こんにちは、リブラです。
今回は、ジェームズ・ドゥティ著「スタンフォードの脳外科医が教わった人生の扉を開く最強のマジック」の解説です。
第2章「ものすごい怒りがこみ上げてくるんだ」のあらすじ
中学2年の夏休み、ジム(ジェームズ・ドゥティ)は、ルースと約束したとおり「サボテンうさぎのマジックショップ」に通い始めました。
レッスン初日に店に訪れると、ルースの息子のニールがいて、トランプマジックのトリックを教えてくれた上に手品用のトランプ1セットをジムにプレゼントしてくれました。
そして、「母のマジックを覚えたら、ほしいものが何でも手に入るようになる。ただし、どんな願いごとをするかには気をつけて。
トランプのマジックより断然難しいよ。ぼくはすごく時間がかかった。
母が言うことすべてにすごく集中しなくちゃいけない。近道はないんだ」と助言しました。
ルースは「これから教えるマジックはお店では買えないの。このマジックは、何千年も昔からあって、誰かに教えてもらわないと覚えられないものなの。
でも、まずはあなたにお願いがあるの。
この夏にわたしから教わったことを、いつか誰かに教えると約束して」といいました。
ジムは「約束する」と答えましたが、ルースが「目を閉じて、風になびく葉っぱになったと思って」というと、昔観た催眠術ショーで家畜だと思い込まされた観客のことを思い出し、笑いがこみ上げてきて目を開けてしまいました。
ルースは小さなため息をついていいました。
「わたしはあなたを傷つけたりしないわ。助けようとしているの。信じてくれる?」
「どうしてぼくを助けてくれるの?」
「会った瞬間に、あなたにその力があるってわかったから」
「わかった。信じるよ」
「よかった。それが始まりよ。じゃあ、身体に集中して。
あなたの内側で起きていることはすべて身体に表れるの。
怖いとき。幸せなとき。ワクワクしているとき。緊張しているとき。怒っているとき。うらやましいとき。悲しいとき。
心は知らないといっても、身体に聞けば教えてくれるわ。反応するの。答えてくれるのよ。
すごく悲しかったり、怒ったりすることある?」
「ときどき」
「怒ったり、怖かったりしたときのことを教えてちょうだい。
それを話すとき身体がどう感じるか教えてね。
あなたが感じていることなんだから、感じることに、正しいとか間違ってるなんてない。
ただそう感じるってだけだから」
「父さんは酒飲みで、生活保護以外にぜんぜんお金がなくて、ののしったり、ものを壊したりして、母さんが泣き出す。
そうなると兄ちゃんはどこかに行って、ぼくは母さんが心配だから聞き耳を立てている。
母さんは精神安定剤をたくさん飲み過ぎて、病院に行かなきゃならないことがあったんだ。
病院で母さんが寝ている横に付き添っていたら、カーテンの向こうの話声が聞こえた。
母さんのせいでたくさん書類を書かなくちゃいけない男の人が、あんなやつらのために時間を無駄にするのはうんざりだっていってた。
そしたら女の人が笑って『これが最後かもね』とかなんとかいったんだ。
すごく悔しくてカーテンを引っ剥がして叫びたかった。
病院の人なのにそんなこといっちゃダメでしょ。
母さんにも腹が立った。なんでこんなことしなきゃいけないのかわからなかったから。
母さんをこんなに怒らせて悲しませる父さんにも腹が立った。
ときどき、ものすごい怒りがこみ上げてくるんだ」
「ジム」とルースはやさしく名前を呼んで、「いまこの瞬間に身体はどう感じるかな?」と尋ねました。
「お腹はちょっと気持ち悪い。胸はギュッてなって、少し痛い。頭はガンガンして、目はチクチクするみたい」
「ご両親のことを話してくれてありがとう。
何も考えずに、口から出ることを話したほうがいいこともあるの」
「そういうのは簡単だけど・・・」といいながら、ジムはルースと一緒に笑い、その一瞬で気持ちが軽くなりました。
「スタンフォードの脳外科医が教わった人生の扉を開く最強のマジック」より引用。
マインドフルネスは、「今この瞬間」の体験に意識を向け、評価や捕らわれのない状態で観察に集中する、内観や瞑想です。
この状態は究極のリラックス状態で、わたしたちの身体と心はやすらぎ、意識はクリアになり、至福を感じます。
このように心と身体の健康にとってもいいことだらけで、道具も要らないし、始めようと思えば誰でも簡単に始められます。
ただし、マインドフルネスの効果を実感するまでになるには、心の中立を保つ忍耐が必要です。
「目を閉じて、何にも心を奪われず、考えず、ただ、今この瞬間・瞬間の観察に徹する」ということが苦行であることに、実行して5分と経たないうちに気がつくでしょう。
それはわたしたちが優れた大脳を持っているからなのですが・・・。
実はわたしたち人間は、目を開けてボォーっと座っているだけで、命令しなくても自動的に何かしらを考え、反応する生き物なのです。
つまり、考えることを止めることがひどく難しい生き物なのです。
さらに、この止められないはずの思考ですらも停止状態にさせてしまう感情も持っています。
マインドフルネスを実行にするにあたり、最大の難関となるのが思考と感情の制御です。
別な言い方をすると、マインドフルネスを続けると思考と感情が自然に制御できるようになるということです。
もう、怒りや悲しみや失望や挫折で心を振り回されたりせず、いつもニュートラルな視点で明晰性を保ち、的確な判断や行動が落ち着いてできるようになるのです。
実際、この本の著者のドゥティ博士も、ルースからこのマジック(マインドフルネス)を習っていなかったら、脳外科医にならなかっただろうといっています。
脳外科医は人の命を担うだけでなく、脳の場合は、術後の患者の人生の質や身体の自由や幸せまでも委ねられています。
その責任の重圧に耐えながら長時間に及ぶ集中力で手術に臨むことは、人並みの以上の精神力がないと続かないのでしょう。
マインドフルネスは身についたら良いことだらけなのに、なぜ、5分も続けられないほどわたしたちの思考や感情は邪魔をするのでしょうか?
それは、感情が口のきけない身体とマインド(思考・感情)をつなぐコミュニケーションツールだからです。
危機を察知したときには感情と身体が連携して、考えるより早く「逃げるか、闘うか」の行動に出ます。
警戒心を解いて無防備な状態でリラックスするには、まず、身体と感情を安心だと思い込ませないといけないのです。
最初のレッスンで、ルースが身体に意識を向けるようにジムに言い、
「わたしはあなたを傷つけたりしないわ。助けようとしているの。信じてくれる?」
と確認をとったのは、身体と感情の警戒心を解くためでした。
そして、その警戒心が解かれ、ラポール(信頼構築)が架け橋になって、やっと、自己開示を始めることができ、ジムは自分の怒りの根源である両親のことを打ち明けたのでした。
抑え込んだ感情は、緊張がほぐれるとどっと出てきやすくなります。
ルースを信じることができると、ジムが感じた怒りを素直に表現できたように、マインドフルネスの準備のために心身がリラックスモードに入ると、日ごろ抑え込んできた感情も出てきやすくなるのです。
だからルースはマジック(マインドフルネス)を教える前に、ジムの心に潜む怒りや怖れの感情を吐き出させる手順を踏んだのです。
それでは、ルースのように信頼できる人に聞いてもらわないと感情に邪魔されてマインドフルネスを実行できないのか、といえばそんなことはありません。
自分の感情を他人のように客観視するというテクニックを鍛えると、マインドフルネスのみならず、あらゆる面で役にたちます。
わたしがアカシックレコードリーディングを習うためにゲリー・ボーネルのスクールに行っていたとき、1番役に立ったテクニックは「個人的に捉えないこと」でした。
アカシックレコードに入るときは、心をニュートラルに保たないとアクセスできません。
それを鍛えるため、日常的に何があっても「個人的に捉えないこと」を練習するのです。
その結果、不愉快なこと、癇に障ること、悲しいこと、うれしいことなど感情が動くことに対して第三者視点で客観的に捉えることができるようになりました。
褒められても批判されても「個人的に捉えないこと」が身につくと、他者承認に振り回されず、自己認識に信頼が置けるようになります。
慣れてくると、これが魂意識が人生を観察している感覚なんだろうと思いました。
内観や瞑想をするとき、ネガティブな思考や感情が浮上して邪魔されそうになったら、その思考や感情を抑え込むのではなく、川の流れに押し流される浮遊物でも見るように「個人的に捉えない」ように眺めると、映画の観客のように客観視できます。
ネガティブな思考や感情に巻き込まれなければ、内観や瞑想はほんのひととき、物質世界を忘れる静かで自由な時間になります。
この状態を演出できると、意識のスクリーンにどんな未来を思い描くことも可能になります。
しかし、ネガティブな思考や感情がマインドを占拠していると、意識のスクリーンに望まない未来を描いてしまうこともあるのです。
そういう意味では、日常的に内観や瞑想でネガティブな思考や感情を流して認めて手放すことは、意識のスクリーンを常に思う通り活用できる状態にすることにもなります。
感情は押し込んでおいても消えることなく堆積していきます。あまりに溜まると爆発します。
感じたことを認めると、手放すことは容易になり、感情のボルテージは下がり、やがて感情の記憶は色あせていくのです。
そして、過去の感情の記憶の捕らわれから解放されると、「今この瞬間」は自由になり、意識を可能性の広がる未来に向けることができるのです。
ジムは、怒りの感情の記憶を感じて認めて手放すことで、やっと前に進み、ルースのマジック(マインドフルネス)を習う土台が整ったのです。
次回も「人生の扉を開く最強のマジック」の解説を予定しています。
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