こんにちは、リブラです。
今回は「ミルトン・エリクソン心理療法<レジリエンスを育てる>」の第8章の解説です。
*キャシーのガンの痛み
エリクソンは、ガンの激痛に苦しんでいる女性を診てほしいと頼まれました。
その女性キャシーは、肺と大腿骨と骨盤に腫瘍が転移し、耐え難い痛みをモルヒネや鎮痛剤や麻酔薬などでなんとか和らげてきました。
彼女まだ36歳で、3人の子どもがいますが、余命があと2か月しかないことも知っていました。
エリクソンがキャシーの主治医とともに病室に入ると、彼女は2つの言葉を執拗に唱えていました。
「わたしを傷つけないで。わたしを怖がらせないで。
わたしを傷つけないで。わたしを怖がらせないで・・・」
エリクソンはすぐにキャシーの注意を引きつけていいました。
「でも、わたしはあなたを傷つけるに違いありません。
わたしはあなたを怖がらせるに違いありません。
でも、ほんの少しです」
つづいて、エリクソンはキャシーに首から上は目醒めたままにし、身体は眠らせるように暗示を与えました。
そのとき「どうしてだかわかりません。それが何を意味しているのかわかりません。
でも、あなたは足の裏のかゆみを感じるに違いありません」といいました。
するとキャシーは「わたしにはかゆみを感じることはできません。
わたしが感じられるのは、かかとのしびれだけです」
エリクソンは彼女がかゆみを感じられなかったことに丁寧に遺憾の意を表した後、かかとのしびれが足から脚部、骨盤へと徐々に広がって、最終的に首まで到達するという暗示を与えました。
しかし、それが胸に達したところで、エリクソンは
「手術をした部位にはまだ潰瘍化したままの部分があります。
残念ですが、わたしはその痛みを取り除くことはできません」
キャシーはエリクソンの遺憾の気持ちに感謝し、彼の「失敗」を許しました。
ふたりは、残っている痛みはごく小さなもので、彼女はそれにうまく対処できるという点で合意しました。
彼女をエリクソンが診察したのは2月27日で、それ以降彼女は痛みからほぼ解放された状態が続きましたが、ついに8月25日に昏睡状態に陥り、その後すぐに亡くなりました。
癒しは、オール・オア・ナッシング思考から、何が達成可能かという考え方にシフトしたとき、最も発生しやすい。
目的は、可能なことと不可能なことを分離することである。
患者と共同で取り組むのは、最終的に、何が達成可能かを判断するのは患者だからである。
「ミルトン・エリクソン心理療法<レジリエンス>を育てる」より
まだ、36歳で、3人の子どもたちがいて、余命2か月の宣告を受け、ガンの痛みに苦しむキャシーは、絶望のどん底だったことでしょう。
「わたしを傷つけないで。わたしを怖がらせないで」と執拗に唱え続けることが、彼女にできる精一杯だったのです。
そこにエリクソンが来てやったことは、ガンを治すとでも、痛みを完全に取り除くことでもありませんでした。
「痛み」に対するフォーカスを「しびれ」に変え、その「しびれ」の暗示が効くところとそれが不可能なところを分離したのです。
手術をした部分だけは潰瘍化しているので痛みを取り除くことはできないと正直に伝え、それ以外の痛みには「しびれ」の暗示が効果があることをキャシーに実感してもらったのです。
だから、彼女は「残っている痛みはごく小さなもので、それにうまく対処できるという点で合意」したのでした。
モルヒネ、鎮痛剤、麻酔薬などで痛みを和らげてきたキャシーは、おそらくそれらの薬剤の効果に一時的な希望を見出し、それが効かなくなると絶望し、襲ってくる痛みに無力感を憶えたことでしょう。
自分で対処できない痛みを予測するのは恐怖でしかありません。
「わたしを傷つけないで。わたしを怖がらせないで」という言葉は、人に向けてというより、彼女のガンの痛みに対して唱えていたように思います。
エリクソンは、その無力な状態のキャシーに「痛み」を「しびれ」に変える対処法を与えたのです。
自分で「痛み」を「しびれ」に変えることができた瞬間、キャシーにとって「痛み」は恐怖ではなくなり、ガンの苦しみで余命を蹂躙されることはなくなりました。
自発性がレジリエンス(絶望状態から再起する力)を起動させる必須条件ですから、キャシーが自分で「しびれ」の暗示をかけていつでも再現できたことが、このケースのレジリエンスにつながったのだと思います。
危機や絶望状態に陥ったときは、「いまの自分にできることは何だろう?」と自問することが大きな助けになります。
できないことを数えて不安になるより、自分でできる小さなことを実行して心を落ち着かせれば、現実を直視する勇気が湧き立ち向かうことができます。
この方法は、小児麻痺の後遺症の痛みを生涯背負って生きていたエリクソンが編み出したものです。
現実的で利用可能なものはとことん使い、自分の努力に価値を置くやぎ座に木星と土星と火星とキロンを持ち、近未来の希望にフォーカスすることで運を味方につけるいて座に太陽と天王星を持つエリクソンだから、「痛み」を分割して手に負えるものからコントロール下に置き、未来に光が差すように努力を続けたのでしょう。
やぎ座といて座のコラボレーションが、エリクソンばかりか、エリクソンの患者にもレジリエンスを生み出した事例です。
「癒しは、オール・オア・ナッシング思考から、何が達成可能かという考え方にシフトしたとき、最も発生しやすい」
とこの本に書かれています。
言い換えれば、「オール・オア・ナッシング思考(全か無かの思考)」が人を追い詰めているともいえるでしょう。
「全部に効き目がないなら無いも同然」とか、「完璧じゃないのならやらないと同じ」とかの「オール・オア・ナッシング思考」を手放し、少しでも前進できたと地道な一歩一歩を自己認識することが、奇跡の蘇りの力であるレジリエンスにつながるのです。
次回は「人生の扉を開く最強のマジック」の解説を予定しています。
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