こんにちは、リブラです。今回はミルトン・エリクソンの本を題材に、潜在意識の世界を解説してこうと思います。
*罪
ある日エリクソンの診察室に、映画館にも雑貨店にも入れない若い女性患者が訪れました。彼女は幼い頃より、映画館は誘惑を受ける罪深い場所だと教え込まれ、お酒を口にしたりタバコを吸ったりすると、神から死を与えられると信じていました。
彼女はお酒やタバコが置いてある雑貨店に入るだけでも、神から罰せられると思っていたのです。
エリクソンが彼女に職業を尋ねると、彼女と同じ宗派に帰依する医師の下で月100ドル(当時の月給は平均270ドル)で働いていました。彼女はタイプの仕事していましたが、1分間に25語しか打てませんでした。
彼女は非常に厳格な家庭に育ち、就職した後も自宅から通っていました。
エリクソンは「人生というのは落とし穴だらけで、誰でも死はやって来るし、神が死を与えようとしても与えたものを受けとる準備がその人になければ、死ぬようなことはない。試しにタバコを吸ってごらんなさい。死なないから!」と、彼女にタバコを吸わせました。
すると、彼女は咳き込みましたが「神は死を与えませんでした!ほんとうに!」と言って彼女は驚きました。そして、エリクソンは彼女に映画館に行くように指示しました。
彼女が映画館に入る勇気を起こすのに2週間かかりましたが、「淑女と売女」という映画を自分で選んで観てきました。そして彼女は、映画館に入っても神の罰が下らないことを実感し、エリクソンに「特にミュージカルの映画が気に入った」と語りました。
さらにエリクソンは「たばこを吸っても映画館に入っても、死ななかったのですから、今度はウィスキーを飲んでみましょう!」と勧めてみました。それも彼女に死を与えなかったので、今度は彼女の方から「親元を離れてアパートで独り暮らしをしてみたい」と話しました。
そこでエリクソンは「それをするにはもっと給料の良い仕事を見つけないと。親にアパートの家賃を払ってもらうように頼みなさい。まず、タイプを勉強しなさい!タイプライターを借りなさい。朝起きたら直ちにタイプライターで『今日は6月のすてきな日』と打ち、歯を磨き、また別の文章を打ち、朝食の準備してまた別の文章を打ち・・・とこの分断方法でフルスピードでタイプを打つ練習をしなさい」と指示を出しました。
3か月後、彼女は1分間に80単語打てるようになり、月に270ドルもらえる仕事を見つけました。すると彼女は「酔っ払ってみたい」といい、エリクソンは「酔っ払うのに1番良い方法は、電話をかけないこと。ドアに鍵をかけること。アパートから出ないこと。ワインを1瓶を酔っ払うまでちびりちびり楽しんで飲むこと」と教えました。
2~3日後、彼女は「酔っ払うって、とっても楽しいですね。でも、二日酔いで頭がすごく痛くなりました。もう、二日酔いはごめんです」と話し、エリクソンは「酔っ払う楽しさの代償を支払ったのです。キミには望むだけ二日酔いをする自由があるのです」と答えました。やがて彼女は結婚しました。それ以降エリクソンのもとに訪れることはなくなりました。
ー「私の声はあなたとともに」ーより
診察室で患者にタバコを吸わせたり、酔っ払うための方法を教えたりするなんて、エリクソンはなんて掟破りの医者なのでしょう。でも、エリクソンが医師のルールを破って見せたから、ガチガチな宗教的ルールにがんじがらめになっていたこの女性が、自由に人生を謳歌するチャレンジに挑めたのでしょう。
定着してしまった生き方が変わるときというのは、いつも大きな出来事(イベント)が引き金になります。しかし、それは、予期せぬ外部からのつらい出来事や災難であることが多いので、わたしたちは強制的にそれがはぎ取られるまで、定着した生き方につい、しがみついてしまうのです。
けれども、それは大変痛みを伴うやり方です。勇気を出して自発的に生き方を変更する方が、ずっと楽しいのです。わたしは今から12年前に、25年間の臨床検査技師に終止符を打って占い師起業したのですが、前回のおひつじ座木星のジュピターリターンのときでした。
チャレンジ精神のおひつじ座木星を持っているのだから、勇気を出して自発的に生き方を変更する方が良いだろうと思って起業して現在に至ります。個人事業主は何もかも知らないことだらけの未知の領域でしたが、自分から進んで飛び込むとその体験が新鮮で、ちゃんと自分の人生を生きている喜びがあります。
このように生き方を変更する=世界線を変えるときというのは、何も外部からの強制的な変更の圧力を受けなくても、自分でタイミングや覚悟を決めて路線変更することができるのです。
その鍵を握っているのが「自分を縛っていた禁止事項を破ること」です。今回の女性の例を見ると、そのプロセスを参考にできます。彼女はエリクソンに病状について訴えいません。患者として来院しても、それは精神の病ですらなく、正常だけどがんじがらめルールに縛られ、映画館にも雑貨店にも入れなくなっていただけなのです。
それに気づいたから、エリクソンはルール破りの指南役として、最初にタバコを、次に映画館、その次にお酒を・・・と順を追ってルールを破る快感(呪縛が解ける解放感)をこの女性に指南したのです。
彼女の呪縛は、「神によって裁かれ命を失う怖れ」でした。しかし、それは、エリクソンは会った初日にタバコを吸っても死なない体験で解消しました。
まるで、「智恵の木の実を食べると、何でも知ることができるし、食べても死んだりしない」と言う蛇を信じて、神から禁止されていた木の実を食べたイブのようです。この体験で彼女は宗教のルールに従うよりも、自分が体験したいことをする世界線に乗り換えて路線変更したのです。
エリクソンにタバコを吸うことを勧められても拒否したら、彼女は映画館に行く勇気は出なかったでしょう。このように生き方を変更する=世界線を変えることは毎瞬毎瞬自分が何を選択するのかに大きく影響をするのです。
とくに大事なのは、最終的に自分の自由意志でそれを決めたかどうかです。何かを怖れたり、制限した結果その決定に至ったのなら、その選択が連なる先は怖れや制限に支配される世界線なのです。
自分の自由意志でそれを選択したのなら、その選択が連なる先は自分の自由意志が反映される世界線なのです。この女性は宗教的に禁止されているタバコを吸う選択をすることで、自分の自由意志でしたいことを選択する世界線にまず、路線変更できました。
その証拠に、自分で観たい映画を決め、ミュージカルのジャンルがお気に入りと気づいたのです。そのタバコ、映画館、お酒までのルール破りを体験した後からは、彼女自らが「独り暮らししたい」という独立願望が出て来ました。
このように、呪縛になっていた禁止事項を破ると、それに縛られない願望を描けるようになり、それを実現することにフォーカスすると「いま、何をすべきか」が見えてくるのです。
彼女は独り暮らしをするためにはお金の余裕が必要だと気づき、その夢を諦めるか、実現することにフォーカスするのかを自分の意志で選択して、厳格な両親を説得して家賃を負担してもらえるように交渉し、自分自身もタイプの技術を上げて2倍以上のお給料が出る仕事を得たのです。
もう、ここまでくると神様の罰に怯えて、映画館どころか、雑貨店にも入れなかったかつての彼女とは別人です。つまり、世界線の乗り換えに成功したのです。自分の自由意志で選べる世界線を選んだ彼女は、お酒を楽しんでもお酒に飲まれず、適度に自分をコントロールできる人生を生きることになったのです。
この彼女が世界線を乗り換えるために苦労したことといったら、タバコの煙にむせたぐらいでしょう。タイプの勉強や独り暮らしのため両親に家賃負担を頼むことは、努力が要ることだったでしょうが、それに取り組むことは自発的にやっている以上、進化成長の喜びが努力のたいへんさを超えるのです。
禁止を守ってルールの呪縛の中でちんまり制限された人生を歩むのも、禁止を破って自分の自由意志で選択する人生を歩むのも自由ですが、どちらを選ぶかでどの世界線に乗ることになるのかを意識すると、毎瞬毎瞬の選択が自身の未来を創っていることに気づいて感動を覚えることでしょう。
次回もミルトン・エリクソンの「私の声はあなたとともに」の解説を予定しています。
わたしのサロン、リブラライブラリーではあなたの心のしくみをホロスコープで解説し、心の制限、葛藤が引き寄せる現実問題にセルフヘルプで立ち向かえるようサポートします。
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新メニュー(月の欲求・土星の制限の観念書き換えワーク、キローンの苦手意識を強味に変えるワーク)が加わりました。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。