こんにちは、リブラです。今回はミルトン・エリクソンの本を題材に、潜在意識の世界を解説してこうと思います。

 

*もし殴ったらどうしますか?

 

エリクソンの娘ベティ・アリスが教師として学校との契約書にサインしたとき、理事会役員たちはホッとため息をつきました。彼女はそれがどういう意味なのか不思議に思いました。

 

でも、その謎はすぐ解けました。ベティが教えるクラスの生徒は15歳の非行少年たちで、学校をやめられる16歳の誕生日を心待ちにしていました。

 

その中のひとりは、身長が185センチ、体重が100キロで、30回の補導と警察官を2度痛めつけた経歴がありました。彼は、前の学期に「もし、俺があんたを殴ったら、あんたはどうする?」と問いかけ、その質問に答えた女性教師を殴り飛ばして入院させてしまったのです。

 

ベティはその情報を知って、独りで考えました。「いつ、あのかわいそうな少年が絡んでくるかしら。わたしは身長が155センチで体重46キロよ」。

 

それから間もなく、ベティは公園でその巨人のような15歳の少年に遭遇しました。彼は「もし俺が先生を殴ったら、どうする?」と尋ねました。

 

ベティはすばやくその少年の方に2歩進んで、怒鳴りました。「絶対、殺してやる!早くそこに座りなさい!」

 

彼はそんな小柄な人からそんな大きな怒鳴り声を聞くとは予期せず、驚いて腰を下ろしました。彼は不思議そうな表情でベティのお叱りを素直に受けました。

 

そのとき少年は「誰にも彼女にひどいことはさせないぞ」と決意したそうです。それ以来、彼はいつもベティを守りました。

 

エリクソンはこのエピソードで、ベティの対応と少年のボディーガードぶりがとても見事だったと話しました。

 

そして、「予期せぬことが、いつも助けてくれます。予期できることをしてはいけません」とエリクソンらしい格言を残しました。

 

相手をびっくりさせることは、強力な武器になります。驚いている間は思考停止状態になるからです。

身長185センチ体重100キロの少年は、まさか教師の口から「絶対、殺してやる!」なんて言葉が出てくると予期していなかったでしょう。

 

だから「早くそこに座りなさい!」という言葉に素直に従ってしまったのです。身長155センチの女性教師から見おろされ、真剣に𠮟られたとき、驚きで反抗心も失せ、ベティの愛を受けとれたのでしょう。

 

少年がベティに怒鳴りつけられたのにも関わらず、不思議そうな表情を浮かべてたのがその証拠です。彼は怖れも怒りも、そのとき感じてはいなかったのです。

 

それはベティがこの少年を怖れていなかったからです。彼女は病院送りにされた教師の話を知って、彼を「かわいそうな少年」と思いました。

 

きっと彼の体格や振る舞いや補導歴から、粗暴で凶悪な先入観のレッテルが貼られ、誰も「かわいそうな15歳の少年」とは見ていなかったのでしょう。

 

わたしたちが人前でつい、「いい人」を演じてしまう傾向があるのと同じで、15歳の未熟な少年は「粗暴で凶悪な子」を期待されたら、そのキャラを演じてしまうのです。

 

その少年は「粗暴で凶悪な子」以外の注目が欲しかったのだと思います。でも、「粗暴で凶悪な子」しかやったことがないからどうしていいかわからなかった。だから「もし俺が先生を殴ったら、どうする?」と尋ねたのでしょう。

 

殴られた教師は彼を怖れ、「やめなさい」としか言わなかったのでしょう。それでは少年の求めていた問いの答えにはなりません。その少年がそんな問いかけをする真意をわかっていたのは、ベティだけだったのです。

 

そして、ベティは自発性を尊重するエリクソンの娘です。ベティはその問いかけに答えは与えず、彼自身に考えさせたのでした。

 

身長155センチの小柄な女性が「もし、殴ったら絶対殺す!」と本気で彼と向き合い、「そこに座りなさい!」と彼だけに注目して真剣に叱る姿を見て、その少年は「粗暴で凶悪な子」以外の自分のイメージを描くことができたのだと思います。

 

なぜなら、彼はその時点では、ベティを殴っていないし、おとなしく座って教師の言うことを聞いている生徒になっていたのですから。「粗暴で凶悪な子」でなく、おとなしく教師の言うこと聞く「良い子」を自然に彼はやっていたのです!

 

きっとその少年は「俺だって、普通に『良い子』やれるじゃん。しかも、先生から真剣な眼差しを向けられているし、いい気分だ!」と思ったのでしょう。

 

「良い子」のセルフイメージが自然に浮かんで、いい気分に浸れると、「良い子」キャラがやりそうなことが自然に浮かんできます。

 

お母さんに褒められると進んでお手伝いを買って出る子どものように、彼はベティのボディーガードをして粗暴な非行少年たちから守ってやろうと思いついたのでしょう。そうすれば、いつでもベティからの感謝と注目が得られます。

 

「粗暴で凶悪な子」として注目されていた頃より、ボディーガード役をすることになってからの方が彼は自分らしい存在感を感じたことでしょう。

 

「予期せぬことが、いつも助けてくれます。予期できることをしてはいけません」とこのエピソードの締めくくりにエリクソンが言うように、予期できることをしていても何も変化はなく、成長もありません。

 

少年の問いに予想通りの受け答えだけを教師がしていたら、その少年は「粗暴で凶悪な子」ままだったでしょう。

でも、ベティが予期せぬ言動と行動をとったから、その少年の中の「ボディーガードキャラ」が目覚め、蛹から蝶が羽化するように現れたのです。

 

これはわたしたちのセルフイメージにも言えることです。自分のことを心の中で「ダメなヤツ!」とか「ついていないヤツ!」とか「いじめられっ子」とか思っていると、自然にそのキャラがやりそうな言動や行動をして、そのキャラに相応しい現象を引き寄せてしまいます。

 

心の中ぐらいは自分の王国で輝く太陽のイメージを持っておきましょう。そのイメージが定着してその気分に浸れれば、自分らしさを太陽のように輝かせる人生が現実化されます。

 

次回は「悪魔を出し抜け」の解説を予定しています。

 

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