こんにちは、リブラです。今回はミルトン・エリクソンの本を題材に、潜在意識の世界を解説してこうと思います。

 

*ドロレス

 

6月頃、エリクソンのもとに息子のバートから手紙が届き、次のような言葉で締めくくられていました。

「僕はこの手紙の封をしたら、ドロレスに会わなければならない

エリクソンも妻もバートの秘密について詮索しないことにしていたので、「ドロレスが誰か?」とは尋ねることはありませんでした。

 

それでも、バートは、それ以降手紙の中に「ドロレスと夕食に行きました」とか「ドロレスの所にいくところです」とか「ドロレスの気に入りそうなソックスを買いました」などの1行を必ず書いていました。彼は同様の手紙を祖父母にも出していました。

 

8月になるとバートは「ドロレスの写真を何枚か送るつもりです」と書いてきたので、エリクソンはそれを待っていました。

 

9月には「お祖父さんとお祖母さんがドロレスを気に入ってくれるとよいのですが。お父さんはきっと気に入るに違いありません。感謝祭(11月)の夕食のときにドロレスと訪ねてみます」と書いてきました。

 

そしてバートは、感謝祭の日の午前1時に独りで現れました。バートは焦点の定まらないような目をして内股で立ち、両手をだらりと下げて薄笑いを浮かべていました。エリクソンはイライラして平手打ちしたくなるようなだらしない姿だと思いました。

 

バートが「彼女を飛行機に乗せるのに苦労したよ。彼女は裸なんだ。外にいるよ!」というと、母(エリクソンの妻)はそれを本気に捉えて「バスローブを持ってくるわ」と言い、祖父は「その女の子を連れて入りなさい!」と言いました。

 

バートは大きな重そうな箱を抱えて「彼女を飛行機に乗せるにはこうするしかなかったんだ。ちゃんと服をきてないんだもの」と言いながら家に入ってきました。

 

箱を開けると中から出てきたのは、ドロレスと名づけられた七面鳥とガチョウでした。お祖父さんとお祖母さんはドロレスが気に入りました。

 

エリクソンはこの贈りものが6月から仕組まれていたことに気づき、「エリクソン家の人間を信用してはいけない」と思いました。

 

ー「私の声はあなたとともに」ーより

 

けして子どもに暴力を振わない教育を心掛けてきたエリクソンでも、このバートの悪ふざけにはイライラして平手打ちしたくなる気分にさせられたようです。

 

心のコントロールに長け、慎重なやぎ座にアセンダントも土星も火星も木星もキロンもあり、遊び心がわかるふたご座に冥王星を持っているエリクソンでも、今回のバートのやり方には怒りを覚え、一杯食わされそうになったのです(このときエリクソンが本気で怒ってしまったら、バートの方が1枚上ということになります)。

 

でも、お家芸のダブルバインド効果を知っているエリクソンは、バートが彼女のいる「思わせぶり」な伏線を5か月も前から仕込んで置いて、感謝祭当日でがっかりのどん底に突き落としてからの、七面鳥とガチョウ(おそらくは晩餐用)のプレゼントでサプライズな喜びを家族に与えたことを、評価しないではいられないのです。

 

だから、このエリクソン家の笑い話を後輩の医師たちに話したのでしょう。もしかしたら、ダブルバインドの悪用事例として話したのかもしれません。最後にお祖父さんもお祖母さんもプレゼントを気に入ってくれたからよかったようなものの、女の子が裸で外にいると本気にしてバスローブを持って来ようとした母親や慌てて家に入れるように言ったお祖父さんの気持ちを考えたら、ちょっとやり過ぎです。

 

このエピソードは「怒りの発火から鎮火までのプロセス」として客観視するとすごくわかりやすいです。催眠療法の達人で精神科医のエリクソンを怒らせそうにした事例ですから。

 

まず、バートがドロレスとのことを手紙に書いていた時点では、エリクソンは深く詮索せずスルーしていました。それが「ドロレスの写真を送るつもりです」という言葉はほんとうにして待ったのです。エリクソンは期待してしまったのです。

 

この期待がくせ者なのです!怒りの火つけ役です!わたしたち人類は妄想を共有して徒党を組み進化を遂げてきた生き物なのです。すてきな妄想のイメージが広がるとついその現象が現実になることを期待し、期待と同時に脳内に快楽物質(ドーパミン)が分泌されてしまうのです。

 

すると期待と関連する情報を得る度に益々妄想が広がり、ドーパミンの効果でワクワクしてくるのです。

エリクソンは現実性の強いやぎ座アセンダントキャラですから、実際にドロレスの写真を送ると言うのならほんとうに息子に彼女ができたのかもしれない。近いうちに会えるのかもしれないとワクワクしてしまったのでしょう。

 

こうなると、9月のバートからの手紙の「お父さんはきっと気に入るに違いありません。感謝祭(11月)の夕食のときにドロレスと訪ねてみます」を読んで、もう、息子の彼女を家族のように加えて感謝祭を祝う妄想がエリクソンの頭に拡がり、11月が楽しみになってしまうわけです。バートの帰宅を指折り数えて、いったいどんな彼女なんだろう?と想像していたことでしょう。

 

そして、感謝祭の当日、それも午前1時の真夜中にバートがおどけた表情で独りで現れたときには、「してやられた!」とエリクソンは思ったことでしょう。ここで快楽物質のドーパミンの分泌はストップします。

 

「彼女のドロレスなんていなかったんだ!」とわかると、期待は絶望に変わります。新しい家族になるかもしれないドロレスと楽しむ感謝祭の夢は無残に消えて、勝ち誇ったように薄笑いを浮かべる息子の顔を見ていると怒りがこみ上げノルアドレナリンが分泌されて「奴を平手打ちしろ!」とけしかけます。

 

一方バートはまだドロレスが裸で外にいるとか言うので、妻はバスローブを取りに走る事態になり、慎重なやぎ座アセンダントのエリクソンは、この先バートが何をやらかそうとしているのか最後まで見てから、教育的指導しようと考えいたはずです。

 

呼吸を整え観察モードになると冷静になれますから、ここで怒りを助長するノルアドレナリンの分泌はストップしたことでしょう。そして、バートがまだ「ドロレス」のことを言いながらも、大きなプレゼントの箱を持ってきたので、エリクソンはいつものバートの悪い癖だなと諦め、さて、本気にしている母や祖父母にどう謝るのか黙って成り行き見守っていたのでしょう。

 

箱の中から感謝祭の晩餐の食材にうってつけ七面鳥とガチョウが出てきたとき、これでみんなの腹の虫は収まるだろうとほっとして、穏やかな気分を演出するセロトニンが分泌されたことでしょう。

 

さらに、バートがこの瞬間のためだけに5か月も前から手紙を書いて仕込みをしていたことを思い出し、勝ってに期待して怒りを感じた後プレゼントにほっとする感情の乱高下で、エリクソンは息子の計略にハマったことに感動すら覚えていたのではないかと思います。思い出に残る家族の感謝祭として、記憶を辿る度βエンドルフィンが分泌されて良い気分になったことでしょう。

 

期待をしてそれが裏切られたり、取り消されたりすると、快感をもたらす妄想が消失してしまうので、その穴埋めのために人は怒ってしまうのでしょう。期待したくなったら、妄想して楽しんだ後は手放しましょう。期待通りの現実なんておもしろくないではないですか。

 

それに、妄想を楽しむことを空しいと考えるのは、もったいないことです。潜在意識にとったら、妄想のイメージは夢のオーダーです。潜在意識が働きかけるタイミングが揃ったときには、神羅万象・万物も連動してその妄想の具現化が起こります。

 

羽の無い人類が、空の旅ができるようになったり、海が渡れるようになったのも、空を飛べたらいいなあ、海を渡れたらいいなあ、という妄想を広げ、インスピレーションやアイディアを降ろしてそのイメージの具現化を試みたからです。

 

次回は「悪魔を出し抜け!」の解説を予定しています。

 

わたしのサロン、リブラライブラリーではあなたの心のしくみをホロスコープで解説し、心の制限、葛藤が引き寄せる現実問題にセルフヘルプで立ち向かえるようサポートします。

 

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新メニュー(月の欲求・土星の制限の観念書き換えワーク、キローンの苦手意識を強味に変えるワーク)が加わりました。

 

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