイスを与えていました。

 

全部いっぺんにしないで、こっちで一部、あっちで一部というようにしたらどうですか?

後でそれらを全部集めて、元の大きな全体にしたらどうでしょう?」と。

 

だから、この学生も1度のトランス状態で諦めず、何度も分割して小休止を取りながら、少しずつトラウマの記憶の恐怖に自分を慣らしていったのです。

 

やぎ座は大きなゴールを目指して、小さな積み重ねの努力を根気強く続けることが得意です。

 

エリクソンはそうやって、発達障害や小児麻痺や色弱があるにも関わらず、不可能を可能にして、生涯現役で精神科医をしていました。

 

人が普通に理解できることが難しいから独自の発想で答えを導き出す方法を身につけ、目しか動かなくなった身体を赤ちゃんがハイハイする動作を見習って練習し、松葉杖とボートで旅費を稼ぎながら独り旅をするチャレンジまでやり遂げました。

 

全部を一度にやろうとしても、大きな目標は挫折するから、手の届くところから制覇して自信に変えていくのがやぎ座のやり方です。

 

地道な一歩一歩の前進を「それだけゴールに近づいた」と捉え、けしてバカにしないのが、やぎ座ポリシーです。

 

トラウマの記憶は、見たくない忘れていたい記憶です。

 

でも、トラウマの記憶をそのまま封印しておくことは、トラウマの記憶と繊細なインナーチャイルドをネガティブな感情で包んだまま閉じ込めて置くことになります。

 

それはいつ不安や恐怖が飛び出してくる爆弾が破裂するかわからない危険をはらんでいますし、ネガティブな記憶を回避するがあまり現実の世界に禁止事項を増やしてしまうかもしれません。

 

今回の学生の場合は、トラウマの記憶を思い出し、どんなに8歳の自分が恐ろしかったのか、インナーチャイルドの気持ちに共感しました。

 

一方で友だちが医師に殺されると思ったシーンは、医学生の視点で見れば気管切開をして気道を確保する処置だったと誤解を解くことで解消しました。

 

トラウマが解消されると、彼は精神医学に関心がなくなり、本来関心があった内科学を勉強し始め、苦手だった皮膚科学の講義も受けられるようになったのです。

 

彼の内科学の勉強を阻んでいたのは、友だちが医師に殺されそうに見えてしまった気管切開の記憶でした。

 

皮膚科学の講座で気分が悪くなってしまうのは、父にぶたれたとき見た飼葉桶の藻の緑色と友だちの肌が緑色になる夢を見たことがトラウマの記憶になっていたからした。

 

本人の大人意識がそれを理解すると、もう、インナーチャイルドのネガティブな感情に煽られニュートラルな視点を失うことはなくなるのです。

 

今回の学生のように、トラウマ解消の準備が整うと運命はちゃんとそのチャンスを巡らせてくれます。

 

そのとき、ほんの一歩からでも前進する勇気を持ち実行すれば、レジリエンス(挫折から再生するパワー)が起動して奇跡が現象化するのです。

 

次回は「ミルトン・エリクソン心理療法<レジリエンス>を育てる」の解説を予定しています。

 

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最後まで読んでくださり、ありがとうございます。