こんにちは、リブラです。今回はミルトン・エリクソンの本を題材に、潜在意識の世界を解説してこうと思います。
*乾せん
女性「あなたに診てもらうために、何か月ものあいだ勇気を奮い起こそうとしてきました。昨夜は絨毯の上のフケを見て、今朝はベッドの中のフケを見て、『精神科医のところへ行かなくては。この乾せんを、少なくとも精神科医がこれ以上悪くしないだろう』と思ったのです」
エリクソン「あなたは乾せんに罹っているのですね」
女性「裸になるのが嫌いなんです。わたしの腕や首を見ればわかるでしょう。どこでもフケを落としてしまうのです」
エリクソン「乾せんを見せてください。わたしを殺したり、あなたが死ぬようなものでないでしょう」
女性は患部を見せてくれ、エリクソンは注意深く観察しました。
エリクソン「乾せんは、あなたが思っている3分の1もないですよ」
女性「わたしにはこんなにひどい乾せんが見えるのに、あなたは3分の1しかないというのですか」
エリクソン「そのとおりです。あなたには多くの『思い』があります。ほんの少しの乾せんとたくさんの『思い』です。
あなたは生きているのだから、いろいろな思いがあるでしょう。
その多くの思いが、腕や身体に現れます。それをあなたは『乾せん』と呼んできたのです。
だからあなたの思っている3分の1もないのです」
女性「どのくらいお支払いすればいいでしょうか?もう、二度とお会いすることはないでしょう」
2週間後、彼女はエリクソンに電話して、「謝りたい」と言ってきました。エリクソンの正しい判断に感謝をしていました。
彼女は「もう、フケは出なくなり、乾せんも腕に小さな斑点がいくつかある程度になった」と告げました。そして、この2週間はエリクソンに腹を立てどおしだったと打ち明けたのでした。
ー「私の声はあなたとともに」ーより
昔から「病は気から」という諺があります。現代では「精神免疫学」の研究が進み、笑いや感動が白血球やNK細胞の活性を上げることが認められています。心理学的には「信じる心」が治癒につながるプラシーボ効果が知られています。
「病気と思い(感情)」に相関関係があることを、わたしたちは情報としても感覚的にも、ほんとうは気づいているのだと思います。
しかし、わたしたちは生まれたときから「見えるもの第1主義」の社会の中で育つので、「見えるもの」に重きを置き、「見えないもの」をないがしろにする傾向があります。
それゆえ、今回の女性のように「フケが落ちているのを見て、精神科医のところに行こう」という動機が生まれるのです。
皮膚科医ではなく精神科医を選んでいる時点で、この女性の潜在意識は、乾せんの原因に思い(感情)が深く関わっているのを知っていたのです。
けれどもエリクソンが、見える症状としての乾せんが彼女の思っている3分の1もないと指摘すると、怒って帰ってしまうのでした。彼女が乾せんの患部を直視していないのは、フケの量で症状の悪化を懸念したり、患部を見せるのを拒む様子から伺えます。
また、「この乾せんを、少なくとも精神科医がこれ以上悪くしないだろう」という期待も他人任せな発想です。
エリクソンは、そのような彼女の身体や病気に対する態度から、思い(感情)を十分感じて表現していないことに病気の原因があると確信したのでしょう。
思い(感情)は精神世界~意識界~物質界(身体)で流通するコミュニケーションツール(言語)です。
確かにわたしたちの身体は常に様々なことを感覚で知らせてくれます。それが思い(感情)を伴っているのかいないのかで、わたしたちの意識の注目度は大きく変わります。
「フケが落ちている」という現象を単に絨毯とベッドで見つけただけなら、彼女は医者のところへ行こうなんて考えなかったでしょう。でも、そこに「乾せんが悪化しているのかもしれない。これ以上広がったらどうしよう」という思い=怖れの感情を伴ったからエリクソンのもとに来る行動をとったのです。
このように思い(感情)が伴うと身体の意図が意識に伝わるのです。また、その逆もあります。怖いことを考えてヒヤッとすると心臓がドキドキことがありますよね。思考が感情を誘発して身体がそれに反応しているのです。
そして、喜びの感情は、精神世界(魂意識)~意識界(エゴ)~物質界(身体)共通で伝わります。
魂意識は喜びの波動しか知らず、様々な感情を体験したくて人間の転生をしているので、ネガティブな感情は特に興味深々に観察します。ですから、発生した感情を抑え込もうとしても消えることはなく、どこかで表現して帳尻を合わせることになります。
思い(感情)を直に受容できれば、魂意識はそれを十分観察できるので気づきを得ることができるでしょう。
今回の女性が2週間腹を立てどおしだったことは、彼女の意識界(エゴ)の怒りを彼女の精神世界(魂意識)は存分に観察できて目的が達せらたのです。だから、身体が乾せんで怒りを表現する必要はなくなったのです。
思い(感情)を直に受容して気づくことが苦手なこの女性は、2週間立腹した後フケ出なくなったことで、
「あなたにはほんの少しの乾せんとたくさんの『思い』があります。その多くの思いが、腕や身体に現れます。それをあなたは『乾せん』と呼んできたのです」とエリクソンが言った意味を理解したのです。
この女性は「乾せん」というフレームを通して思い(怒り)を表現していたのを撤廃し、「もう、二度とお会いすることはないでしょう」と直接自身の怒りを表現できたとき、既にリフレーミングに成功していたのです。
だから、2週間も怒りを感じて溜まった感情を解放し、症状が改善したときには素直にエリクソンに謝り、感謝をする感情表現ができたのです。
わたしたちの意識界(エゴ)は、ネガティブな思い(感情)を感じると早くそれから逃れようと外に表現するか、蓋をして抑え込んだりします。外に表現するならば、思い(感情)は溜め込まれないので一時的にはスッキリします。
蓋して抑え込むと身体に溜め込まれ、いずれ病気の症状となって表現されます。
でも、思い(感情)を感じるほんとうの目的が精神世界(魂意識)の観察にあるとわかれば、内観する絶好のチャンスと思えるでしょう。
ネガティブな思い(感情)でのたうちまわっている意識界(エゴ)を観察しているときのあなたは、魂意識(「大いなる源」の分霊)としてニュートラルな精神世界(俯瞰)視点でその状況を見渡すことができるのです。
そして、魂意識が十分観察することで、そのネガティブな思い(感情)の苦しみを終わらせることができるのです。パターンを繰り返すこともなくなります。魂意識の興味が失せて、そのネガティブな思い(感情)を呼ぶイベントを用意しなくなるからです。
こうした内観を体験すると、ネガティブな感情は忌むべきものではなく、自身の潜在意識の奥深くダイナミックな世界を知ることとなるのです。意識の95%を占める潜在意識のパワーを味方につけたいのなら、試してみる価値は大いにあります。
次回は「老子が教えるタオの哲学」の解説を予定しています。
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