こんにちは、リブラです。今回はミルトン・エリクソンの本を題材に、潜在意識の世界を解説してこうと思います。
*ハーバート
エリクソンは州立病院に赴任したとき、ハーバートという1年近く入院している男性患者を受け持つことになりました。ハーバートはその精神病院に入院する以前は、体重240ポンド(約109kg)の肉体労働者で、働くかトランプをして過ごしていました。
彼はひどい抑うつ状態になり、体重が80ポンド(36kg)に減って入院することになりましたが、入院しても体重はなかなか増えませんでした。
エリクソンがハーバートを自分の患者として引き継ぐ時点で、彼は4000カロリーの経管(経腸)栄養を施されていましたが、体重増加は見られませんでした。エリクソンは体重が80ポンド(36kg)の人なら経管栄養を2500カロリーで十分と考え、減らしました。
エリクソンが管に栄養を入れたとき、ハーバートは「あんたも他の医者と同じように管に栄養を入れるふりをしてケチなトリックをするのかね?あんたたちは管を俺の鼻に入れて経管栄養したと、俺に言う。だが、実際にはしていない。
だって俺には胃袋がないからな」と言いました。
エリクソンはそれから1週間、ハーバートに経管栄養をする度に「来週の月曜の朝、あなたは胃があることを証明してくれるでしょう」と言いました。
その月曜の朝、エリクソンはハーバートの経管栄養(ミルク・クリーム・生卵・重曹・酢・生鱈の肝油)をするときに、通常よりたくさんの空気を押し込みました。そして管を抜き、側に立って待ちました。
するとハーバートはげっぷをして「腐った魚だ」と言いました。げっぷは胃があることの証明なので、ハーバートはそれを認めざるを得ませんでした。
ハーバートは毎晩立ったまま眠っていました。ベッドに押さえつけられて眠らされることを怖れていたのです。それでエリクソンは1週間ハーバートに「君は横になって眠ることを証明してくれるでしょう」と言い続けました。
それに対してハーバートは「そりゃ、身のほど知らずの妄想だ」と言ってました。
エリクソンは夜にハーバートを水療法施設に連れていきました。そこにはハンモックを備えた浴槽があります。身体にワセリンを塗って横にして浴槽に蓋をしますが、頭だけが蓋の上に出るようになっています。そこに体温と同じ温度に調整された湯が身体の表面に流れ続けるシステムになっています。
翌朝、エリクソンがハーバートを起こしました。エリクソンが「君が横になって眠れることを証明してくれるだろうと、わたしはいいましたよね?」というと、「あんたはたいしたうぬぼれやだ」と彼は答えました。
ハーバートの体重が110ポンド(50kg)まで回復すると、エリクソンは「あなたに経管栄養するのは飽きてきました。来週の月曜あなたは経管栄養食を『飲む』ようになるでしょう」と言いました。ハーバートは「わたしは飲み込めないんだ」と答えました。
エリクソンは、日曜の夜の経管栄養にたっぷり塩を加えてハーバートに与え、彼がベッドに入ると1晩そこに拘束し、翌朝解放しました。1晩中喉の渇きに苦しんだハーバートは、「食堂のドアを開けろ!水が欲しい!ミルクが欲しい」と訴え、それらを飲みました。
エリクソンに会うと、ハーバートは「賢くやったと思っているんだろう?」と言いました。
それからハーバートはミルクやスープは飲めるようになりましたが、固形物は飲み込めないと言い続けました。エリクソンは彼の体重が115ポンド(約52kg)まで増えたとき、「来週、あなたは固形物を飲み込むでしょう」と予告しました。
エリクソンは、人の皿の食べ物ばかり奪おうとする患者2人をハーバートの両脇に座らせて、一緒に食事のテーブルに着かせました。ハーバートは自分の分を取られまいとして必死に食べ物を飲み込みました。
エリクソンが「食事は美味しかったか」と尋ねると、「気に入ったわけでなく、仕方なく食べたのだ。賢くやったと思っているな?」とハーバートは答えました。
ハーバートの体重が120ポンド(約54kg)に増えたとき、エリクソンが「あなたは固形物を食べて体重が増えてきています」と言うと、彼は「食欲はないんだ」と答えました。
そこでエリクソンは「病院の農場に昼食を持たずに出かけて、そこの樫の木を切り倒し薪を作って欲しい。そうすれば、食欲が出るでしょう」とハーバートに言いました。
エリクソンは大食漢の女性コックのウォルシュさんに「朝食と昼食を抜いて、夕食を好きなだけ楽しめるようにいつもの2倍の量の食事を用意してください」と頼みました。
ハーバートが農場から帰ってくると、大量に美味しそうな食べ物が並んだテーブルで、ウォルシュさんが食事にかぶりついているのが目に止まりました。ハーバートは空腹が我慢できなくなり、とうとう彼女に「少しもらっていいか?」と尋ね、分けてもらって食べました。
その夜、エリクソンに会うとハーバートは「あんたはほんとうに賢くやったよ」と言いました。するとエリクソンは「あなたにしてあげたいことが、もう一つあります。あなたは1年以上トランプをしていませんが、今夜することになるでしょう」
エリクソンは精神的に荒廃した患者4人にトランプをさせているところに2人の看護師を付き添わせ、ハーバートを連れてきました。4人の患者はカードを投げつけたり、「わたしが勝った。フルハウスだ」とか、「わたしが上がりだ」とかそれぞれが思い思いに「独りトランプゲーム」を続けていました。
ハーバートはそれを見て「奴らがトランプするのを見るのはもう我慢がならない。ここからよそへやってくれるなら、あんたたちとポーカーしてもいい」と看護師2人に言いました。
エリクソンが病棟に行くと、ハーバートはトランプをしていました。彼は「またあんたの勝ちだ」と言いました。
エリクソンは「あなたが勝ったんだ」と答えました。
その数か月後、ハーバートは退院しました。彼の体重は180ポンド(約82kg)まで回復し、毎日働いていました。
ー「私の声はあなたとともに」ーより
109kgの肉体労働者が、36kgにまで体重減を少招くとは、どんなに抑うつ状態がハーバートを苦しめていたのかがうかがい知れます。
彼は好きだったトランプもしなくなり、食べられなくなり、働けなくなり、弱って入院すると経管栄養を流し込むから水分も自分の口から摂らなくなり、横になって眠れなくなり・・と、かつて普通にできたことがどんどんできなくなっていったのでしょう。
「できないから、やらない」、「失敗しそうなことは、はじめからチャレンジしない」という合理性重視の保守的な姿勢をわたしたちはとってしまいがちです。そこに陥ると、ハーバートのように狭い制限の世界に閉じこめられ、心や身体の自由を失う危険性があります。合理性重視の保守的な姿勢は、意識の視野狭窄を招くリスクがあることを忘れてはいけません。
とくに2008年から滞在中のやぎ座冥王星の影響で合理性重視の保守的な考え方がすっかり定着し、枠外に飛び出すことよりも、枠内の制限に沿ってうまく現実を乗り切る生き方が無意識レベルの主流になっているように感じます。
今年~来年にかけてのやぎ座冥王星~みずがめ座冥王星の移行期に、わたしたちは意識の拡大でみずがめ座の枠越えを果たすべくリハビリが必要なのかもしれません。
やぎ座冥王星は現実の制限の極限を突きつけ、その限界の枠をみずがめ座冥王星が意識変革を促し超えさせるのです。やぎ座冥王星で制限の現実に慣れてちんまり収まってしまうわたしたちは一歩間違えば、食欲も安眠も娯楽も失ったハーバートのような状況にいるのかもしれません。
そんなときエリクソンがハーバートを回復させたプロセスは、現実の制限からの枠越えの参考になると思います。
やぎ座アセンダントで、12室(潜在意識)に4天体もやぎ座に星を持つエリクソンだから、やぎ座が作る制限の越え方をよくわきまえているのです。
やぎ座は「今、あるもの」を有効に利用します。有るものを無いとは言わせません。
ハーバートは「げっぷ」を実感することで、自分に胃が在ることを認めました。「胃が在ること」を認識することで、食べ物が消化され吸収されることを信じられるのです。
「自分が既に持っている知識や経験や人間関係や環境などを、しっかり認識し、それが働くことを信頼する」この設定を自らしないとやぎ座の具現化は働きません。
やぎ座は極めて現実的で合理主義だからです。今持っていないものを当てにしたり、手に入るか入らないか疑わしいものにエネルギーを注ぐ気持ちにはならないのです。
ですから、やぎ座冥王星滞在中に枠越えをしようというときは、まず、「自分が既に持っている知識や経験や人間関係や環境など」を無いとは言わず、「在る」ものから認めていくことが大切です。「在る」と認めれば、それを機能させようと努力する意欲が出るからです。
ハーバートは、横になって眠れない、飲めない、食べられない、食欲がない、トランプする気になれない・・・と「ない」を連呼していました。
それに対してエリクソンがしたことは、横になる姿勢で眠気を誘う状態、喉が渇く状態、自分の食べ物が奪わそうになる状況、空腹になる状態、ゲームを楽しみたくなる状態を作り、本来、ハーバートができることを引き出す体験をさせたのです。
冥王星は危機や限界を突きつけて、火事場の底力のような潜在能力を引き出す役割の天体です。やぎ座に冥王星滞在中に感じる現実の危機や限界のある場所は、その下に発掘を待つ潜在能力が眠っているところでもあるのです。
その潜在能力の目覚めで、古い自分が死に新しい自分に生まれ変わります。新しい自分に用意されるのは、制限の枠を超えた自由の広がるみずがめ座冥王星の可能性です。
エリクソンは、ハーバートの体重の増加を目安にして、1つの問題を乗り越えると次の問題にと、けして欲張らず、1歩1歩確実にハーバートの持っていた機能を使えるように促がしたのです。
心の中で「ない」の囁きが続いたときは、ほんとうにその機能が自分に備わっていないのか?過去を振り返って考えみましょう。
過去1度でもその機能が働いた記憶があるなら、胃があるのにないと思い込んでいたハーバートのような現象が起きています。
「ない」から「ある」と認識を改めて使う試みをしてみましょう。
持っているものを無駄なく有効活用する試みなら、現在滞在中のやぎ座冥王星がもろ手を挙げて応援します。
冥王星は「惜しみなく与え、惜しみなく奪う」天体です。やぎ座滞在中にやぎ座の流儀に合う使い方をするならば、「惜しみなく与え」られ、潜在能力が目覚めて、新しい自分に生まれ変われます。
次回はエリクソンの「わたしの声はあなたとともに」の解説を予定しています。
わたしのサロン、リブラライブラリーではあなたの心のしくみをホロスコープで解説し、心の制限、葛藤が引き寄せる現実問題にセルフヘルプで立ち向かえるようサポートします。
詳しくはこちら をご覧ください。
新メニュー(月の欲求・土星の制限の観念書き換えワーク、キローンの苦手意識を強味に変えるワーク)が加わりました。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。