こんにちは、リブラです。

今回は「ミルトン・エリクソン心理療法<レジリエンスを育てる>」の第3章の解説です。

 

*犬に噛まれた恐怖で外出できなくなった7歳の少女レベッカのケース

 

ある日の下校時、レベッカは大型犬のジャーマンシェパードに嚙みつかれました。

それはたとえ1度だけでも、彼女にとって恐ろしい体験でしたが、2度まで同じ犬に嚙まれたのです。

 

しかも、犬の飼い主は「犬には運動する権利があるから、この先も犬をつないでおいたりはしない」と言いました。

そればかりか、犬に噛まれたレベッカをひどく叱責し、「犬の診断にお金がかかった。おまえの親を訴えてやる」と怒りを露わにしたのです。

 

レベッカは2度目に嚙まれた傷が治る週末までずっと家の中に留まり、翌週の月曜に登校しようとしましたが、歩道まで出たところで気分が悪くなり、家に帰りました。

火曜には玄関先で具合が悪くなり、水曜には家を出ようとしなくなりました。

 

その数週間後、保護用ブランケットにすっぽり包まれた状態でレベッカがエリクソンの診察に連れてこられたときは、外出することを考えただけで嘔吐や下痢、失禁、頻脈、気絶など、激しい症状が出るようになっていました。

 

エリクソンが最初にしたのは、レベッカの恐怖とそれに結びついた症状を正当化することでした。

 

「きみがとっても強くて健康な女の子であることに、わたしはビックリしています」

 

「きみが思ったほど、ひどい状態になっていないことに、わたしはビックリしています」

 

「きみの心臓はもっとドキドキしたかと思ったのに、そうでないことにビックリしています」

 

「きみがとっても強くて健康で、もっと長く気絶していたかと思ったのに、もっと何度も下痢をしたかと思ったのに、そうでないことにわたしはビックリしています」

 

とエリクソンは驚いて見せ、信頼感と安全感を根付かせるアプローチをしたのです。

 

のちにエリクソンはこのアプローチについて「この子には、この子の身体と行動を高く評価する言葉を与える必要があった」といっています。

 

レベッカは、エリクソンが彼女の強さを褒めるのをじっと座って聴いていましたが、やがて自分自身についてこれまでとは異なる考えをするようになっていきました。

 

彼女は笑うようになり、冗談をいうようになり、エリクソンの犬に会いたがるようにさえなっていきました。

エリクソンは自分の犬について、人に害を与えないバセット・ハウンドだと説明していたのです。

 

レベッカはその後6回やって来ましたが、それ以上のセラピーは不要でした。

 

癒しとは、回復過程における内的リソースの活性化です。

 

身体の良い点を見極め、それを肯定的に捉えるように励ますことで、当人の中にある肯定的な属性を強調し、それを徐々に増強させていくプロセスで、エリクソンはレベッカを回復に導いたのです。

 

ー「ミルトン・エリクソン心理療法<レジリエンス>を育てる」ーより

 

外出することを考えただけで嘔吐や下痢、失禁、頻脈、気絶など、激しい症状が出るようになって」いたレベッカは、「外に出ない」という方針が彼女の身を包んでいた保護ブランケットのように安心を保証してくれると思っていたのでしょう。

 

でも、それで恐怖が解消するかといえば、かえって大きくなるばかりです。

最初は「犬から自分を守るため」「噛まれた傷が治るまで」家に籠るのは正しいことと思ったでしょう。

 

でも、その先には、もっと恐ろしいものが待っていたのです。

それは、「誰でも普通にできていることを、いつも普通にできていたことを、できない自分を責める厳しい自分(エゴ)」です。

 

エゴは「生き残り」を担当する意識なので、人並みにできないことを自分に発見すると即座に「このままではこの先現実世界で生き残っていけない。早急に何とかせよ!」と発破をかけるのです。

 

レベッカの顕在意識は、噛み傷が癒えたらすぐ登校しようと考えました。

「他の子たちだって恐い犬が放たれている外を普通に歩いているのだから。わたしだって以前はそうしていた」と考え、潜在意識や身体の恐怖を無視して登校を試みたのでしょう。

 

ところが、恐い犬がいるわけでもないのに、歩道に出ただけで身体はパニック状態になり、まるで自分の心や身体が自分のものでなくなったかのような抵抗に遭ったのです。

 

そのときレベッカは、犬よりも自身の心と身体が起こすショック症状に恐れを感じたことでしょう。

その症状から自分を守るためには、「外出しない」と決めることしかできませんでした。

 

でも、自分を守るために「外出しない」と決めると、できない自分を責める厳しい自分(エゴ)が「このままではいけない!外に出られくなったら生き残れないぞ!」と警告してくるのです。

この葛藤がレベッカに、「外出」を考えだけで気絶するほどのショック症状を招いていたのです。

 

これは、一見噛みつく恐い犬が原因のように見えますが、こんな心的外傷を負ったレベッカは、たとえ犬の飼い主が謝罪し、もう二度と放した状態にはしないと約束したとしても、元の状態には戻れません。

 

ほんとうの原因は、彼女の中の顕在意識と潜在意識の信頼関係が壊れたことにあるからです。

もう、彼女の顕在意識の指令に彼女の潜在意識と身体は従わないばかりか、拒否反応を起こす状態に陥っていたのです。

 

身体の不調は、見えない潜在意識からの「わたしの思いをわかって!!」というメッセージです。

自身の顕在意識の指令に従えなくなってしまった、迷子になった潜在意識の悲鳴です。

 

エリクソンはこんな状態のレベッカの潜在意識に向かって、

「きみがとっても強くて健康で、もっと長く気絶していたかと思ったのに、もっと何度も下痢をしたかと思ったのに、そうでないことにわたしはビックリしています」

と、彼女のその状態も含めて全肯定しています。

 

レベッカの潜在意識が「怖くて何もできなくなってしまったわたしの気持ちをわかって!!」という彼女の顕在意識に向けたサインに対し、エリクソンが全部受け止めて、代わりに答えたのです。

 

「あんなに怖い目に遭ったから、もっとひどい症状が出るかと思ったけれど、レベッカが強くて健康だから、この程度で済んだのだね。驚くほど頑張ってくれた!!」というメッセージが、彼女の潜在意識に届いたのです。

 

だから、レベッカの潜在意識は、彼女の思いをわかってくれたエリクソンの言葉を信頼するようになりました。

 

自身の顕在意識の指令に従えなくても、今の状態を認めてくれたエリクソンの指示を頼りにして、とりあえず、レベッカの潜在意識は迷子の状態から救われたのです。

 

そして、レベッカは外出できない、外出のことを考えただけでショック症状が出てしまう自分の身体の反応を「うまくいっている」「役に立っている」と全肯定で認めるようになりましたです。

 

エリクソンの言葉により、レベッカの潜在意識は思いが伝わってショック症状を出す必要性がなくなったのと、彼女の顕在意識も彼女の身体と潜在意識の強さと健康さを認めたので、もう、エゴの警告も意味をなさなくなったのです。

 

レベッカが冗談をいい、笑うようになったときは、すでに彼女の顕在意識と潜在意識が仲直りが始まったサインです。

たとえ、学校へ行く状態になっていなくても、会話を楽しみ笑うようになっている段階は、潜在意識が心を開いている状態です。

 

だから、エリクソンは自身の飼い犬の話を彼女にしたのでしょう。

レベッカに犬の恐怖を手放す準備ができていたので、彼女はエリクソンの犬に会いたがったのです。

 

エリクソンに現状を全肯定で認められる前のレベッカは、「外出できない苦しみ」が永遠に続くのかという思いに苛まれていたことでしょう。

 

けれども、問題解決の糸口は、犬に出会わないようにすることではなく、自分のそのままの状態を全部受け入れ、認めてあげることにありました。彼女は、6回のセラピーで自分のありままを肯定する技を身につけて、また元気に学校に通えるようになりました。

 

エゴの囁きに負けて自分を責めていたのでは、レジリエンス(挫折や絶望から立ち上がる回復力)は育ちません。

 

7才の少女でも、自分のそのままの状態を全部受け入れ、認めてあげることでレジリエンスが働き、トラウマから回復する力を得たのです。

 

挫折や絶望に打ちのめされたときこそ、自分のそのままの状態を全部受け入れ、認めてあげることが必要です。

そうするだけでこの少女のようなレジリエンスのパワーを得ることができるのですから。

 

次回は「悪魔を出し抜け」の解説を予定しています。

 

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最後まで読んでくださり、ありがとうございます。